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ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所の代表、田中です。日比谷のオフィスを拠点に、起業家、経営者に対し、濃密な支援を行っています。いつでもお気軽にコンタクトしてください。              ※詳しい経歴は、カテゴリ(左バー)の「My Profile & 会社概要」をご覧ください。
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2010年11月08日

◆ものつくり思想の弊害~日本企業が進化・高度化できない理由




※われわれは、いまだにこの世界から卒業できていない?・・・映画『モダンタイムス』(チャーリー・チャップリン主演・監督・製作・脚本・作曲、1936年アメリカ映画)より.


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『村上龍さんが電子書籍の新会社』
(2010年11月5日 読売新聞)

作家の村上龍さんが、電子書籍を販売する新会社を設立されました。

村上氏自身が経営に携わるのだとすれば、当面はネームバリューや当事者感覚を生かした出版活動が強みになると思います。しかし、電子書籍ビジネスには、これといった障壁が存在しないため、おそらく参入してくる企業が相次ぐと思われます。そうした状況で、村上氏には、作家の立場にとらわれないビジネスライクな意思決定ができるかが問われることになるでしょう。

また、新会社は、グリオという企画会社との合弁で作られていますが、もし村上氏の参画なしでは設立はなかったとしたら、グリオの人たちが、企画の専門家の立場から、彼に対して率直な意見を言えるかどうかも課題になると思います。

さらには、今後、電子書籍に映像や音声などの要素が入ってくることも考えられ、書籍や文筆の世界とは異なる構想力や人材ネットワークの運営が求められるかもしれません。

村上氏の名声や経験が吉と出るか凶と出るか、動向を見守りたいと思います。

○記事詳細
 http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20101105-OYT8T00539.htm


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 さて、本日のコラムに参りましょう。

 日本では、高い収益性を確保できる高付加価値型サービスがなかなか生まれません。

たとえば、昨今の、海外における交通インフラや開発途上国における水処理・循環インフラ、ITインフラ、資産の安定運用、特許戦略など、「顧客の問題解決や成功を支援するための解決策を提供する」という重要な分野で、なかなか高付加価値型のサービス・スタイルが確立されません。

それどころか、確実に消費品質(消費する人にとって真に必要な機能が備わっている、という意味の品質)を押さえた韓国や中国のメーカーに、お家芸である家電製品や自動車の領域まで脅かされつつあります。

参考コラム:『競争は戦略の目的ではない【大前研一】』

 なぜこのようなことが起こっているのでしょうか?

 いわゆる「ものつくり」を行う製造業は、すべてのビジネスシステム(開発~生産~チャネル~販売etc...)を組み上げ、それを固定化し、モノを反復的に生産・販売します。そして市場が成熟した後は、ビジネスシステム全体の効率化やコストダウンを全社的に図っていくというのがパターンとなっています。

一方で、効能や効果を提供する高付加価値型サービスは、それを提供する者が、「インタラクションを通じて顧客と価値を共創する」ことになります。ゆえに、高度な情報収集活動や最適な意思決定など質の高い対応を、常に自律的判断に基づいて行うことが求められます。従って、そこには、効率化や自分のパターンを押し付ける、といった論理はありません。

このことを理解せずに、「ものつくり」的な経験しかない人間や事業体がサービス・マネジメントをやろうとすると、どうしても最初から、いわゆるマニュアル管理的・工業生産的なアプローチになってしまいます。

確かにマクドナルドなどの飲食サービスや事務手続き代行、単品販売などの業界においては、そのような形の“サービス”で良いのかもしれません。

しかし、これらは、本質的に工業的発想による大量生産品であり、大きな付加価値を生み出すものではありません。その多くは提供者側の論理、すなわち効率性やコストを重視した形で設計されており、そこには、個別性や例外への対応を最重要視する、といった発想はあまりありません。

(こうした姿勢は、実は「ものつくり」そのものにも影響を与えますが、今回は省略します)

翻って、顧客の成功や問題解決を支援する高度なサービス、たとえば生活インフラやITインフラなど複合的なシステムを、固有の文化を持つ主体へと融合させていくようなビジネス、あるいは個別性・例外性の高い金融・法律サービスなどの領域においては、反復・再現性を担保するだけでは、高い付加価値を提供することはできません。

もちろん高付加価値型サービスにおいても、それに従事する人材に基本的な知識を持たせるための足掛かりとして、行動規範や知識を体系化したマニュアルライクなものが必要になる場合が多くあります。

しかし、高付加価値型サービスに従事する人材は、きわめて早い段階でそれをクリアします。そして、それが本質的に求めているものや背景にある考え方を十分に理解したうえで、平常時の課題はもちろん、あらゆる例外的・緊急的なケースにおいても対応できる能力を、自らが能動的に開発していくところが大きく異なります。

そのために、マネジメントを行う人間は、何よりも彼ら彼女らの強みや個性、自立心を最大限に開花させるための支援を行います。そして多様な才能を、もっとも効果的に組み合わせることが可能となるビジネスモデルづくりに全力を注ぎます。

つまり、製造業的な活動とは、マネジメントの視点や方法が根本から異なるのです。ドラッカーが繰り返し説いていたように、真の意味で人を「資産」ととらえるための高度なマネジメントが求められるのです。

 こうした高付加価値型サービス・マネジメントの考え方や実例は、いままで日本企業にはほとんどありませんでした。

言い換えれば、製造業との違いを皮膚感覚で知る経営者や管理者がほとんどおらず、それが、顧客の問題解決や成功とは程遠い価値の提供が、いまだに、あらゆる業界で平然と行われる要因となっています。

そして、このことに(組織や産業として)気付いていないことが、日本企業が進化・高度化できないひとつの原因にもなっているのです。

 日本復活のカギは、やはりマネジメントを行う層にいる人たちにあります。まずこの人たちが、従来型の「ものつくり」の発想からいち早く脱皮し、新しいスタイルへの上位移行を目指すべきだと思います。

それが無理であれば、専門スキルを持つ人材の導入を積極的に推進し、自らの人脈や影響力を駆使して、その活動を側面から支援して欲しいと思うのです。


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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 08:45│Comments(0)使える戦略理論を考える
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