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ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所の代表、田中です。日比谷のオフィスを拠点に、起業家、経営者に対し、濃密な支援を行っています。いつでもお気軽にコンタクトしてください。              ※詳しい経歴は、カテゴリ(左バー)の「My Profile & 会社概要」をご覧ください。
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2010年12月15日

◆製品「生き物化」の時代~「ものつくり」体制の限界を考える

◆製品「生き物化」の時代~「ものつくり」体制の限界を考える


※多くの製品が生き物のように頭脳を持ち、ネットワークという新しい世界につながって自律的・有機的に活動を始める.

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◆ニュース雑感

『米空軍、新聞サイトも閲覧禁止 ウィキリークス余波で』
 (2010年12月15日CNN)

 CNNによると、ウィキリークスの影響で、米空軍や米国政府機関は、自組織の職員による「ウィキリークス」のサイトや一部の報道機関のサイトへのアクセスを禁止したことを明らかにしたそうです。

国家や政府という枠組みは、イデオロギーという境界線で守られた情報で成り立っています。国家間や一般大衆の間に情報量の格差があると同時に、その枠組みが持つ問題点を合法的に白日のもとにさらす手段がない時代においては、国家による統制が保たれていました。

しかし、グローバル経済の流れがますます加速し、一般市民が、情報が持つパワー(インターネットのパワー)を皮膚感覚で理解したいま、機密漏えいのみならず、国家の枠組みや政府機関が持つ問題点に何らかの是正措置が及ぶまで、情報公開を求める動きは止まらないのではないかと思います。

何故なら、たとえウィキリークスが潰されたとしても、他の誰かが必ずそのあとを継ぐと考えるからです。

ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏は、「終わりなき連鎖」というパンドラの箱を開けてしまったように思えてなりません。

◎記事詳細:
  http://www.cnn.co.jp/usa/30001232.html


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◆本日のコラム

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 メーカーの開発体制に携わっていると、つくづく日本の製造業は「ものつくり」の体質にどっぷりと浸かっていると感じます。

ユビキタス社会、ネットワーク社会の進展で、あらゆるマシンに「頭脳=ソフトウェア」が組み込まれるようになりました。航空機、自動車、交通システム、次世代発電システム等々、製品それ自体の高機能化はもとより、ネットワーク化が急速に進展しており、機能要件は複雑化の一途を辿っています。このような状況に対して、「ものつくり」という考え方では対処しきれなくなってきている事例が目立ち始めました。

にももかかわらず、多くの日本企業は、いまだに、ものつくりの発想から脱することができずに非効率なやり方を繰り返しています。たとえば、わずかなコストダウンのためにソフトウェアの機能評価テスト工数を削ってしまい、かえって製品の信頼性を損ねたり、ハードウェアとのすり合わせによる動作テストを端折って、後工程でトラブルが多発するような状況を作ってしまったりしているのです。

 ご存じのように、製品開発コストの50~70%をソフトウェアの開発コストが占める時代です。一見すると、機体やジェットエンジンなどハードウェア部分が高価に見える最新鋭の旅客航空機(ボーイング777など)の開発も、実はソフトウェアの開発~組込みのためのコストが全体の60%近くを占めています。

ゆえに、物理的な「モノ」つくりの思想に染まった企業から見ると、ブラックボックス的に開発が進められるソフトウェアは、どうしても膨大なコストやムダの塊に見えてしまうのでしょう。部材のコストダウンと同じ発想で、開発作業工数やテストの工数を削減してしまう、あるいはソフト開発チームに必要以上のコスト圧力をかけたりしてしまうのはここら辺に理由があるようです。

 しかし、ズバリ言ってしまいますが、特に高度な機能を実現する組込みソフトウェアを単なる「モノ」や「部品」と考えていては、効率的かつ効果的な開発体制は実現しません。

なぜなら、膨大なソースコードにより発生するバグや相互干渉などの不具合を、終りが見えない中で根気よくケアし続け(※)、場合によっては製品の出荷後もアップデートを図る、といった流動的な対応が必要になるソフトウェア開発には、新種の有機体や生き物を、粘り強く、試行錯誤しながら育てるような開発スキル体系が求められるからです。

(※ある程度高度な機能を持つ製品であれば、ハード部分との整合を図る動作テストや評価作業は1000~3000回におよぶことも珍しくありません)

また、スキルセットのみならず、ソフトウェア開発機能(チームや部署などの機関)の位置づけも考えていかねばなりません。

ほとんどの日本企業においては、いわゆる、ものつくりの思想を根底にして開発プロジェクトや生産体制が組み上げられています。ゆえに、開発体制全体の管理スキルや人材育成方法、人事評価制度もそれが前提となっています。しかし、文化や仕事スタイルの異なる1つの生態系機能を存分に生かすため、それとは別に、ソフトウェア開発独自の価値基準や判断基準、人材の評価基準などを持つ機関を設置し、ものつくりの体制よりも上位か、少なくとも同等に議論できるようなポジションを与えるといった工夫も必要です。

たとえば、そうした機関を開発トップのすぐ下に置き、R&D部門に対して設計を変更させたり、いざというときに開発をストップさせたり、(ある機能をソフトウェアで実現できることが判明した場合)いったん決まったモジュールの採用を取り消したり、キリのないデバッグ作業を終わらせるために、確証的なデータがないまま、あえてGOを出すことを可能にする権限を付与したりすることを考えていかねばなりません。

また、ソフトウェアの組込みリスクを事前に減らすために、ハードウェア領域全体の受け入れ態勢をあらかじめ総合的に診断するルールとシステムをつくるなどの施策も有効になります。

もちろんこれらは「モノ」の開発力を簡略化してしまえ、ということではありません。正しい設計を行い、精巧なパーツを作ったり組み立てたり、部材を最適なQCDバランスで調達したりすることは、もはや必要最低条件に過ぎなくなってしまったということです。

 携帯電話から産業用ロボット、交通システム、医療機器に至るまで、特に社会において重要な役割を担う製品の機能はますます高度化・複雑化しています。加えてネットワーク化の進展により、自動車や住宅、建設機械など、既存の製品群にも高度な頭脳を持つことが要求され始めています。

その一番のカギを握るソフトウェアの開発思想や体制を、(わかったつもりになっているソフト開発者も含めて)改めて深く考え直すと同時に、いちはやく「ものつくり」の思想から上位移行し、「価値づくり=デリケートかつ頼もしい機能・効能づくり」に開発体制の重心を移した企業だけが、これからの熾烈な開発競争に勝ち残っていけるのだと思います。


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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 09:00│Comments(0)使える戦略理論を考える
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