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ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所の代表、田中です。日比谷のオフィスを拠点に、起業家、経営者に対し、濃密な支援を行っています。いつでもお気軽にコンタクトしてください。              ※詳しい経歴は、カテゴリ(左バー)の「My Profile & 会社概要」をご覧ください。
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2010年04月29日

◆リーダーの役割とは?ベッツィ・サンダースの主張を考える




                     ※リーダーの役割は、スキルや技術を超えたところにあるのか?



 リーダーの役割をたった1つだけあげるとしたら、それは「ビジョンを示し、皆を統率してそこへ導いていくこと」であろう。

以下は、ベッツィ・サンダース氏がのべているリーダーシップ論を集約したものである。よく見ると、MBAプログラムなどで学ぶ手法・技法のほとんどすべてが、これらの5つを効率的または効果的に実現させるための手段にすぎないことがわかる。

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 リーダーシップの能力とは・・・
 
  ◆人を駆り立てるビジョンを創造する
  
  ◆そのビジョンを現実のものとする

  ◆ほかの人とそのビジョンを共有して巻き込む
  
  ◆ビジョンを立証する
  
  ◆ビジョンを更新する

 YOUR PLEASURE IS MY PLEASURE The moment fabled service is born
                          BETSY SANDERS 2000
(ベッツィ・サンダース:
 「お客さまの喜びは、私の喜び~伝説のサービスが生まれる瞬間」より)
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言いかえれば、これらがあらゆる事業経営行為の体系の最上位に位置することになる。MBA的手法を学んでいなくても事業を成功させる経営者がたくさんいるのは、こうした最上位の行為=もっとも重要な行為、にそって四六時中考え、実践し、しかも何年にもわたってそうしたパワーや思考回路を持続できているからではないだろうか?


 たとえばドトールコーヒーの鳥羽氏、雪国まいたけの大平氏、スターバックスのハワード・シュルツ氏、ガリバーインターナショナルの羽鳥氏。

彼らは「稀代の経営者」と言って差し支えないと思うが、直接お話した感触などから述べると、経営理論・手法・技法の知識が決して豊富にあったわけではなく(今もそんなにあるわけではない?)、事業のスタート時点では「普通のおじさん」であったと思う。

シュルツ氏などは貧しいブルーカラーの家庭に生まれ、貧民街で育ち、ギリギリの奨学金で入れる大学にしか進学できなかったという経歴を持つ。大平氏にいたっては、最終学歴は中学卒業で、少なくとも経営理論や手法・技法を体系的にじっくり学ぶという環境にはまったくなかったという。


 ただ、普通のおじさんと決定的に違う彼らの特徴は、執念ともいえる夢やビジョンを持ち、途中であきらめることなくその実現にチャレンジし続けてきたことである。

私自身、かつてさまざまな手法を駆使しながら経営戦略コンサルタントとして仕事を行い、現在も、主体的な立場(経営者の一員)として企業再生などに取り組んでいるが、一貫して感じるのは、彼らのような姿勢を持ち続け、周囲を巻き込み、より上位を目指して気持ちを高めていくことのむずかしさである。

少なくとも、事業に対する最終責任を負い、数年にわたって自らが事業を牽引するという立場にあるとき、戦略コンサルタントの手法やMBA的な経営技法の難易度が、これより上にくることは決してなかった。


 戦略立案手法やファイナンス、市場分析等々のスキルは、お金を出して勉強すればほとんどの人が修得できる。しかも、それらのメニューは豊富で、より取り見取りである。

一方で、夢やビジョンを心の底から信じ、それを目指して日々格闘できる人間になるための汎用的な理論については、基本的なわく組みすら発見されていないように思う。

つまり、成功は、いまだにお金(だけ)では買えないものであり続けているということであろう。そして「考え続け、チャレンジし続ける」という、容易ではない行為を熱意をもって継続すること、これが事業成功の条件あるいは秘訣であるという事実は、時代を越えてもまったく変わっていないのだろう。


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2010年04月24日

◆割れ窓理論と永守会長~劇的なアプローチの本質を考える



              ※実は足もとに答えがある?犯罪率の改善・街の浄化や
                破たん寸前の企業の救済に劇的な効果を発揮したとされる割れ窓理論




 ブロークン・ウインドウズ(割れ窓)理論という、環境改善のための考え方がある。

成功例に、ニューヨーク市の、地下鉄をはじめとした都市環境や犯罪率の劇的な改善例があることはよく知られている。1990年を頂点として、同市における殺人事件は3分の2も減少し、重罪事件は半分、地下鉄での重罪事件の発生は75%も少なくなったというものだ。

日本にも同様の事例がある。

「2001年に北海道警の札幌中央署が割れ窓理論を採用し、すすきの環境浄化総合対策として犯罪対策を行った。(中略)駐車違反を徹底的に取り締まる事で路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少、(中略)2年間で犯罪を15%減少させることができた」という。(『Wikipedia』より)


割れ窓理論のアプローチは単純かつ地味である。

落書きや違法チラシなどの軽微な犯罪をしつこく徹底的に取り締る、といったアナログ的な対応をねばりづよく続ける。落書きが書かれてもすぐに消すことを徹底して繰り返し、軽微な犯罪にも絶対に妥協せず、それらが起こらなくなるまで断固とした姿勢で取り締まりを続ける。たったこれだけである。


 落書きしたり犯罪を引き起こしてしまう人たちの多くは、生まれつきそのような行為に走る資質や悪意を持った人たちではなく、むしろ、周囲の環境に敏感に反応し、その環境に影響されて事におよんでしまうという。

これは、目に見える環境の悪さがある種のメッセージとなり、それが自然に人々の心に潜在的な意識をうえつけてしまうということであり、この意識を変えるためには、(抽象論や精神論などではなく)同様に、目に見える具体的なかたちで直接的に意識にうったえかける方法が有効、ということだと考えられる。


 会社再建の名人である、日本電産の永守会長も、同様の考えかたを実践して成果をあげている。

いわく、「やることは二つしかない。一つは6S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ・作法)。職場をキレイにさせること。もう一つは出勤率。休まずに会社に来させること。これらを徹底してやらせることにより、会社は必ず改善する」

事実、このやり方を適用したコパル社(現日本電産コパル)やトーソク社(現日本電産トーソク)は、それまでの長期低迷がうそのように黒字化している。両社は十数年ぶりに過去最高益を更新するか、またはそれに近いかたちで見事な再生を果たしているのである。

これらの事例は、確実に成果をねらうためには、目に見えるメッセージを、一貫性と継続性を持って発信しそれを意識に植えつける取り組み、およびルール違反を犯す者に対しては断固たる姿勢でのぞむ姿勢が不可欠であることを示唆している。

この裏側には、いくら立派なビジョンや戦略を提示しても、それを迅速かつ徹底して実行させるための「意識改革」「行動変革」がともなわないかぎり絵にかいたモチで終わってしまうという、経営者ならではの実戦的な考え方がある。

 
 きびしい経営環境が続く中、もはや打ち手はないように思える。確かに、大きな業績改善や販売機会の開拓はむずかしいと思う。

しかし、たとえば組織の軽量化、ムダの削減、業務プロセスの効率化など、身のまわり(組織内部)のことに関しては、大がかりな手法や理論を導入せずとも、だれもが取り組めるであろう6Sや割れ窓理論を適用するだけで、一定の成果が得られる可能性があることも忘れてはならない。

整理・整頓というと、「なんだそんなことか」とナメてかかる人がいるが、身の回りの整理・整頓や情報の整理・整頓は、「時間の使い方の整理・整頓」につながるゆえ、効率的かつ効果的なワークフロー(業務プロセス)の形成にもっとも影響をあたえる要因の1つと成り得る可能性があるのだ。

(ちなみに、営業拠点や工場の統廃合による再配置、調達先の再編成などは、戦略レベルの整理・整頓である。これがビジネスの大きなフロー・プロセスに多大な影響を与えることは論をまたないであろう)


 徹底する気さえあれば、確実に改善効果は得られる。組織の沈没を多少なりとも先のばしにしてくれるくらいの成果が得られることは覚えておきたいものである。


○参照:
  「プラウドフット・ジャパン社WEBページ」 2006年
  『壊れ窓理論の経営学』 マイケル・レヴィン 光文社 2006年
  『日経ビジネス 逆境を乗り越える経営』日経BP  2008年
  「カンブリア宮殿 日本電産・永守会長出演回」 テレビ東京 2009年


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2010年04月20日

◆真の事業進化とは?「プロフィットゾーン経営戦略」の誤びゅう



 「プロフィットゾーン経営戦略」という理論がある。「ザ・プロフィット」という書籍で一躍有名になった、マーサー・マネジメント社のコンサルタントであるエイドリアン・J・スライウォツキーが提唱する、利益獲得の戦略を新しい視点から解き明かした、とされる理論だ。

 概要を簡単に述べよう。

 ある企業がいちばん稼げる領域、すなわち「プロフィットゾーン」は、市場や製品・サービスの成熟化・コモディティ化と同時に他の領域へと移動をはじめる。よって、動き出したプロフィットゾーンの範囲と方向を見定め、新しいゾーン、または将来到達すると考えられるゾーンを推定し、自社の利益モデル(ビジネスモデル)を再構築(実質的には拡張)せよ、というのがこの戦略の骨子である。

 これを宅配便のケースに置き換えてくわしく考えてみよう。

 黎明期や揺籃期の市場においては、ある会社の宅配便サービスは、主だった競合がいない状態である。その時点では単純配送サービスの需要が高いので、取扱店のネットワークを拡大するなどして、まさに「単純配送サービスそのものの量的確保」に戦略をフォーカスすればよい。すなわちプロフィットゾーンは自社が現在取り組んでいる領域であり、当面はここでの需要の獲得に集中すべきである。

しかし、市場の成熟度が進むにつれて、さまざまな競合が現れ、価格や配送スピードなど比較的取り組みやすい軸での競争が次第に激しくなる。すると、単純配送サービスの利幅が徐々に圧迫されてくる。そうなると、プロフィットゾーンは、次の「落ち着き先」を求めて、まるで逃げ水のように動き出す。

ビジネスプロセス(流れ)という軸でいえば、川上にある、「家庭への個別集荷サービス」や、川下に位置する「遠隔地への配送サービス、時間指定配達サービス」などの、よりハイレベルな領域を目指して移動をはじめる。また、ビジネスの幅や深さでいえば、クール便やゴルフ便など、取りあつかい種類の多様化、といった領域に移っていく。

それゆえ、プロフィットゾーンを追いかけるか、あるいは先回りするかして事業領域を拡大し、新しいゾーンをカバーする活動を行え、というのがこの戦略理論の主旨である。そしてこれを、コカ・コーラやGE、マイクロソフトなどの豊富な事例を用いて説明しようとしている。

結論から言おう。

こうしたスライウォツキーの一連の観察は、残念ながら事業活動の一面のみをとらえているに過ぎない。企業の内部で行われている、本質的な意図からくる情報の循環や活動は捕捉されておらず、重要な戦略要素を見抜けていないのである。

たしかにスライウォツキーが指摘するように、前述の企業群を観察した場合、各社ともに、他の事業領域を追いかけるように拡張しているように見えるため、観察による描写としては正しい。

しかし、「儲かる分野(プロフィットゾーン)を追いかけての事業の拡大」という一面的な現象に目をうばわれてしまっており、その背後にある、「既存コア事業のさらなる強化・充実・イノベーション」という、これらの企業群がほんとうに意図する重要な視点を見落としてしまっているのである。


 以下、これについて説明しよう。

事例の企業群が新しい周辺事業領域へ踏み出している理由は、単に、積みあげ式に利益を得たいからだけではない。

むしろ、既存事業に関連するコンサルティングやカスタマーサポート、代理店パートナーとの提携などといった領域に「お金が取れるかたち」で進出することによって、自社製品に関する精度の高いニーズやデリケートなアイデア、顧客の深層心理からくる情報などを収集し、従来からのコア事業(もともとのプロフィットゾーン)へそれらを還流・融合させようとしているのである。

そして、最終的に製品やサービス・コア技術を進化させ、何らかのイノベーションを引き起こそうとしているのだ。

そのうえで、ふたたび、コンサルティングやカスタマサポートなどの周辺サービスをもそれに合わせて高度化・精緻化し、顧客のさらに高度化していくニーズの掘り起こしや新たな市場セグメント、チャレンジが必要な上位の顧客層へとアプローチしてゆく。

このような「コア事業(自社の得意分野)のたゆまぬ進化をはかるための好循環」を自社にビルトインしようとする意図がひそんでいるのである。


 新しいプロフィットゾーンへの進出は、「物理的に(目に見える)」新しい領域へ事業を拡大することだけを意味するものではない。既存の製品・サービス・技術などに対して「顧客の斬新な意見や異質な視点をぶつけて既存事業の再定義をはかる」といった、「新しい思考・行動形態」あるいは「自社内部における新しい情報循環構造の構築」という領域への進出をも意味しているのだ。

そして、経営資源に制約がある多くの企業にとっては、むしろこちらのアプローチが効果的であり、着実に本業の強化をねらえるのである。


 さらに噛み砕いて補足すると、メンテナンス・サービスやカスタマーサポートなどは、利益を稼ぐためだけのものでは決してないことは、特に産業用ロボットや生産設備、プラントエンジニアリングなどの精密機械や複雑な機器を扱う業界ではよく知られている。

つまり、単なる「おまけ」としてのサービスに留めるのではなく、それ自体で「お金がもらえるレベル」のサービスにまで高めていかないと、QCDすべての面において高度なサービスが開発・提供できないばかりか、顧客にパートナ(伴走者)として認めてもらえず、本当に重要な相談や情報を継続的に持ちかけてもらうことが難しくなる。

ゆえに力を入れざるを得ないのであり、また、そのような取り組みをベースにしたソリューションを提供することは、真に顧客の問題解決をするかたちへと近づくので、それだけの厚みのある利益も見込めるのである。

このことは、特にB2Bにおける企業において、サービスマンに、ビジネス感覚をあわせ持つ優秀なエンジニアや開発担当者などをアサインしている企業が少なくないことからも容易に想像できるであろう。


 では、(スライウォツキーが事例として用いている)有名なGEのファイナンス事業はどうなんだ、GEの中ではまったく異質の事業として完結しているではないか、といった意見もあるだろう。確かに同社における金融事業は稼ぎ頭でもあり、一見、同社の製品の開発・販売などとは無関係と思われるむきも少なくないと思う。

しかし、実は、GEのファイナンス事業部も、同社の製品が組み込まれ使用される工場の生産ラインや病院、航空機などのスペック、用いられている技術、設備の経済性、顧客の事業計画・財務状況などを精査することにより、ファイナンススキルを蓄積することはもちろん、同社の製品のR&D部門やマーケティング部門などに重要な情報をフィードバックしているのである。

(本コラムとは異なる解釈で、この様子が、彼の著書『プロフィットゾーン経営戦略』にも描かれている)

ゆえに、自社のコア事業に光るものを持っている企業や体力のない企業が安易にコカ・コーラのような事例を真似ると、逆に、コストや不必要な負荷を背負いこむリスクが高くなることは肝に銘じておきたい。


 利益獲得のための戦略は、決して「物理的に(目に見える)新たな領域へ進出をはかること」だけではない。

とくに変動がはげしくリスクが高い経営環境下では、むしろ「自社の価値に対する新しい見方・考え方」を行い進化の軸を発見することや、そのヒントを得るための「新しい情報循環構造」という領域を開拓することが着実かつ有効な戦略となるのである。



◇参照文献
『プロフィットゾーン経営戦略』エイドリアン・J・スライウォツキー ダイヤモンド社 1999年
『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』エイドリアン・J・スライウォツキー ダイヤモンド社 2001年

『ジャック・ウェルチ わが経営 <上・下> 』ジャック・ウェルチ 日本経済新聞社 2001年
『ジャック・ウェルチのGE革命』ノエル・ティシ 東洋経済新報社 1994年
『思考スピードの経営』   ビル・ゲイツ 日本経済新聞社 1999年



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2010年04月16日

◆実戦感覚あふれるプロ経営者、三枝匡の戦略・改革理論





 三枝匡(さえぐさ ただし)という経営者がいる。

ボストン・コンサルティング・グループの日本人社員第1号を経て、企業再生のプロとして独立(三枝匡事務所を設立)。複数企業の再生を成し遂げた後、FA部品・金型商社「ミスミ」の経営者へと転身し、同社を超優良企業へと生まれ変わらせた人物だ。日本が誇る数少ない「プロフェッショナル経営者」である。

 私が彼を知ったのは17年も前になる。当時からコンサルタントや学者、経営理論のあり方に疑問を持っていた私であったが、そのような世界の出身ながら、事業の当事者となってしっかりと結果を出している人がいることを知って、強い感銘を受けたものである。

(それ以来、彼は私が目標とする一人になったのだが、仕事内容が酷似してきただけでなく、オフィスの名前まで似てしまった)


 さて、本コラムでは、三枝匡氏(以下、敬称略)が実体験から得た、企業改革・活性化を成功させるための理論や、現場を熟知するプロ経営者ならではのポイントを、彼の一連の著作から抜粋し説明していきたい。

なお、最初に断わっておくと、彼の理論は、あっけないほどシンプルで当たり前のことばかりである。それは実践・実行の徹底が念頭に置かれているため、必然的にそうならざるを得ないのである。一方で、戦略体系や組織単位など、改革の柱となる一つひとつの要素には一切の妥協や隙がないこと、および人間の能力を最大限に引き出すための実行フェーズにおける難しさが含まれることは覚えておきたい。


 さて、まずは、三枝理論のポイントを、ざっくりと「戦略・計画づくり」「組織づくり」「改革推進を支えるしくみ・施策づくり」「改革推進のエンジンとなる人材」の4つの視点から見てみることにする。



1.戦略づくりの視点

1-1.戦略のスペック

■ストーリーがあり、論理的にスキがなく洗練された形で構成されていなければならない。

■わかりやすく共有しやすいコンセプト・理論体系・哲学が組み込まれていなければならない。

■現場で骨抜きにならないようにするため、最上位の戦略から現場での実行を支えるツールまで(幹だけではなく枝葉まで)、ひとつの体系として徹底してつくり込まねばならない。


1-2.戦略・計画のつくり方

■(計画担当者やコンサルタントに任せるのではなく)戦略・計画を実行する当事者みずからが創出しなければならない。
→計画者と実行者をわけると、魂が込められたものとはならない。また、山あり谷ありの改革プロセスにおいては、うまくいかなくなると責任の転嫁が始まってしまい改革にブレーキがかかってしまう。



2.組織づくりの視点(改革理論のいちばんの要諦)

■ビジネスの基本サイクル「★創って、作って、売る」(図を参照)を力強く高速回転させることが改革の核心である。よって、これを組織の中核単位として組織設計を行う。

■人材や各種の施策・システム、制度は、この基本サイクルを支援することを前提に育成・構築されなければならない。



3.改革推進を支えるしくみ・施策の視点

■改革タスクフォースメンバーは、そのまま事業部やユニットの責任者となり、自分の組織をけん引しなければならない。

■気骨の人事(荒っぽくとも、前例のない思い切った人事)を断行しなければならない。

■説得をいとわない姿勢と毅然とした態度を両立させ、組織全体を巻き込んでいく努力を継続しなければならない。
→全員を巻き込む努力をいとわず、切迫感や危機感をできるだけ共有する。ただし、評論家的な態度を取る者や、新しいやり方に対して根拠のない抵抗を示す者に対しては、断固たる処置を取るべきである。



4.改革推進のエンジンとなる人材に関する視点

■タスクフォースの組成がカギとなるので、人選は改革先導者みずからが細心の注意をもって行うべきである。
→修羅場を経験した人間、あるいは、修羅場に耐え、経営・事業の因果律を肌で学びながら進化できる人間をいかに発掘し、結集できるかが最大のカギとなる。

■経営者の意識の変革、および嘘のない継続的な姿勢が必要である。
→みずからコミットする気のない経営者がいる組織の改革はきわめてむずかしい。また、思い切った人事を承認できるかがその人の本気度をためす踏み絵となる。

■改革先導者は「覚悟」を決め、それを人生の貴重なチャンスととらえ、ひたすら前進しなければならない。
→改革を重荷ととらえるか、大きなチャンスととらえるかによって周囲に与える影響が変わってくる。発言や態度がブレると、周囲はそれを敏感に察知し、不安を感じ始め、改革が減速し始める。



 やはり、これらの体系の中でいちばん興味深いのが、変革の決定打として、「ビジネスの基本サイクルである『創って、作って、売る』を力強く回せる組織をつくるべき」と断言している点、および、さまざまな施策やシステムがそれを支援するために組み立てられている点である。

よって、これに対する解説を中心に進めたい。


 まず、彼のこのシンプルな組織論については、「言い切り過ぎ」と感じるむきも少なくないと思う。しかし、実は「商売をしていることが肌で感じられること、このサイクルが力強く回転するサイズであること」は組織づくりの基本中の基本で、常に意識しておかなければならない最重要課題なのである。

経営学で学ぶ組織論では、しばしば事業部制や機能別組織、SBU、マトリックス組織などのモデルを並べて、どれがいい、悪い、といった議論が行われる。しかし、これらは、あくまでも、三枝が提唱する基本サイクルユニットの発展・応用形あるいは次善策ととらえるべきである。

つまり、これらの組織モデルは組織の大型化・効率化を実現する場合のやむを得ない手段なのである。したがって、こうした発展形の組織モデルを導入する場合でも、まずは三枝流の基本サイクルによって商売の感覚をしっかりと体得した人材を育成した後にすべきなのだ。さらには、評価制度や企業文化にもメスを入れ、商売に敏感な組織文化を醸成したうえで取りかかるべきなのである。

三枝は、これらを体験的に理解している。商売のサイクルが高速回転することで、社員の感覚が磨かれ、市場への対応力が高まり、それが顧客満足度や収益性の向上へ直結することを実戦を通じて熟知している。だからこそ、あえて、このシンプルな理論を「決定打である」と言い切れるのだ。

さらに言えば、こうしたゆるぎない見識を持ち、それを自在に使いこなして結果を出せることが真に高度な経営スキルあるといえる。分析に終始したり、経営手法・技法を設計したり、ロジカルシンキングに長けたりしているだけでは必要条件を満たしているに過ぎず、経営のプロと呼ばれるには程遠いということである。

われわれは、三枝の理論を理解すると同時に、常に妥協することなく結果を追求する、あくなき彼の姿勢もしっかりと学ばなければならないのではなかろうか。


 手痛い失敗を乗り越え、数々の実戦の修羅場をくぐりぬけてきた彼のメッセージが本質的に語りかけているもの、それは「安易に“道具”に頼るな」ということ、そして「まず、自分自身の視点や行動スタイルを確立し、常に結果に焦点を合わせて行動せよ」ということなのである。

 
◆参照文献
 『戦略プロフェッショナル』
 『経営パワーの危機』
 『V字回復の経営』
 『日本の経営を創る』/以上、日本経済新聞社
 『ハーバード・ビジネス・レビュー-07年1月号/三枝匡インタビュー』/ダイヤモンド社



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2010年04月15日

◆会議を問題解決トレーニングの場に変え、生産性を高める方法

 


 デフレの長期化懸念のもと、企業には経費節減の圧力がかかり、やむをえず教育研修費をカットする動きも出ているようである。しかし、教材を購入したり外部機関を導入したりしなくても、社内の機能や仕組みを利用して教育や実戦的な訓練が行える場合も少なくない。

そこで、社内であまりコストをかけずに実践できる、「会議を実戦的なトレーニングの場に変える方法」を紹介したい。


 とかく会議は悪者にされがちである。いわく「会議をやり過ぎると内部志向になりやすい」「会議が長い会社は意志決定のスピードが遅くなる」など。しかし、そのような非効率な会議も、見方を変えると、「日頃入手できない、さまざまな情報や意見が飛び交う場」、あるいは「本音で語られた、雑多な意見や情報が集まってくる場」ととらえることができる。

ゆえに、逆にこの環境をうまく利用すると、問題解決スキルや情報整理&ロジカルライティングなどのスキルを養う格好の場となるのである。


以下、これらを行う方法や手順について順番に述べよう。


 まず「問題解決スキル」の訓練方法について。

 具体的には、訓練対象者に、会議の司会(ファシリテーション)を通じて問題解決を主導するリーダーをつとめさせる。これによって、ある問題の情報や論点を整理し、まとめ、解決へと導くための一連のフェーズを意識して行わせるのである。

たとえば、複数の部門や部署が参加する会議では、1つのアジェンダに対する意見や見解、持っている情報はさまざまなものがある。ゆえに、放っておけば、これらが勝手に飛び交って収拾がつかなくなる。

リーダーには、こうした情報の共通項やポイントを整理し、議論の道筋を見きわめ、検証を行いながら皆が納得する結論へとまとめ上げるスキルが求められるわけだが、これは、いわば問題解決のプロセスそのものであるといえる。

重要なのは、このプロセスを自律的に行い、限られた時間の中で生産的に解決策を導き出すことである。従ってリーダーは、以下のような標準的なフェーズを頭に入れておき、これにそって会議から適切なソリューションが得られるように訓練を繰り返すのである。



【問題解決型会議の基本フェーズ構成】

 ◇リーダーは事前に資料を読み、簡単なシミュレーションを行っておく


 ①解決を目指す問題およびそれに関連する情報を告知し、共有する
      ↓
 ②ブレーンストーミングにより、あらゆる意見・情報・知見等を顕在化させる
      ↓
 ③顕在化した意見や情報から共通する点を抽出し、グループ等に分類する
      ↓
 ④各グループの論点(ロジック)またはコンテクストを簡潔に、
  5W3Hフレームワークをあてて表現し、相互に比較・検討する
      ↓
 ⑤各論点またはコンテクストの的確な部分どうしを融合・結合または再編成し、
  最終的に、再び5W3Hを網羅してバランスよく表現された結論へとまとめ上げる



最初からできる人は多くなく、なかなか上達しない期間もあるだろう。しかし、情報を「顕在化」させ、「分類」し、「分析」し、「抽出したポイントを融合させてまとめ上げる」といった単純なサイクルをしつこく、粘り強く繰り返すだけで、ポイントとなるセンテンスやキーワードを把握するコツは必ずつかめてくる。

また、もともとこの中で使用する5W3Hフレームワーク自体は難解なものではないゆえ、平均的な能力を持つ人であれば、これをあてて論点を整理するスキルも意外に早く上達するものである。3ヶ月も経つと個人の生産性が少なくとも15~20%くらいは高まるゆえ、議事進行がかなりスムーズになってくる。


 次に、2つめの、議事録の作成による「情報整理=ロジカルライティング・スキル」について説明する。

これは、ある程度ロジカルに書くことを強制するフォーマットを設計し、これにそって議事録を記録させることでロジカル・ライティングの技術を身につけさせることを目指すやり方である。

基本的な考え方は、前述した4つのフェーズにそって議論された内容を、やはりこの4つのフェーズにそって記録することになる。ただし、言葉の調子や前後の流れにより内容が判断できる実際の会話と違って、記録(センテンス)を見ただけですべてが理解できるような記述をめざすことがポイントである。

しゃべり言葉をそのまま書くだけでは当該意見が持つ背景や意図、目的、ロジックなどがわかりにくくなる。ゆえに、バランスの取れた記述が求められるのである。

これをしっかりと行うために、記録する内容については、基本的にすべての意見に「5W3Hフレームワーク」をあてがい、常に、議論されている内容を網羅的に把握しながら記録することが求められるわけだが、これを「フォーマットの中に項目を設け、記入を義務付ける」ことにより強制的に整理させるのである。


 ちなみに5W3Hは中学校などで学ぶコンセプトであり、「な~んだ、それだけのことか」と感じる人も多いと思う。しかし、目の前の議論や事象・現象、会話の内容を瞬時に5W3Hを網羅して整理するためには、実はかなり高度な思考能力が必要とされる。

なぜなら、混沌とした会話や事象・現象の中から5W3Hに適合する要素を素早く抽出し、場合によっては自分の言葉に変換し、重複を排除した形で体系的に整理することが求められるからである。

私の経験でも、いきなり会社の事業目的や戦略、あるいは自分の活動や目の前の現象を5W3Hで説明してくれと投げかけて、これを瞬時に整理し、きちんと網羅しながら説明できる人はめったにいない。

しかし、各人がこれを修得したときのメリットは予想外に大きなものとなる。なぜならば、このフレームワークは、いわば「白いご飯」のようなものであり、身の回りの業務から戦略・戦術レベルの活動まで、あらゆる“おかず”(状況)に合う、つまり、あらゆる業務に適用が可能となるからである。

こなれてくると、ほぼ確実に会議やメールのやり取り、報告・連絡・相談などの効率が上がり、生産性が向上する。さらに、個人レベルのみならず、部門や組織レベルで5W3Hが共通の思考フレーム(プロトコル)になってくると、事業全体の生産性が目に見えて高まってくる。


 実際に私は、目の前のビジネスマンたちのしゃべり方や思考能力が急速に向上するのを何度も目の当たりにしているが、この方法は、簡便な方法にもかかわらず、かなりの(脳、あるいは思考回路の)トレーニング効果があると確信している。また、“高尚”なフレームワークやロジカル・シンキングの手法などを学ぶより、即効性も実戦性もはるかに高くなること、絶対に請け合いである。

(ちなみに5W3Hのフレームワークは、たとえば組織構成要素を表したマッキンゼーの7S、戦略分析手法である5フォースやSWOTなどのフレームワークを使いこなす上での前提または基礎となるものである。これらとの関連については別の機会に譲りたい)


 なお、1つだけ注意点を上げるとすれば、5W3Hを機械的に運用しないようにすることが肝要である。5W3Hというと、ご存知のように「いつ、どこで、誰が、何を・・・」といったように狭いあてはめ方をする人が多いが、これをやると「遊び」の部分がなくなりギクシャクしてくる。ゆえに、下記の表ように、When=時間や期間に関係すること、Why=目的や背景・理由に関連すること、といったように、各要素をゆるやかにあてることがコツである。


【5W3Hフレームワーク】
 ※使い方のコツは、それぞれの要素を「ゆるやかにあてる」ことである.

 ・Why  =理由、背景、固有の事情、理念、思想、哲学など.
 ・What =当該事象の内容、モノ、コトなど.
 ・When =時間や期間、時代など.
 ・Where =場所、場、空間(サイバー空間なども含む)、環境、市場、産業、領域など
 ・Who  =関係者、関連部門・部署、関係機関、競合、パートナーなど.

 ・How  =方法、メカニズム(構造)など.
 ・How many =オーダー(ボリューム)、影響度、人員数など.
 ・How much =心理的なものなど目に見えないものを含むあらゆるコストなど.


 一般的に、会議は悪者にされうとまれる存在である。しかし、トレーニングという目的を明確に導入し、実戦性の高い道具(思考のためのフレームワークや記録フォームなど)を用意し、システムとして作りかえるだけで、非常に有効な「教育・訓練手段」になる。

形骸化した会議に刺激を与える起爆剤となり、何よりも(会議の本来の目的である)適切なアウトプットが得られ、正確な情報の共有が成されるようになるのである。

ぜひお試しいただきたい。



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2010年04月15日

◆マッキンゼー、名和理論に欠けている"ソフトウェア"の視点



         ※某米国系産業用システム開発企業のCEOと、市場戦略について議論する私(写真左).



 私が知る限り、企業(特に日本企業)の強さの実態にかなり接近している戦略理論が、マッキンゼー東京オフィスの名和高司氏が提唱している「学習優位の戦略」である。

名和理論の骨子は、以下の5点である。根拠を説明する事例として、IBMやトヨタを取り上げ、そのメカニズムを解明しながら説明をこころみている。


◆(理論の前提として)情報の透明化や商品のディフェクトスタンダード化などが進化した今日の環境下では、よほどの差別的優位性や情報の非対称性がない限り、戦略そのもの(=すなわち古典的な戦略理論による戦略)による持続的な競争優位性を築くことはむずかしい。

◆事業コンセプトをいちはやく実践に移し、それを通じて顧客ニーズや事業の採算ポイントを学習行動によって吸収する。そうした事実情報に基づきながら、戦略の細部を練り上げていくことが重要である。

◆そのために、組織を生命体とみなし、「ゆらぎ=有機化」と「引き込み=自律化」を引き起こすような構造を、組織の特性をみきわめながらバランスよく埋め込み自己組織化をうながすべきである。

◆マネジメントの役割は、この「ゆらぎ」と「引き込み」が最適なかたちでバランスし、融合するような枠組みや情報提供の仕組みを与えることである。一方の現場は、それらが用意されれば、日々強い問題意識をもって現状の改善・改革にのぞむようになる。

◆(ポーターは、「日本の企業に戦略がない」としたが、実は)トヨタのような日本企業は、こういった学習行動を通じて、しっかりとある種の戦略ポジションに常に接近または位置し続けている。



 もともと戦略の立案、実行、最適化、革新といった一連のプロセスは、トップと現場の共同作業から成るものであり、どちらか一方が戦略のすべてを考えたり実行したりする、といったものではないというのが実務家の感覚であった。しかし、その枠組みについては、必ずしも明確ではなかった。

たとえば、ヘンリー・ミンツバーグ教授の創発的戦略論など、戦略の立案と実行を分離させるべきではない、といったことを提唱する人はいたが、必ずしもその役割分担やメカニズムは明確ではなかったのである。

このような状況で、マッキンゼー社のモットーである「企業の内側から見た視点」から、わかりやすく、ナチュラルな理論的枠組みを提唱したことの意義は大きい。派手な理論ではないが、われわれ戦略の実務に身を置く者にとって、ひとつの方向性を与えてくれるものとなっている。


 ただし、名和理論は、処方箋あるいは体系的な理論として見た場合、未完成な部分があることも指摘しておきたい。

まず、体系としての完成を阻んでいるのが、(相変わらずの※)マッキンゼー社ならではのスタンスである。同社の理論の特徴である、「上から目線」による、「組織構造という枠組みやくくりを与えることが、人間の諸活動を規定するための第一条件である」という思想が強く感じられる。

つまり、「人は、ある種の枠組みを与えてやれば、その中で競争原理に沿って自律的かつ健全に動く」という、(昔からの)同社の前提が感じられる。そして、依然としてこの視点から抜け切れていないのである。しかし、この前提は、普遍的に正しいとは言えない。


※同社はかつて、自社のクライアント企業に、競争原理に基づく事業部制やSBU(戦略ビジネスユニット)という「枠組み」の導入を数多く試みた。しかし、当初の想定と異なり、思ったように人が動かなかったり、逆に暴走したりと、かなりのケースで読み違いがあったのは、当時の関係者の多くが知るところである。


 では、どのあたりに問題があり、どこを補強すれば良いのだろうか?

名和理論、ひいてはマッキンゼー社の理論に共通する問題点として、組織のハードウェアすなわち組織形態や経営システムなどの「構造」に依存しすぎる傾向がある。さらに、人は「構造」を与えることによってしか動かない、といった前提がある。

しかし、これは「人間集団が音を立てて動くとはどういうことか」といった部分についての想像力や経験が必ずしも豊かではないことの証左である。ゆえに、戦略を実現するためにいちばん重要な“ソフトウェア”である「人を動かすメカニズム」への十分な考察や理論化がなされない。

たとえば、同じ企業内にいる人間であっても、思考的・行動的に成熟した人間、チーム、部門・部署と、稚拙なそれとでは、同じ戦略や組織の枠組みを与えたとしてもとらえ方が違い、動き方や成果が違ってくるのは当然である。組織はそのような集団が混在する「集団の集合体」であり、人間集団という“ソフトウェア”をいかに円滑に動かすかが重要なポイントになるわけだが、そのあたりに対する考察が欠けていると言わざるを得ない。

このようなことを述べると、「それは現場(オペレーション)や人材マネジメントの問題であって、戦略の問題ではない」といった反論があるかもしれない。しかし、戦略を「企業が成功するための、もっとも効率的かつ効果的な処方箋」と考えた場合、現場だ、トップだ、HRだ、などということ自体が間違いである。現に、ミンツバーグ教授のように「戦略のカギは現場と人材にある」と断言している人も少なくないのだ。

ましてや、名和理論は、「現場の人間集団の自律力や問題解決力が、戦略を磨きあげるためのもっとも重要な要素である」としているのだから、なおさら人間集団を十把ひとからげに扱うのではいけない。それらの種類や特性をふまえた、能力を最大限に引き出すための体系的方法論が合わせて提示されて然るべきである。

これが、名和理論が体系的な理論として成立していないとする根拠であり、同社の処方箋(コンサルティング)が、いまひとつ現場の人たちに響かない、といわれるゆえんでもある。

言い換えれば、現場を丹念に回り、それぞれの人間集団の特性を考慮し、それぞれに適合した(ゆらぎや自律的行動を誘発するための)仕組みや、能力を顕在化させるしくみを含んだ生態系をつくるつもりで取り組まなければならない。それなくして、真に組織の自律化や有機化は望めないのである。そして、この発想が欠如しているところに名和理論の弱さ、ひいては同社の弱さがある。


 以上、いろいろと批判を繰り広げてきた。しかし、それらを差し引いても、名和理論は、(ポーター理論など)学者などの表層的な戦略理論よりは、はるかに示唆に富んだものとなっている。また、個人的にもその人となりや仕事ぶりを知っているが、名和氏は同社のコンサルタントの中でも特に卓越した人である。


 オペレーション(現場)に近いところに「戦略を成功させる解」が潜んでいるのであれば、戦略や現場といった領域や階層にこだわらずに処方箋を追求していくべきであり、それが企業の成功指南役の使命でもある。

マッキンゼー社には、ブランドやスターコンサルタントに依存したやり方をアンラーニングし、「上から目線」ではなく、「組織が音を立てて動くことを第一義に、あらゆるレベルで支援やケアを行う」という意識を再構築してもらいたい。そして、問題解決者の先駆的存在として、名和理論をうわまわる、真に社会や産業のためになる理論の構築を目指してほしいと願う次第である。



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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 03:00Comments(0)使える戦略理論を考える

2010年04月14日

◆隠れたムダを掘り起こせ!コスト削減と生産性向上の両立方法



           ・・・メールのやり取りや会議に、一体どのくらいのコストを費やしているのだろう?


 先日、「コストダウンをやりたいが、われわれの業界は人材が重要。ゆえに、社員のリストラや人件費のカットはやりたくない。どのあたりに着眼すればその機会が見いだせるか?」というご質問を、ある大手サービス会社の役員の方からいただいた。

 コストダウンというと、多くの方は、人件費や原材料費、水道光熱費や文具といった、いわゆる「目に見えるもの」「量的に把握できるもの」の削減をイメージされる方が多い。

確かにこれらはコストダウンの対象であるが、このたぐいの取り組みは、いわば「イロハのイ」である。

事業組織が行う真のコストダウンは、お客様や取引先、他部門の社員など、他者と「成果を共有する前向きなもの」でなければならない。なぜなら、一方的なコストの転嫁は長続きしないばかりか、(社内外の)パートナーとの関係を悪化させてしまうからである。

 ではどこに目をむけるべきか?

 企業活動のあらゆる業務(トランザクション)には、何かしらの作業プロセスが発生する。たとえば、経理伝票処理のプロセス、eメールによる情報交換・連絡プロセス、営業活動や会議、カスタマーサポートの作業プロセスなど、数え上げればきりがない。これらのうち、お互いの改善効果が高く、(できればお手軽に)取り組みやすい作業プロセスに着目するのである。

 以下、私のクライアントの商談プロセスにおける改善例を紹介しよう。
 (守秘義務上、社名は伏せさせていただく)

 この会社は従業員840人、精密機械の生産システムの製造・販売業で、複雑な装置の組み合わせによるソリューションをお客さまに提供している。

そのため、営業マン、フィールド・エンジニア、設計技師などが3~4人でチームを組みながら商談を推進するスタイルを取っており、メンバーどうしや顧客の担当者・技術者との緊密な連絡が欠かせない。

結果として、5~7ヶ月におよぶ1回あたりの商談に飛び交うメールがゆうに1000通を超えることになる。

これに着目し、サンプリング調査を行った結果、飛び交うメールの実に35%が、直前にきたメールの欠けていた部分やわかりにくい表記への確認だったり、アポやミーティングの関するものだということがわかった。つまり、「1回でまとめれば発生しなかったメール」が、3割以上を占めていたのである。


 この状況を改善するため、まずは、チームメンバー同士や顧客と共同でミニ・プロジェクトを立ち上げた。

そして、連絡メールや仕様書、契約書の定型フォーマットを複数作成したり、5W3Hを網羅してメールを書く、基本となる業務フローをえがいて各プロセスごとに処理日数を決める、といったルールを設定して、合意のもとに一斉にスタートした。

その結果、3ヶ月後には、飛び交うメールの数が、何と半分以下の約400通にまで激減してしまった。さらに、メール1通の作成に要する時間や、関係する業務の意思決定の時間なども半分以下になり、各商談の効率(時間コスト)が18~20%も改善したのである。

この効果は、単純に、人件費から換算するだけでも、「1商談あたり平均380万円」のコストダウンになったのである。

(ちなみに、商談の効率化がもたらす、在庫回転率や顧客満足度の向上などからくる効果は、これには含まれていない。これらを厳密に賦課した場合、改善効果は500万円を上回るものと思われる)

こういったコストダウンは、いわば「三方良し」ともいうべき「成果共有型」で、しかも、先に述べた「目に見えるもの」のコストダウンを上まわる改善効果が期待できるのだ。


 さらにもうひとつ例をあげよう。

 ある地方銀行で、単なる「報告会」となってしまっている支店長会議にかかっているコストを、会議の準備段階から完了するまでのプロセスで人件費換算したところ、四半期ごとに1000万円近く(!)のコストが発生していた。

(コストを知った頭取が頭から湯気を出して怒り、会議担当の幹部が左遷に近い処分をくらった、という、笑うに笑えない事件もあった)

ただちに、報告ベースで済む情報は事前の共有に切り替えた。同時に、支店長会議としてのあるべきプログラム内容および議事録フォーマットを設計し直し、決議事項や次回への持ち越し事項を明確にし、これらすべてを明確にしないと次回へ進めないような仕組みに切り替えた。

結果、生産性が増したのはいうまでもない。単純な人件費ベースの計算だけで、年間1600万円強の節約が確認されたのである。また、コスト削減のみならず、この人件費を自覚した支店長たちにより、(もとよりまじめな方々が多い銀行だったことも手伝って)毎回のテーマや論点が明確化され、明らかに意志決定のスピードが向上したのである。


 日本企業はコストダウンがうまい、というのが一般的な評価である。しかし、それは目に見える、把握しやすいものを対象にしたときのことである。大きな改善のチャンスは、まだまだ自社内に潜んでいることを、いま一度、企業の方々には、じっくりと考えていただきたい。

繰り返すが、あらゆる業務にはそれを処理する時間がかかり、そこにはプロセスやそれに付随する作業がいくつも発生する。そして必ず無駄やムラなどが出てくる。ゆえに「逆に、効率の悪い組織ほど改善効果が大きくなる」ということを改めて認識し、積極的に改善機会を探り、成果を狙いにいっていただきたいと思う。



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2010年04月13日

◆マッキンゼー、コートニーの不確実性対応理論を検証する

             


           ※図出典『不確実性の経営戦略』マッキンゼー他、ダイヤモンド社


 マッキンゼー社ワシントン事務所のヒュー・コートニー氏他2人が提唱する「不確実性レベル別対応型の戦略」という理論がある。

これは、不透明な経営環境の中で、先が読めるか読めないか、といった2者択一の短絡的な思考や対応に走るのではなく、「戦略の不確実性レベル」を正確にみきわめ、それによって「戦略スタンス」と「具体的な行動」を選択し、適切に組み合わせて対応すべきとする理論である。

以下、骨子を説明しよう。


基本構成は、前述の「不確実性レベル」に加えて、「戦略スタンス」「行動ポートフォリオ」の計3領域からなる。

まず、「不確実性のレベル」は、以下の4段階に分かれるとされる(上図「不確実性の4段階」を参照)。


【レベル1】:未来は十分にはっきりしている.

【レベル2】:未来が複数の選択肢に分かれる.

【レベル3】:未来の範囲を限定できる(未来はある範囲内に収まる).

【レベル4】:未来は完全に不確実である.



次に、上記4段階のレベルの業界・市場において、どういった姿勢で戦いにのぞむかを決める「戦略スタンス」が以下の3通りある。


【1.形成型】
 業界を自社に有利な新しい構造へと導くことをめざす。
→たとえば安定した業界に揺さぶりをかけるとか、逆に不確実性の高い業界に一定の秩序をもたらす行動を取るなどアグレッシブな働きかけを意図したスタイルである。

【2.適応型】
 現在の業界構造や将来の発展の姿を既定の条件ととらえ、チャンスや変化が見えてきたときに、それらに俊敏に対応していくことをめざす。
→たとえば、特殊な化学製品の製造機械や光学レンズなどは、何らかの兆候が見え始めてから自社の製品をカスタマイズし、市場に投入していくなどの対応が求められるであろう。

【3.留保型】
 後日のプレー権を留保しておくもので、適応型の変形である。
→市場の進化・構造の明確化を待たずに、小出しに投資を行ったり他者との連携や情報収集を行うなどして自社を「アイドリング状態」に維持しておき、不確実性が薄らいだり、何らかの方向性が見えてきたときに攻めに転じる。



さらに戦略スタンスを実現するための「行動ポートフォリオ」と呼ばれる、3つの選択肢がある。


【a.ビッグ・ベッツ(思い切った賭け)】
 多額の投資や買収など、思い切った行動に打って出ることである。当たれば見返りは大きいが、外れれば失うものも大きくなる。特に形成型ではこの決断が求められる場合が多い。

【b.オプション選択】
 最善のシナリオになったタイミングで最大の利益を確保しようとする一方で、最悪の場合でも損失を最小限に食い止める行動である。よくあるやり方として、新製品の本格導入の前にエリア限定でテスト販売をする、対抗馬である技術が本命になる場合に備えてそちらのラインセンスも取得しておく、などがある。留保型で多用されるが、形成型でもリスクヘッジの手段として使われることが間々ある。

【c.ノーリスク対応】
何が起こっても損をしない対応で、いわゆる安全策である。たとえば現行製品やサービスの不用コストを削減する、基本能力を高めるための関係部署の能力開発(問題解決スキルや管理スキルなど)を行う、などがよく見られる例である。完全に先が見通せる状態になった場合に多用される。



 これらの要素を最適に組み合わせて市場にのぞむべき、というのが論旨である。「わかる⇔わからない」「やる⇔やらない」といった2者択一的にとらえやすい不確実性や戦略行動を細かく分類し、ていねいに組み合わせることでリスクを低減し、戦略の成果をあげやすくすべき、とした主張は注目に値する。

また、戦略部門にいる人間のみならず、日々ダイナミックな市場の動きに対応していかなければならない営業やマーケティングなどの部門で働く人たちは、ともすれば近視眼的な対応に陥りがちで、みずから判断の選択肢を狭めてしまう傾向があるが、自分の施策を冷静に整理するための枠組みとなりうる、といった意味でも有意義な理論である。


 しかしながら、この理論を「複数の製品系列や顧客層を持つ事業体においてすぐに実行・実現できるか」という観点から見ると、問題点や詰めの甘さが目立つのも事実である。

以下、それらについて指摘していこう。


 まず、実際の経営の現場では、大きな範囲で不確実性レベルが明確に特定できたり、スタンスやアクションがすっきりと1つに統一できるものでないことは直感的に理解できる。

つまり、たとえば技術・製品系列や市場セグメント、地域やチャネルごとに細かくこれらの組み合わせを設定する、といった対応が求められるのである。

また、行動ポートフォリオにしても、この理論のようにすっきりと割り切って動けるケースはむしろまれである。実際には、たとえば「オプションの行使もにらみ、市場の反応を敏感にウォッチングしながらあるタイミングで思い切った投資に出る」といったように、微妙な判断や行動が混在するケースがほとんどである。

それは、この理論を厳密に適用しようとすると、複雑な戦略アクションの束(体系)ができあがることを意味する。すなわち、実践の段階においては、緻密な情報収集・分析などの作業や高度な判断力、バランス感覚、胆力などを常に複合的に用いられるスキルを身につけ、しかもその動きを同一チーム内で共有・展開できる人材が、一定量いなければ機能しないということである。

理論的なわく組み自体は、(いささか紋切り型にすぎるきらいがあるとはいえ)よく理解できる。しかし、実戦においては、むしろそのわく組みというハードウェアを機能させていくソフトウェア、すなわち高度なデシジョン・スキルを持った人材チームが求められることが大前提として存在する。つまり、成果を得るために避けて通れない大きなハードルとなるわけだが、これについての考え方は、この理論ではまったく触れられていない。

別言すれば、成功のためのキーファクターが抜け落ちているわけで、「ある行為を成就させるための理論」としては、とても完全なものとは言えないのである。

これはマッキンゼー社の理論の特徴でもあるのだが、示唆に富んだ枠組みは提唱すれど、それが実践されるための重要な施策(特に「戦略」というハードをドライブするソフトウェアとしての「人材」のあり方・開発方法など)や、実行フェーズにおいて想定される問題・リスクなどが欠けていることが少なくないのである。

(これが、同社の理論をそのまま導入した企業が、しばしば混乱する一因となっている)


 近年、戦略理論のみならず、あらゆる経営理論や手法には副作用があり、隠れた前提や制約が存在することが知られてきている。しかし、言うまでもなく、戦略の実務に携わる者は、学者や評論家とは異なり、あくまでも「責任を背負いながらそれを実践しなればならない人たち」の立場に立って理論を提示していくことを最優先にすべきである。

薬の処方や医療行為に例えて言うならば、服用の際の遵守事項や副作用、リスクなどについてのインフォームドコンセントが的確になされるべきなのだ。


 かつて、同社のOBも多く働く戦略コンサルティング会社に勤務し、マッキンゼーの仕事ぶりを頻繁に耳にしていた者として、率直な感想を述べよう。

 同社がこの姿勢をもって、総力をあげて理論構築にのぞんだとしたら、このコートニー理論はもとより、同社のほとんどの理論がさらに魅力的で人々の心に響くものになるのに、といつも思う。さらには、(弊害も目立ち始めた)現在の経営学のあり方をも変えてしまう可能性があるのに、と残念に感じられてならない。

しかし一方で、近年、かつてのカリスマやスターコンサルタントに頼らない、地に足のついたコンサルティング活動を行い始めているとも聞く。

改めて、同社の今後の活躍に期待したいと思う。




◆参照文献
 『不確実性の経営戦略』マッキンゼー他 ダイヤモンド社 2000年
 『マッキンゼー戦略の進化―不確実性時代を勝ち残る』名和高司、 近藤正晃ジェームス ダイヤモンド社 2003年



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2010年04月12日

◆創発アイデアで事業をドライブ~真の「戦略経営」の実践とは?

             ※創発戦略のイメージ...H.ミンツバーグ『戦略計画 創造的破壊の時代』より




 「戦略経営論」とは、事前に作られた戦略計画と、それを実行する過程で得られる、「創発」とよばれる新たなアイデア、知見、発見などがミドルマネジメントを通じて融合し、軌道修正を行いながら進化していくことの重要性を唱える理論である。

その前提として「事前に立てた戦略計画は不完全であり、予測に依存するのはリスクが大きい」とする考え方がある。

これについては正しい。

しかし、「当初の目論見から外れる現象が起き、修正事項が発生した場合、それを改善しながら進化する」といった行為は、企業や国家から個人に至るまで、人間の営みとして誰もが行ってきた自然な行為である。

これまでの「戦略経営論」はその延長線上にとどまっており、、スタティック(静的)な予測型の事業戦略理論に、その欠点を補完する形で、日ごろの活動から得られたアイデアや発想を取りいれましょう、といった考え方を付加しただけの理論体系で終わってしまっている感が否めない。


 企業組織においては、創発的アイデアは、意図的に開発・管理しない限り、他の事業部などへの水平的な応用展開や組織の上部あるいは下部といった垂直方向への共有・活用はなされない。通常、創発的アイデアは、個人あるいはその周辺の関係者の経験則として終わることも少なくなく、体系的な蓄積・活用がなされることは、決して多くない。

ゆえに、重要なのは、創発をどうマネジメントし、戦略および事業活動へと反映させていくかについての具体的な方法である。

それが必要とされるにもかかわらず、多くの「戦略経営論」においては、その方法が「ミドルの活性化方法」を述べる程度の理論で終わってしまっているのである。アンゾフ理論のように、創発的アイデアが発生した後の分析の手法・技法をやたらと組み込んでいるものはあるが、これも、創発それ自体の積極的な管理方法については曖昧なままである。

創発(すなわちアイデア)はそういうものだからこれで良しとすべき、という意見もあるだろう。

しかし、方法論は具体的かつ明快に語られるべき、といった本ブログの考え方からすると、従来の戦略経営論は、主要資源についての具体的な分析・活用方法が示されておらず、実戦性に乏しいものといわざるを得ない。


 さらに、戦略経営を行う際、必ずといっていいほど「計画」(静的管理)と「創発」(ダイナミズムの積極活用)のどちらに比重を置くかという問題が出てくるが、これに対する方法論が見あたらないのも問題である。

たとえば、計画重視型と創発重視型とでは、必要とされる人材特性(思考形態や行動スタイル)はもちろん、その評価の仕方や会計システムのスペックまでもが異なってくる。つまり、計画管理型の組織とアイデア重視型の組織では、組織構成要素に持たせるべき特質を統制型から開放型へと180度転換しなければならないのだが、これへの対処法も示されていない。

これまでの「戦略経営論」には、こうした具体的な施策が欠けている。つまり、「創発が必要」と述べておきながら「創発」を管理し活かすための仕組みや機能に関する論理が弱いのである。

組織というものは、よほど適切な形で「創発的アイデア」をマネジメントしていく仕組みがないと、すぐに停滞してしまう。それどころか、貴重な経営資源となる可能性を秘めた創発アイデアが「単なる思いつき」として処理されてしまい、かえって良いアイデアが表面化しづらくなるリスクが高くなる。

この点を正面からとらえて考えていかなければならないのである。


 では、創発的アイデアをどのようなしくみでマネジメントしながら戦略の推進体制を構築していくべきか?

前述したように、「計画型」と「創発取り込み型」のどちらに比重を置くかで、組織の運営方法や必要とされる人材特性、経営システムまでもが異なってくる。

従って、当初戦略の立案プロセスはもちろん、人材育成方法や評価制度、情報・会計システムをワンセットで整備し直すことが必要となる。

たとえば「創発重視型」の戦略運営をめざす場合、創発的アイデアのマネジメント体制はもとより、それを生み出し実際に展開する従業員の「チャレンジングな姿勢の促進」が必要になるのは言うまでもない。さらに、それを支えるしくみとして「チャレンジの結果(特に「失敗」)を科学的・客観的に評価するシステムやノウハウの開発」も欠かせない。

(「計画重視型」の組織構築方法については既に多くの文献が出回っているので、そちらを参照いただきたい)

また、チャレンジを支援する情報面からの支援体制、アイデアを実践し具現化するスキル、アイデアを試すにあたり、事前に失敗のリスクを低減させるための仮説構築スキル(本ブログでも紹介した因果律ループによるシミュレーションや経済性計算などのテクニック)も積極的に開発していく必要があるだろう。

さらに、市場に近いところで働く社員のモチベーションやスキルアップをはかるため、発想の転換、およびコーチングやメンタリングなどの要素を加味した「管理職のマネジメントスキルの再構築」も見落としてはならない領域である。

すなわちこれらをワンセットで、体系的に開発していくことが重要になる。いわば、まったく新しい循環構造を自社内にビルトインしていく、といった視点が必要になるのである。


 ところで、「新しい循環構造の開発」というと何か大がかりでむずかしい取り組みをしなければならないように思えるが、実は、戦略経営を実現している多くの企業は、従来の経営学が提唱するような、複雑な事業機能やシステムをズラッとそろえているわけではない。

むしろ各機能(戦略、人事方針、R&D、マーケティングなど)はシンプルなつくりになっている例が多いのである。

そして、これらの企業に必ず共通しているのが、「個を生かす人材育成」を行っている点、および各経営機能のベクトルをそろえ調和させることで「機能間シナジーを生み出し、戦略推進にドライブをかけている」といった点である。

こうした構造は、実は、シンプルな視点からの見直しが可能である。

簡単な方法としては、自社の人材開発方針、ビジョン&ミッション、企業戦略などの重要な概念にむけて、各機能のベクトルやアーキテクチャ(設計思想)がそろっているかを検証する。

そして、検証を経て特定された改善箇所を克服していく際には、さまざまな角度からの情報を取り入れて改善策を立案し、あとは情報と意識の共有を密にしながら、しつこく、粘り強くPDCAサイクルを回して進化を志向し続けるだけである。


 ダイナミックな戦略経営を実現するために、

   ◆「自社組織を構成する人材要件、事業機能やシステム、制度やノウハウがひとつの方向を向いているか」

   ◆「上記の要素がお互いに良い関係(循環構造)になっているか」

   ◆「戦略をドライブしていく人材が、科学的にチャレンジできるための意識やしくみが開発されているか」

という素朴な観点から、自社組織を網羅的に診断してみることをおすすめしたい。かならず改善ポイントや、効果的な戦略推進のためのヒントが見つかるはずである。




◆参照文献:

・Garth Saloner, Strategic Managemen, Wiley, 2000
(ガース・サローナー他(石倉洋子訳)『戦略経営論』東洋経済新報社 2002年)

・H. I. Ansoff, The New Corporate Strategy, Wiley, 1988
(H.I.アンゾフ『最新・戦略経営』産能大学出版部 1992年)

・十川広國編著『経営戦略論』中央経済社 2006年

・十川広國著『戦略経営のすすめ~未来創造型企業の組織能力』中央経済社 2000年

・中村元一他『実践・戦略経営診断』ダイヤモンド社 1994年



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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 10:20Comments(0)使える戦略理論を考える