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ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所の代表、田中です。日比谷のオフィスを拠点に、起業家、経営者に対し、濃密な支援を行っています。いつでもお気軽にコンタクトしてください。              ※詳しい経歴は、カテゴリ(左バー)の「My Profile & 会社概要」をご覧ください。
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2011年01月26日

◆「林原」破たん~社会機関としての事業体マネジメントを考える




※多彩な事業展開で知られる林原グループ.おそらく当事者である従業員にも、なぜグループが現在のような事業構成になっているかを、社会貢献との関連から簡潔かつ明りょうに語れる人はいなかったのではないか?


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 本日はいきなりコラムに参りましょう。

 トレハロースの開発・製造や「研究開発に目的は必要ない」などの“ユニーク”な経営観で知られる岡山のバイオ関連企業「林原グル-プ」の企業4社が、1000億円の負債を抱えて、事業再生ADR(私的整理の一種)を関連機関に申請していることが明らかになりました。


○記事詳細/毎日新聞:
 『林原:私的整理を申請 負債1000億円、多角化が経営圧迫』
 (毎日新聞 1月26日(水)2時30分配信)


同社は食品バイオの研究からはじまって、美術館の経営、恐竜の化石発掘、チンパンジー(類人猿)の研究、レストラン・ホテルの経営など多彩な事業展開を行っています。そのユニークさで、一時期は、テレビ東京の『カンブリア宮殿』やNHKの教育テレビの題材、研究者による書籍などで盛んに取り上げられていた企業です。

特に、組織づくりや経営観に関しては独特のものがありました。まるで時代に逆行するかのごとく、組織を同族や縁故採用、地元採用で固め、顧客のニーズを考えない、常にオンリー・ワンをめざす、などの方針を打ち出していました。

そんな同社ですが、私が何よりも気になったのは、冒頭にある、最高経営責任者である林原健社長が「研究開発に目的は必要ない」という言葉を、あたかも社是のように発していた、ということです。

もちろん、社員の自由な発想を促すため、過度な利益責任やプレッシャーから解き放つ環境をつくることは重要です。実際にそれが、斬新なアイデアの呼び水となることに異論はありません。

しかし、これを、あたかも社会機関の一部である会社のあり方、あるいは事業経営のやり方のように発信し、現実の事業体にまで、目的や脈絡がわかりにくい事業展開をやらせてしまってはいけません。

やはり、会社という「社会の生態系の中に生きる機関」は、何らかの形で社会に貢献することでしか生かされないという根本的な原理を忘れてはならないのです。

 ドラッカーは特に晩年、(林原のような)知識労働者を擁する会社のあり方を、よくオーケストラに例えていました。

それは「会社という機関は、個人の可能性や強みを存分に引き出し、それを美しいハーモニーになるように組み合わせ、社会に向けてわかりやすく発信していく重要な機能を担っている」という主張です。

これにそって考えれば、おそらく林原氏は、個人に対するマネジメント方法と、社会機関としての組織をマネジメントする方法を混同しているところがあり、それを開発体制のみならず、事業展開のスタイルにまで波及させてしまった部分があったのではないでしょうか。

したがって、財務リストラにとどまらない、根本的な経営の再建をめざすのであれば、このあたりをもう一度きちんと整理し、改めて「社会への貢献」に焦点を当てながら、いま抱えている資源、資産を最大限に生かすための組織や事業グループのあり方、あるいはマネジメント体制のあり方を考えてみる必要があります。

「目的は組織の外にある」とは、これもドラッカーの言葉ですが、目的や存在意義を社会の中に見出せない企業は生き続けることはできないのです。

林原グループには、この不変の原理から目をそらさずに、しっかりと再建の道を歩んでいってほしいと思います。



○記事詳細/毎日新聞:
 『林原:私的整理を申請 負債1000億円、多角化が経営圧迫』
 (毎日新聞 1月26日(水)2時30分配信)


◆PRのコーナー:
 2011年5月、淑徳大学サテライトキャンパスにて、『第一線の実務家と考えよう!ドラッカーに学ぶ新型知識労働者の姿』を開催します。詳しくは下記をご覧ください。

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 http://jtmt-office.jimdo.com/資料のダウンロード/



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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 14:23Comments(0)使える戦略理論を考える

2011年01月20日

◆「コミュニケーションが組織を強くする」は本当か?




※「ケミストリー(チームワークによる相乗効果)が勝利を生み出すのではなく、勝利がケミストリーを生み出す」とは、NYヤンキース監督時代に地区優勝10回、ワイルドカード獲得2回という実績を持つ名将ジョー・トーリ氏の言葉である。



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◆ニュース雑感:

『オムロン次期社長に山田氏 若さ、統率力前面に』
(京都新聞1月18日)

 オムロン(立石電機)に、49歳の社長が誕生しました。執行役員から11人抜きで就任した山田義仁氏は、つい最近まで国内外の第一線でにビジネスをドライブし、競争が厳しい海外事業や販売部門でしっかりと成果を上げてきた人で、何よりも能力と行動力が評価されたのだと思います。

かつてよく見られた、あまり現場には口出しをせず、大きく構えておけばよかった大企業の経営者像とはかなり異なるタイプの人です。筆者は個人的には、同じCOOから社長になったカルロス・ゴーン日産自動車社長や、世界中を駆け巡り、現場で陣頭指揮を執り続けながらIBMを復活へと導いたルイス・ガースナー氏に通じるタイプだと思います。

これからの経営者には、スポーツに例えていえば、プロ野球の監督だった野村克也氏やその愛弟子の古田敦也氏のように、キャッチャーマスクをかぶり、自らも戦いの場に身をおきながら、チーム全体のマネジメントも行っていけるようなタイプが求められるように思います。

別の例に例えると、航空機に乗って上空から全体を俯瞰しながらも、変化の兆しを見つけると、自らがパラシュートを背負い、その場所へ急降下していくようなタイプです。ローソンの新波さんもこのタイプかもしれませんね。
(ちなみに某国産航空会社の会長のような、お膳立てされている現場を行列を従えて視察する、といった行動を指すのではありません。念のため)

 オムロンのこの人事は、変化が激しい昨今、環境変化の兆候を鋭敏に嗅ぎ取る、実戦的な感覚を持った経営者が求められていることの、まさに兆候なのではないでしょうか。

○記事詳細:『オムロン次期社長に山田氏 若さ、統率力前面に』
 http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20110118000019



◆本日のコラム:

 さて、本日のコラムに参りましょう。

コミュニケーションを活性化し、社員のモチベーションを向上させ、丹念に教育・研修を施すなど「社員の活性化」を行えば業績が上がっていく、ということを言う専門家がいますが、これは事実でしょうか。

確かに業績の良い会社は社員が元気です。積極的な議論や創意工夫がなされるなど社員のコミュニケーションやモチベーションが充実しているように見えます。しかし、実際に自らの手で経営を行ってきた者から言わせてもらうと、それは現象的あるいは結果的にそう見えるだけであり、決してそのような状況を先に作ってから業績を上げていったのではありません。

何よりも強い組織となるためには、ずばり「ビジネスに勝利すること」、すなわち目の前の受注件数が増え、売上げや利益を獲得すること以外に方法はないと思います。

すなわち、成果をあげられるスタイルや活動プロセスを確立し、受注を獲得できる武器(製品・サービスなどのバリューパッケージ)を持ち、それを顧客へしっかり移転できる技術を組織のメンバーが習得し、目の前のビジネスを勝ち抜いていくことによってしか実現し得ないのです。

モチベーションやコミュニケーションはどこまでいっても手段や道具にすぎず、少なくともそれだけでは、決して活力を持った組織は持続的なものとはならないのです。

 ちなみに、われわれ企業再生や改革を生業とする者が、破たんして社員の意識がどん底状態にある企業に乗り込んだ場合、財務リストラや資産の売却など、あまり手段を選ばすに、まず何よりも利益の確保を最優先にして行動を開始します。

「後ろ向きな作業やコストダウンをやると、組織のモチベーションが下がり活力が奪われる」などともっともらしいことをいう学者や専門家がいます。

しかし、資産売却だろうが、コスト削減だろうが、ムダな脂肪を取り除いてスリム化し、ガン細胞を切除して、黒字をしっかりと確保することに成功すると、そうした取り組みに一生懸命ついてきた社員たちの顔は明るくなっていきます。多くのケースにおいて学者などがいうようなことは例外なのです。

むしろ、経営破たんの責任を取ろうとしない者へ厳しい対応を取ったり、非効率な資産を思い切って処分したり、生産性の低い業務を削減してしまうなど、ドラッカーがいうところの「体系的な廃棄」を断行するようなやり方に対しては、それを前向きにとらえる人も、確実に増えてきているように感じます。

 「ケミストリー(チームワークの相乗効果)が勝利を生み出すのではなく、勝利がケミストリーを生み出す」とは、メジャーリーグ・NYヤンキース監督時代の12年間で地区優勝10回、ワイルドカード獲得2回という実績を持つ名将ジョー・トーリ氏の言葉です(※)。

これを言い換えれば、必死で勝利を目指す過程(=実戦)で得たものでなければ、それは、決して本物のケミストリー(手段や道具)とはならない、という意味であると思います。

すなわち、トーリ氏の言葉は、あくまでも事業の本分である「ビジネスにおける勝利」を通じて組織力を高めていく、という視点を忘れてはならず、コミュニケーションを良くしたり、モチベーションを高めたりするなどの手段や手法は、あくまでも補助的なものに過ぎない、ということを示唆しているのだと思うのです。


※参照:
 『メジャーリーグ~アメリカ社会を映す鏡』NHKドキュメンタリー、2011年1月放送
 『さらばヤンキース―我が監督時代』
    ジョー・トーリ、トム・ベルデュッチ共著、2009年、貴志社



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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 11:43Comments(0)使える戦略理論を考える

2011年01月12日

◆B2Bの事業高度化戦略~人材への割り切りと発想の転換を持て




※事業のコアに集中し、戦略を先鋭化させたい企業の多くは、コア以外の自社のビジネス機能の構築、運営、更新を、自社の戦略を深く理解する専門機関に委ねたいと考えている...



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◆ニュース雑感:

『ブラジル高速鉄道争奪戦 入札延期に望みつなぐ日本』
(ダイヤモンド・オンライン 1月10日[月])

 ほぼ決まりと見られていた韓国のブラジル高速鉄道(TAV)事業の受注が、土壇場で延期になったそうです。

この商談で新幹線システムを売り込んだ日本企業の関係者によると、ブラジル政府が北朝鮮リスクを抱える韓国への40年にわたる長期の運営委託を危ぶんだ面がある、とのことです。しかし一方で、同政府の「買い叩き」ともいえる購買条件の緩和がなされる気配もいまのところないようです。

ゆえに、もし“節約”志向のブラジル政府に韓国のリスクを危ぶむ気持ちが湧いてきたとすれば、それは将来「高くつく」可能性が頭に浮かんできたからかもしれません。

したがって、日本の新幹線システムを売ろうとする企業連合軍は、新幹線システムの長期安全運営ノウハウや実証データを具体的・体系的に提示するのはもちろん、実績に乏しい韓国のそれが持つ潜在リスクコストや、ブラジル政府の甘い事業見積もり・建設リスクも指摘しながら、新幹線のトータルな経済性や安定運営によるコスト優位性をアピールしていくことが、受注の突破口になるのではないでしょうか?

もちろん、こうした高度な分析や提案を体系的に示すことができる優秀な専門家や、それを支える企業連合の惜しみない協力体制があることが前提となるのはいうまでもありませんが。

○記事詳細
『ブラジル高速鉄道争奪戦 入札延期に望みつなぐ日本』


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◆本日のコラム:

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 ロジスティクス(物流)や工業プラント、生産システム、ITインフラ、交通システム事業など、かつて隆盛を誇ってきたB2B(Business To Business)を展開する企業に元気がありません。国際的な展開はもとより、国内においても必ずしも戦績が良くないようです。

その活動を観察したところでは、いまだに技術やハードウェアの説明に拘泥し、「モノ売り」「技術売り」といった「売りたいものが先にありき」の営業スタイルから脱却できていない企業が大半のように思えます。

つまるところ、こうした姿勢は、高度化・複雑化した顧客の経済活動へ貢献するという観点から、自社の製品・サービスを「顧客ビジネスに組み込まれる戦略的な機能」として、同様に高度化・生態系化して提供できていないことによる部分が、少なからずあるように思われます。

ドラッカーは、「マネージャーは他社への貢献に焦点を当てて仕事を組み立てねばならない」と指摘しますが、これは人間のみならず、ビジネス機能や自社のバリュー(製品・サービス体系)にもいえることなのです。

すなわち、物流もITインフラも生産設備や工業プラントなども、「顧客の事業戦略やビジネス力の向上に貢献すること」に焦点を当てて設計・構築されていなければならない、ということです。

では、どのような方法で、こうした高度な事業スキルを自社にビルトインしけば良いのでしょうか?

もちろんカギとなるのは人材です。しかし、新たにこのような事業スキルを構築しようとすると、単に製品特性の説明や技術的なアピール、価格交渉などしか打ち手を持たない従来型の担当者とはまったく異なる人材が必要となります。

つまり、顧客の立場に身を置き、顧客のビジネス戦略に対するインパクトや経済性・コストメリットなどを科学的・体系的に提示することができる、顧客エージェントや事業コンサルタント的な役割を果たすことのできる人材が、少なくとも司令塔部門には必要となるのです。

ここでポイントとなるのは、できるだけ「現在の担当部門にいる人材とは別立てで人材を育成・調達する方向で考える」ことです。

特に物流などの分野で提案・商談活動に従事してきた人は、社の内外からコストを転嫁されたり、購買条件を叩かれたりしてきており、被害者意識を持っている人が少なくありません。

また、酷な言い方ですが、これらの人たちには、顧客への対応スキルが値引き(コスト対応)や御用聞きなどの低レベルなものにとどまっている人が多く、このような担当者を再教育するのはきわめて非効率であり、改革を冗長化させ、失敗に終わらせる確率を高めてしまいます。

結論から言うと、従来型の担当者は定型業務に専念させる、と割り切ったうえで、業務改革や新しい業務スタイルのかじ取り役には、外部や他部門から調達した、これまでとは異なる視点やスキルセットを持つ人材を据えることが、結果的に最も効率的かつ効果的な策となります。

 ちなみに筆者が経営者として企業の再建にあたる場合、この種の改革には、小型のカルロス・ゴーン日産社長よろしく、事業コンサルタント的なスキルを持つ人材を部門長としてヘッドハンティングしたり、経営分析力や戦略鑑定眼を持つ経営企画部門の中堅・若手メンバーを営業の司令塔部門へと転身させたりすることがあります。

特に後者のやり方は、しばしば有効となります。社内でそのような人材を調達する場合、「自社のビジネスや技術力」を熟知しながらも経営やビジネス戦略を分析する視点やスキルを保有しているというメリットがあります。それゆえ、彼らが思い切って活躍できる環境を整えることさえできれば即効性が高くなるのです。

「当該担当者には、その領域における改革はできない」といった言い方があります。これを一歩進めて解釈すると、改革後の仕事はいままでやってきた仕事とは別物である、ゆえに、「最初から新しいスキルセットを持つ人材をキーポジションに据える」といった発想の転換が必要ということです。

また、「6歳の子供に50kgのリュックを背負わせてはならない」といった表現もあります。ドラッカーの言葉ですが、言い換えると、過去の経験則や価値観を背負ったままの改革をやってはいけない、ということです。

 以上のような考え方は、日本型の組織には馴染まないかもしれません。しかし、このやり方は、「誰を最優先に考えて貢献していくのか」を熟考し、それに向けて体制を整える、という、顧客にとってもっとも真摯な施策を実行することに他ならないのです。

そして、このような顧客志向が徹底できる組織だけが、顧客の戦略的パートナーとして、厚い利益率を享受できる、数少ない存在になれるのです。


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