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2010年12月08日

◆サンデル教授の問いかけ~経済性偏重によって失うものとは

◆サンデル教授の問いかけ~経済性偏重によって失うものとは


 今年の4月から6月にかけて、ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデル教授の講義(ハーバード白熱教室/NHK教育)がテレビで放送され、その後、続々と著書も発刊されるなどして大変な話題となりました。

現在はその横浜市立大学版が放送中です(次回は12月10日)。2011年1月には大阪大学でも、サンデル教授の講義スタイルを継承した番組が放送される予定だそうで、いまだ興奮冷めやらずといったところでしょうか。

 さて、サンデル教授の講義は、彼が投げかけるテーマに対して、参加する生徒たちが自分の考えを述べ、議論をしながら、考えを深めていく方式で進められます。

たとえば以下のような、判断が容易ではない問いが投げかけられます。


●「あなたはブレーキが壊れた列車の運転をしている。このまま直進すると5人の人を殺してしまう。しかし、ハンドルを切って引き込み線に退避すると、そこで作業をしている1人を轢いてしまうだけで済む。あなたはどうすべきか」

●「船が難破し、漂流している救命ボートに、4人の船員が乗っていた。水も食料も尽きたのち、一人の衰弱した身寄りのない青年を殺し、その血と肉を食料として他の船員たちは生き延びた。彼ら3人は家族を抱えていたので、自分たちがいなくなると経済的に困窮する人数が多くなると判断し、独り身の青年を犠牲にした。彼らの判断は正しかったのか」


判断の是非の議論はさておき、この設問にはどのような意図があるのでしょうか?

察するところ、サンデル教授が送ろうとしているメッセージは、比較的把握が容易な経済合理性の領域と、人間の尊厳や存在意義、命の重さといった、合理的な解釈がきわめて難しい領域の双方を提示し、それらに対峙する姿勢がどうあるべきかについての考えを迫っているように思われます。

これを企業経営にあてはめて考えてみたいと思います。

 事業の経済性は、ご存じように、財務分析や経営環境分析のような定量情報によって判断されます。

あえて言うと、この種の情報による判断はある意味で容易です。また、そうした情報のうち、特に業績やコストの多寡に一喜一憂することは、良くも悪くも没頭しやすい作業でもあります。

さらに、多くの企業が、新たな価値・革新を連続的に創出するというよりは、散発的に生み出した価値を反復・再生産することで事業を行っているため、前述のような作業がルーティン化され、意志決定や活動の是非が、その時点での経済的な判断に偏重して行われるようになっていきます。

先のサンデル教授が投げかける設問の例でいえば、あのような状況が繰り返されるうち、死にかけた少年を助けようとして必死に考えた気持ちや苦しみ抜いた感覚はいつしか薄れていき、人間の尊厳や人命よりも、経済性を優先した判断が当たり前になっていく、ということになると思います。

こうした判断を繰り返し、それ自体が目的化してくると何が起きるか。

まず、市場や顧客に貢献する(ニーズを十分に満たす)ための方策を最優先に考える、というマインドが薄れていきます。そして、価値の創造や品質の充実を図る能力、顧客の課題やニーズを繊細なレベルでとらえる組織的な感度などが減退してしまい、それが原因で、さらに経済性を追い求める体質に染まっていきます。

そして、(ドラッカー流にいえば)「明日を切り拓いていくための仕事」が「過去の確認をするための仕事」に浸食されていき、「毎日忙しく働いている割に儲からない」という体質ができあがっていきます。

以上を、サンデル教授の設問に答える形でまとめるとすれば、何かを選択するということは、必ずその他のものを犠牲にすることになる、ゆえに犠牲になったものは何かということをしっかり把握しながら、自らを律し、次の行動を考えていかねばならない、ということを示唆しているのだと思います。

さらにこれを事業経営の枠組みで(拡大?)解釈するなら、あくまでも市場や顧客への貢献を起点に置き、同時に経済的な選択をし続けることのリスクへもしっかりと対処しながら、バランス良く事業活動を行っていかねばならない、ということを、サンデル教授の講義が教えてくれているような気がするのです。


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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 13:18│Comments(0)戦略請負人のつれづれ日記
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