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ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所の代表、田中です。日比谷のオフィスを拠点に、起業家、経営者に対し、濃密な支援を行っています。いつでもお気軽にコンタクトしてください。              ※詳しい経歴は、カテゴリ(左バー)の「My Profile & 会社概要」をご覧ください。
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2010年06月28日

◆つれづれ日記:技術ポートフォリオ戦略の仕事が佳境です!




  ※断面図として使われてきたポートフォリオ手法だが、現代においては、むしろ戦略的な方向性を読み取る動態的なツールとして活用すべき...



                  ●          ●          ●

 先週の木曜日は久しぶりによい天気でしたね~。でも、前日に緊急の依頼案件もあって、その日の午前3時頃までその資料を読み込んだりしていたので、朝の陽射しがやけにまぶしく感じてしまいました-----



 さて、この日は終日、神奈川にある、某産業用化学品メーカーの研究開発センターへ行ってました。ここ何年も投資効率の悪さが続いている「R&D戦略&体制」の見直しが主なテーマで、4ヶ月ほど前からプロジェクトがスタートしています。

その内容について少しだけ。

プロジェクトの骨子は、変化の激しい化学技術を包括的・体系的に管理するため、技術戦略のプラットフォームとしてテクノロジー・ポートフォリオと、それを進化させながらドライブする体制をあわせて構築し、秋口までに運用にこぎ着けようというものです。


 ご存知のようにポートフォリオというしくみの本質は、二律背反する変数群の最適な組み合わせを科学的に維持管理し、恒常的にROIや生産性を最大化しようとするところにあります。

ですが、化学製品における技術は、通常のハードウェア製品などに使われる技術と違って、素材技術や組成技術といった流動的な要素が入ってくるので、一般的にはポートフォリオ・システムに落とし込みにくいと言われています。

ゆえに、技術間の境界線の設定や単位変数をどのレベルの大きさでくくるか、といった難しい問題があり、これを科学的・理論的に特定するための作業がひとつの山場となります。


・・・で、このテクノロジー・ポートフォリオ・システム(TPS)の構築作業をごく簡単に説明してみますと...

まず、現在、同社が抱えている技術や特許を、ターゲット市場や既存顧客に対する経済的インパクト、顧客の生産性への寄与の度合い、顧客のリスク軽減度合い、といった「顧客に対する付加価値」に貢献する変数として定量把握し体系化します。これがTPSの二律背反するうちの1つの軸、すなわち「対市場付加価値軸」となります。

一方で、もう1つの軸を設定するため、技術・特許の原価・利益構造、開発組成工数、付随データ資産の価値、製品展開の可能性、生み出すキャッシュフローの多寡などの内部経済性に影響するデータを体系化します。これが「対自社経済性貢献軸」となります。

そして上記変数のすべてについて、総合評価をしやすくするための統一スケール化や調整を施し、TPSを動かすための従属変数群として決定し、これらをシステムへ落とし込みます。

最後に、中期戦略経営計画の立案フローへ組み込み、モニタリング体制も構築し、運用に入ります。


・・・このようにサラっと説明すると、全体の作業量はそれほどではないように見えるかもしれません。でも「言うは易し、行うは難し」で、実は、連日大変な作業が続いているんですよね。




膨大な量のデータを解析するために、同社の研究者・技術者、同社顧問の技術士や弁理士の先生方、さらにはフィールド・エンジニアやファイナンス部門の社員まで動員して作業を行っているのですが、前例のない不透明な領域も多く、悪戦苦闘の連続です。

もともと扱っている技術の幅が広いため、4つのプロジェクトチームを並行して走らせています。しかし、複雑な化学組成データや大量の実験データから顧客・財務経理データまでを取り扱い、しかも、それらが複雑な因果関係を持っているので、進捗・成果管理も一筋縄ではいかないのです。


 ただ・・・大変だけど、同社の社風にはずい分と助けられているんです。。経営陣をはじめ、明るく前向きな人が多いので、他にも数社の顧客を抱えて疲労困パイ気味の私が逆にはげまされる、なんてこともあったりするんですよね(苦笑)。


 とにかく、この種のプロジェクトは、スタートから半年が勝負です。このくらいの期間で一定のメドをつけないと、生産性が急に下降カーブを描きはじめ、疲労感が指数関数的に増加するようになってしまいます。

なので、もうしばらくは、膨大なデータの分析と、しばしば白熱した議論をともなうミーティング、そして総勢22人からなる4つのチームのマネジメントに追われる日々が続きそうです。


※本コラムは同社の了解を得て掲載しています。


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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 08:25Comments(0)戦略請負人のつれづれ日記

2010年06月23日

◆戦略的SCRAPで事業を再活性化せよ【ベイン&カンパニー】




        ※戦略的リストラSCRAPでは、間引き、移植、接ぎ木の3つの視点から事業診断を行う.



---戦略的リストラSCRAPの3つの視点から事業を診断し、成長に転じるための攻めの事業再構築を実行せよ---

                                            ~ベイン&カンパニー『攻めのリストラ革命』



◆コメント◆


 戦略コンサルティングファームのベイン&カンパニー社が1994年に提唱したこのSCRAP(Strategic Corporate Re-Alignment Program)という手法は、かつて90年代後半に事業再構築(いわゆるリストラ)の名のもとに、やみくもに合理化を行ってきた企業に対し、警鐘を鳴らすと同時に本来のリ・ストラクチャリングの意味である「事業再構築」へと、その視点を引き戻すことを狙ったものでした。

樹木の育成方法になぞらえたSCRAPの3つの視点は、ベイン社ならではのユニークな表現となっています。さらに、事業を再構築したり、進化・高度化したりするための鉄則である、「シュリンク to グロー](成長のための縮小・絞り込み)という重要な視点が、色濃くしっかりと反映されたプログラムとなっています。

加えて、それら3つの視点を支える分析手法群は、視点を多角的に深く取って事業の診断ができるもの(経営学や会計学などで提唱される単純な切り口とは異なります)で構成されており、これも単なる合理化ではない、本来の意味での事業再構築をめざした体系となっています。


 では、SCRAPの基本骨格を構成する3つの視点である、間引き(THIN OUT)、移植(RE-PLANT)、接ぎ木(GARAFT)を順に概観していきましょう。

  ※分析例は、最近の事例を勘案して、私が独自に加筆したものもあります。



■間引き(THIN OUT)■

★骨子:
 数多くの事業の苗の中から重点事業や育成事業を選定し、撤退・縮小する事業、合理化する組織機能などへの対策を施し、重点事業・育成事業に経営資源を集中させる。

★分析・診断の手法および視点:
 (1)事業別・機能別資源マップ分析
 (2)事業ポテンシャル分析
 (3)製品別・機能別企業余裕度の診断
 (4)重点事業・育成事業の戦略的・戦術的改善余地の検討
   
★分析の視点例:
従来の会計システムやコスト分析の枠組みにとどまらない視野を持つことがポイントです。例えば、以下のような方法が有効でしょう。

 ・会計上の科目だけではなく、バリューチェーンや構成機能でコストや経営資源、投下資本などをくくり直して測定してみる
 ・原価を、発生費用だけではなく、設計も含めた「プロセス」で丹念に追跡し、どこで大きなコストの飛躍が起きているかを特定する
 ・物流費用を自社内・自社周辺だけではなく、トータル・サプライチェーンで見直し、根本的な物流リエンジニアリングを図る




■移植(RE-PLANT)■

★骨子:
 従来の事業を重点事業・育成事業として強化していくために、これまでの経営土壌や枠 組みから別の事業基盤に移植することで事業を活性化させ、より大きく飛躍させる。

★分析・診断の手法および視点:
 (5)別会社化、機能分化(切り出し)
 (6)本社への取り込み、事業間の統合
 (7)事業の売却、M&A 

★分析の視点例:
 これは上記の表現のままですね。ポイントは、製品・サービスやそれを担当する人員だけではなく、そこに付随する人事評価制度や行動規範、カルチャ、スタイルなどもワンセットで移植するか、その製品・サービスにあったものをゼロから再構築できる環境を整えることでしょう。
  


■接ぎ木(つぎ木)(GARAFT)■

★骨子:
 従来の構造では収益の限界や成長の壁に直面しているようなコア事業・育成事業の基本構造の一部を抜本的に変革しブレークスルーを与えることで、新たな成長の余地を見出していく。

★分析・診断の手法および視点:
 (8)製品コンセプト・ブレークスルー
 (9)技術ブレークスルー
 (10)生産ブレークスルー
 (11)購買ブレークスルー
 (12)マーケティング・販売ブレークスルー
 (13)カスタマーサービス・ブレークスルー

★分析の視点例:
 以下の手段などが有効でしょう。思考を柔軟にして、顧客の視点から取り組む姿勢が求められます。

 ・製品のポジション(位置付け)を変える
 ・新しい用途を掘り起こす(最近では、ディマンド・イノベーションなどといわれていますね)
 ・他の技術・機能を底上げするような新たな技術要素を追加する
 ・販売活動にコンサルティング機能を付加し、提供価値の体系化・高度化を図る
 ・(今まで行ってきた分析をもとに)ゼロベースから購買基準を再設計し、購買体系を再構築する




 繰り返しますが、このSCRAPが考案された1994年当時、やみくもなコストダウンにより体力を消耗する企業が続出しました。このような状況への警鐘として、単なるコストダウンや事業縮小策ではなく、無理なく事業体系を絞り込み、そこに経営資源を集中させ、ふたたび攻勢に転じる考え方が示されたのです。

この考え方は、いま、ふたたび重要になってきていると思います(もちろんITや国際化など、現代に即した視点の追加や分析手法のアレンジは必要です)

すなわち、タービュラントな経営環境のもと、資本・事業の集約度を高め、さらにはポテンシャルを発掘し継続的に事業の進化を図っていかねばならない現代において、この手法が持つ「可能性を多角的に深く探りながら事業の再構築をめざす」というコンセプトは、十分に応用が可能なものだと思います。

(実際に弊社では、ベイン社の見識に学びながらもSCRAPを大幅に改良し、事業進化の可能性を発掘するためのプログラムとしても用いて、着実な成果を上げています)



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2010年06月21日

●つれづれ日記:ミンツバーグの言葉とある特殊機器メーカーの例




 ※会議や書類作成はあくまでも手段。目的を追求する真摯な姿勢があってこそ、その中身も充実したものとなる...


◆ミンツバーグの言葉が頭をよぎった瞬間

 今月初旬(2010年6月)、東海地方にある某船舶・港湾設備機器メーカー(特殊クレーンや搬送用機械製造/従業員約1600人の準大手)の経営者および経営企画部の方々とお会いしてきました。

戦略の策定・運用体制とメンテナンス部門の充実に関してのご相談を受けたのですが、それに先駆けて、現在作成中の経営計画書を見せていただきました。

まず驚いたのは、来期の経営計画書を3種類、並行して作成しようとしていたことです。

この会社では、セミナーで指導してもらった企業診断士や、付き合いのある会計事務所の指導のもと、3ヶ月かけて6人の事業計画担当者が、それぞれ異なる3通りの経営計画書を作成しようとしていたのです。

彼らに言わせれば、この方法は「シナリオ・プランニング」だそうで、3本の経営計画書の「おいしいところ」を統合して、最適なものへと1本化するのだそうです。

3本同時作成の是非はさておき、各計画書が(ある程度)しっかりとしたロジックとファクトに基づいて作成されているのならまだいいでしょう。しかし、問診を行ってみると、どの計画書も、根拠に乏しい情報や思い込み、過去の経験則などがかなり混在したままで作成されていることがわかってきたのです。

すなわち、経営陣・事業部長らの経験則や組織全体の成功体験、過去の都合のよいデータなどを前提として需要の伸びや安定した経営環境が続くとされ、それにもとづいて予算が割り振られ、投資計画が決められようとしていたのです。

このとき、まさに、先日のコラムで取りあげたミンツバーグ教授のことば、「多くの戦略プランニングは、実は戦略プログラミング(=作業)にすぎない」(★別コラム参照)が頭をよぎりました。



◆自覚症状がない企業が実は多い

 実は、彼らのように、真に議論や分析をつくすべきところを何となく避けてしまい、最初から過去の成功体験や経験則を“改良”し詳細化することをプランニングだと思い込んでいる例は少なくないのです。

この会社の例でいえば、本来時間をかけて行うべきは、次のことでした。

すなわち、計画の前提となった成功体験や経験則に多角的にメスを入れ、徹底して検証、反証を行う、そしてそれらの良いところ・悪いところをきちんと識別したうえで、とらわれない素直な思考を加味しながら成長・進化が可能な軸・次元(戦略仮説)を、知力をふり絞って見出していく、という知的生産活動です。


 あまり一般には知られていないように思いますが、こうした状況は、実は、このクラスの規模の日本企業に割と見られる特徴ではないかと思います。

いちばんメスを入れなければならない本丸の部分を何となくみんなで回避し、逆にそれによって発生するであろうリスクや事業上の不都合を補うために、わざわざ本丸の周囲に膨大な作業(3本の計画書づくり)を発生させ帳尻を合わせようとする、という一種のねじれ現象です。


 ちなみに、私が主にお手伝いをするのは、従業員の規模でいえば、だいたい300~5000人くらいの中堅・準大手企業が多いのですが、このクラスには、創業者のイケイケの事業姿勢やひとつの技術が当たってドーンとデカくなったところが多い。

しかも、地元で名前は知られており、“優秀”な大卒や院卒の社員も集まるので、彼らが気を利かせるおかげでおかしな知恵や機能がヘンに発達してしまい、このようなゆがんだ戦略・計画づくりが行われるようになるのではないかと思います。



◆手法・技法だけではなく、取り組み姿勢が重要

 いかがでしょう?当ブログを読んでくださっている皆さんの会社では、このようなイビツなプランニングが行われていないでしょうか?“聖域”を暗黙のうちにつくり、それを回避する免罪符としての「作業」をわざわざ増やしてしまっているようなところはないでしょうか?

色々と申し上げましたが、私の言いたいことはただ一つ、勇気をもって正面から真の戦略プランニングに取り組んでください、ということです。経営陣やマネージャーの方々には、勇気をもって、いったん自分の成功体験をチャラにしてください、と言いたい。

この姿勢がなければ、いくらシナリオ・プランニングなどの手法を駆使しても、得られるものはきわめて少なくなる(投資利益率はいちじるしく悪くなる)ということを、いくつもの実例を見てきた者として申し上げたいのです。

大前研一氏も強調されているように(★別コラム参照)、個性があって、豊かで、しかも腹に落ちる戦略が生み出されるには、何よりも取り組み姿勢が重要になってくるのです。決して分析技術の高さだけが決め手になるのではありません。

着実に進化を続けている企業は、常に真摯に自らと向き合うことで問題や可能性を発見しています。この事実をいま一度見すえて、あらゆる企業に、真の戦略プランニングに正面から取り組んで欲しいと思うのです。



※本コラムは同社の了解を得て掲載しています。


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2010年06月14日

◆日本企業は5つのフェーズでの真の国際化を目指せ【大前研一】




              ※これからの企業は、5つの発展段階を最も効率的かつ効果的に乗り切れる可能性がある...




◆気になるひとこと◆

---日本企業にとっての国際化、多国籍化が困難な理由は、体質に国際的普遍性がなく、世界的に特異な均質集団だからである。国際化に近道はなく、的確なフェーズを踏むことによってのみ、成功が着実なものとなる---

                                     ~大前研一 『日本企業生き残り戦略』



◆コメント◆

 大前研一氏が、マッキンゼー日本支社長時代の1987年に提唱した「真の企業国際化のための5つのフェーズ」の説明で語られている言葉です。

大前氏によると、日本企業の真の国際化に近道はなく、次の5つのステップを踏み、しかも常に現在から数ステップ先のための人材や経営システムの開発に先行投資することによってのみ、成功を収めることができる、ということです。

その5つのフェーズを概観してみましょう。


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◆国際化の5つのフェーズ(要約)◆       ※あわせて上図をご参照ください
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■第1フェーズ: 現地の提携代理店を通しての輸出・販売

 国内で事業が充実してくると、商社などを使い、現地で輸入代理店(ディストリビューター)を使って、自社製品を輸出し始める。

   ↓ ↓ ↓

■第2フェーズ: 自前の販売店の展開による市場への接近

 代理店では把握できない顧客ニーズや市場動向を得るために、直轄販売店を自前で設立する。権限委譲を的確に行わない場合、現地の顧客や競合よりも、日本の本社の方をむいて仕事をするので注意が必要。

   ↓ ↓ ↓

■第3フェーズ: 現地生産の開始
  ※多くの日本企業が国際化を達成したとカン違いするフェーズ(当時)

 現地で生産を開始する。日本企業の多くはこのフェーズを国際化と考えている。しかし、現地生産で失敗したり、為替が円安になれば再び国内に引き揚げればよい、といった姿勢で生産を続ける企業も多いため、真の国際化が果たされないままのケースが多い。

   ↓ ↓ ↓

■第4フェーズ: 研究開発、財務、人事などワンセット・ビジネス機能を現地に移植

 生産、販売だけではなく、財務、研究開発、設計、人事、購買などの機能をワンセットで現地に持っていく。こうしてようやく現地の主要企業と戦うための体制が整う。日本企業でこの段階に入っているところはない(当時)が、IBM、コカコーラなどはここに進んでいる。

   ↓ ↓ ↓

■第5フェーズ: 全体最適機能と部分最適機能の調和・棲み分けによる真のグローバル化

 グローバル・インテグレーションの段階。世界企業はあくまで戦いの場である現地に創意工夫が生まれるような組織運営形態をとることが望ましい。その結果生まれてくる機能や努力の重複を避け、かつ同じ屋号のもとで事業展開するための価値観、連帯感といったものを共有する方向で再統合すべき。

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 注意点として、大前氏も強調されていますが、第2~4フェーズを飛ばして、最初から第5フェーズを達成することはあり得ないということです。

なぜなら、各フェーズを端折って諸機能の作り込みや調整を最初からやり過ぎると、本社への依存体質が強まり、均質化がむしろ進んでしまいます。つまり、真の国際化に必要となる、多様性を糧とする懐の深い企業カルチャや、紆余曲折の経験を経営資源(ナレッジ)として生かす企業システムなどが育たなくなってしまうからなのです。

ゆえに、大前氏は、着実にこれらのフェーズを、焦らず、しかし効率的に消化していく必要性を強調されているのです。


 前述したように、このモデルは20年以上も前のものです。しかし、いまだに、現地と業務提携したり、採用した現地人に日本の教育を受けさせたり、役職者の外国人比率を上げたりすることが「国際化」とカン違いをしている企業が多いのが現状です。

重要な権限を事実上、日本人が独占し、トラブル対応が遅れたことで批判を受けた自動車会社の例が示唆するように、いまだに彼の地の文化や価値観を心からうやまい、心身ともにその国に溶け込んでいる日本企業はほとんどないといっていいでしょう。

一方で、P&G、ジョンソン&ジョンソン、IBM、コカ・コーラ、アップル、アマゾンなどの企業は、日本企業に比較して、人事政策や商品展開など一歩も二歩も現地化が進んでいる感があるのは否めません。

(アップルやアマゾンには、最初から「国境」という概念がないように見えますよね♪)


 日本企業が国際化で後れをとる大きな原因の一つに、最初から「分母」に世界をすえているのか、国内市場を置いているのかといったことがあります。

その昔、海外と情報やマインドを共有する手段を持たなかった多くの日本企業は、いったん国内向けの体質を作り込んでから、改めて国際的な多様性へと組織体質を転換していかねばならなかったため、最初から10年くらいのハンディキャップがあったのです。

しかし今は違います。ヨハネスブルグで「いまランチをしている人」の“つぶやき”をフォローし、iPADを駆使して、地球の裏側にいる仲間と同時に仕事を進めることができる時代です。

こうした時代を生きる現代の企業(もちろん中小、ベンチャー企業も含みますよ)は、最先端のITと大前モデルとを融和させたうえで、最初からアジアやアフリカなどの市場を「分母」に置いたビジネスモデルをめざしてほしいと思います。



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2010年06月09日

◆ストラテジック・ラグ分析~KFSを体系で捉えよ【小林 裕】



          ※ストラテジック・ラグ分析表のイメージ(実際のものは、さらに詳細なフォーマットになります)



◆気になるひとこと◆


---『ストラテジック・ラグ分析』・・・戦略においては、真のKFSを押さえ、資源を徹底投入することはもちろんである。しかし、実務の世界では、それ以外のサブKFS群に対しても、体系的に把握し、備えておく必要がある---

                                                 ~小林 裕 『ストラテジック・ラグ』


◆解説◆

  きょうは、あまり知られていない手法を紹介しましょう。JMAC(日本能率協会コンサルティング)から米国A.T.カーニー社の日本代表を経て、現在は独立して活躍されている小林裕(こばやしゆたか)氏が提唱される「ストラテジック・ラグ」という考え方です。

 一般的に、戦略立案の際、KFS(=Key Factors for Success/成功の鍵)を徹底的に押さえなければならないということはよく知られています。

しかし、その具体的な分析方法については、意外にも統一的な考え方はなく、多くの場合、KFSと思われるひとつの領域を特定し、定量チェックを加えながらその領域への接近方法をあれこれと考える、といったレベルで終わっているケースが多いようです。

それに対し、小林氏は、実戦的な戦略立案においては、単に1つのKFSを特定して終わるのではダメで、真のKFSとサブKFS群を体系的に分解し、強いものと弱いものを見きわめ、科学的に資源の配分を決めるべき、としています(上図を参照)。

さらに、直接競合するなど相互作用がある企業を選び、ストラテジック・ラグ分析を通じて、KFSの体系のうち、強いものと弱いものを相対的に把握しておくことが重要だとも言っています。


 ストラテジック・ラグ分析の意味は、サッカーやボクシングなどの競技に置き換えて考えるとわかりやすいでしょう。

これらのスポーツは、プレーや技の連続(コンビネーション)で戦うわけです。その戦い方の本質は、最大の強み(真のKFS)、すなわちトップ選手のゴールや右ストレートなどのフィニッシュブローを生かすために、そこに至るまでのキーとなるプレーや技を最適に組み合わせる、というものです。

ストラテジック・ラグ分析の本質も同様です。すなわち、「真のKFS」のポテンシャルを最大限に引き出すために、それを支えるサブKFS群についても的確に把握し、最適に組み合わせて戦いなさい、というものなのです。

一見して目新しく感じられる考え方ですが、各種の諸条件を整えたうえで戦略を推進しなければならない実務者にとっては、むしろピッタリくるものではないでしょうか?


 ちなみにこの理論は1986年に開発されたものですが、なぜいま「ストラテジック・ラグ分析」なのかについても触れておきたいと思います。

「戦略を具現化すること」を生業とする多くの経営者や(事業再生などの)専門家にとって、それを達成するためには、業界のキーファクターや自社の強み・弱みを網羅的に把握しながら事業をドライブしていく必要があります。

なぜなら、昨今の経営環境においては、イノベーションのサイクルがきわめて短くなってきたことや、市場ニーズの変化が非常に激しくなってきたこともあって、「真のKFS」と思われていたものが短期間で移動または変化するからです。

こうした“有事”に対応する手法としても、「KFSとサブKFS群を体系的に把握しておく」というストラテジック・ラグ分析の考え方は、きわめて有効となるのです。



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2010年06月03日

◆戦略は、仮説であり、PDCAの道具にすぎない 【冨山和彦】



       ※戦略を組織の統一的な道具として使いこなすことが重要...(写真:IGPI社長の冨山和彦氏)



◆気になるひとこと◆


---戦略は仮説であり、PDCAの「道具」にすぎない。フィードバックサイクルを回して、(仮説としての戦略に対する)冷静で客観的な敗因分析ができる企業のみが勝者となる---

                                          ~冨山和彦 『会社は頭から腐る』



◆コメント◆

 コーポレイト・ディレクション社代表~産業再生機構のCOOを経て、現在、株式会社 経営共創基盤(※)の社長をつとめる冨山和彦氏の言葉です。
 
 戦略を構成する要素には、変化するものとしないものがあります。市場や競争環境など日々刻々と変わる要素については、無理に計画化するよりは、むしろ仮説と割り切り、PDCAのフィードバックループを組み込んで、たえず修正しながら戦いを進めていくことのほうが有利であるというのが冨山氏の主張です。

逆に、あまり変わらない要素として、事業の経済構造があります。これを的確にみきわめて、事業モデルをしっかりと作り込むことの重要性も説いています。

この領域は、競合や市場の分析に比較して地味ではありますが、その重要性は私も強く感じるところです。

たとえば、ノートパソコンのように、すでにコモディティ化してしまったような製品では、いくら追加機能を加えたところで、あるいは(多大な労力を投入して)販路を拡大したところで、粗利や営業利益ベースで大きな増幅が望めるとは思えませんよね。

むしろ、大きくビジネスモデルを転換して、たとえば、クラウドへの移行コンサルティングと、機能を最小限に抑えた安価なPC・通信環境とをワンセットで法人へ提供するサービスの方が、付加価値が高くなるかも知れません。


 また、戦略の実行フェーズで重要なのが、「客観的に敗因分析ができるか」という部分です。これは「言うは易し、行うは難し」で、たんに喧々諤々と議論をすれば良いというものではありません。

戦略を修正しながら進むということは、持続的な客観性を持った組織姿勢が求められます。ゆえに、適切な分析スキルはもちろんのこと、失敗を糧として次に活かそうとする組織カルチャがあるか、それを支える教育・評価制度が備わっているかなど、さまざまな要素がワンセットで問われてくるのです。

 冨山氏や私が再建を手掛けてきた会社に共通するのが、かつて産業再生機構の支援を受けたカネボウやダイエーのような「チャレンジ精神の欠如」や「見たい事実しか見ない」という体質です。

このような企業体質を持っている限り、たとえ一流のコンサルティングファームに金ピカの戦略を作ってもらったとしても、その実現は望めないでしょう。

戦略は、もちろん重要です。しかし、あくまでも「道具」であり、目的とは成り得ません。むしろ、日々の活動において、着実にPDCAサイクルを回しながら戦略を正しい方向へと進化させ、事業活動そのものに生かしていくことができる、強い意志をもった企業にのみ、成功への道が開けてくるのです。


※同社とジェイ・ティー・マネジメント田中事務所は協力関係にあります。


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