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2010年10月07日

◆競争は戦略の目的ではない 【大前研一】




 ※日本企業の試練と真の国際化への厳しい道のりはこれから始まる。戦後65年のツケを払わされる時がやってきた。


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 先日、中国の温国家主席と菅総理の会談が行われたそうですが、菅さんははいったいどのような話をしたのでしょうか?“戦略的互恵関係”などといっていますが、そもそも日本の戦略とはどのようなものなのか、その上位概念としての国家ビジョンはどのようなものなのでしょうか?

現在の政権からは、それらが伝わってきません。むしろ、目の前で起きた問題に対し、短絡的に反応する行動様式だけが目立つ、戦略の意味がまるでわかっていない「戦略シロウト内閣」といわざるを得ません。

参照:『日中「廊下会談」協調演出に残る危うさ』(10/5日経電子版)


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◆気になるひとこと


      --- 競争は戦略の目的ではない ---


                   大前研一 『ハーバード・ビジネス・レビュー 2007年(1987年の論文を再録)』



◆コメント

 当時、どんどん現実離れしていく感があった競争戦略理論に対する大前研一さんらしいアンチテーゼです。

この言葉自体は1987年のものですが、戦略のエキスパートであるマッキンゼー社が、2003年に再びこの大前論文を世に問うているうえに、大前さん自身が、現在も同様の指摘をされているので、今回、この言葉を取り上げてみました。

さらに、以下の指摘が続きます。

「ライバルに勝つことに血眼になると、戦略は相手の出方次第でクルクル変わることになる。リードを許すまいと、相手の一挙手一投足に反応する行動様式が常態化していく」

・・・なるほど、ちょっと変わった機能を持った製品が出ると、すぐにそれに追従した製品でヤマダ電機の売り場がいっぱいになってしまう、といった現象を、われわれはイヤというほど見てきてましたよね。

エアコン、デジカメ、携帯電話、洗濯機、電子レンジ。消費者は誰も「使った場合の違い」を説明できません。クルマやコンビニ、銀行のサービス、最近流行の地域開発(町おこし)のパターンも独自性があるとは思えません。

ちなみに、この「使った場合の違い」を、サムスン電子の元常務で、現東京大学特任研究員の吉川良三氏は「消費品質」と表現されています。

吉川さんは、8月に行われた『日本がものづくりで韓国に負ける理由』というテーマの講演で、日本企業はこの消費品質がわかっていない、と指摘されていますが、要は「消費者のことをきちんと見ていない」という最も基本的なことを、此の期に及んで指摘されているということです。

吉川さんの言葉を待つまでもなく、われわれ生活者は、実にさまざまな不便を強いられてきたと思います。

たとえば自動車です。一車種ごとに莫大な開発費と数百人ものエンジニアを張り付けて“丁寧に”開発を行い、4年に一度、消費者に買い替えを強要してきました。また、いまだにコーナリング性能や動力伝達システムがどうのこうのと、カタログ数値をPRしている会社があるようですが、購入者の多数を占めるサンデードライバーや街で買い物をする主婦にとってそんなものは関係ありません。

さらには、一挙に電気自動車への切り替えを行わずに、ハイブリッドという、暫定的なクルマを前面に押し出していますが、このやり方の背後に、自社や業界の維持・雇用といった、提供者側の都合がまったくないとは言えないのではないでしょうか?

パソコンメーカーも同様です。つい3~4年前までは「家庭の医学」とか「毛筆ソフト」など、使いもしないソフトをゴテゴテと詰め込み、20数万円にも価格を吊り上げたラップトップをユーザーに押しつけていたのです。しかも、突如、5万円台のネットブックが登場すると、一斉に追随して、挙句の果てに「利益が出なくなった」などと文句を言っている始末です。

 このような指摘をすると、「60~80年代の日本企業は素晴らしかった。国際的にも勝利してきた」という主張をされる人がいます。しかし、戦後、基本部分のアイデアは欧米からすべてタダでもらったうえに、「作れば売れる時代」がぴったりと重なっていたのは紛れもない事実です。轍(わだち)を辿っていき、改善を続けるだけで商売ができた時代が確かにあったのです。

それに、日本企業の場合、「国際化した」といっても、生産工場や販売網などの物理的な拠点が拡大したに過ぎません。

先ごろ、ハイブリッド車のトラブルに関する情報公開のやり方で問題となった自動車会社の例をひくまでもなく、彼の地の文化や風習をうやまい、現地に溶け込み、組織カルチャが真に国際化している企業、「国籍に関係なく、誰でも社長までのイスが等距離にある企業」は今でもほとんどありません。

 生活者にとっての価値を謙虚に見つめることなく業界内の競争に腐心し、提供者側の論理で事業を行ってきた日本企業は、ITの進展による地球市場の一体化や、アジアの新興国企業の勃興を受けて、戦後65年経って、はじめて「真の競争」にさらされることになるでしょう。

それは、これまでのような目先の競争ではなく、価値創造者としての実力と世界への貢献の姿勢をもって、自らの存在意義を賭けて戦っていかねばならない、ということだと思います。

大前さんのひとことを、いま、改めて深く考えなければなりません。



※参照:
  『競争は戦略の目的ではない』 大前研一、ハーバード・ビジネス・レビュー、2007年

  『日本がものづくりで韓国に負ける理由』吉川良三、グロービス講演録、2010年8月5日

  『マッキンゼー 戦略の進化』マッキンゼー、2003年(上記大前論文を収録)




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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 11:36│Comments(0)気になるひとこと・フレーズ
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