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ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所の代表、田中です。日比谷のオフィスを拠点に、起業家、経営者に対し、濃密な支援を行っています。いつでもお気軽にコンタクトしてください。              ※詳しい経歴は、カテゴリ(左バー)の「My Profile & 会社概要」をご覧ください。
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2010年12月08日

◆サンデル教授の問いかけ~経済性偏重によって失うものとは




 今年の4月から6月にかけて、ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデル教授の講義(ハーバード白熱教室/NHK教育)がテレビで放送され、その後、続々と著書も発刊されるなどして大変な話題となりました。

現在はその横浜市立大学版が放送中です(次回は12月10日)。2011年1月には大阪大学でも、サンデル教授の講義スタイルを継承した番組が放送される予定だそうで、いまだ興奮冷めやらずといったところでしょうか。

 さて、サンデル教授の講義は、彼が投げかけるテーマに対して、参加する生徒たちが自分の考えを述べ、議論をしながら、考えを深めていく方式で進められます。

たとえば以下のような、判断が容易ではない問いが投げかけられます。


●「あなたはブレーキが壊れた列車の運転をしている。このまま直進すると5人の人を殺してしまう。しかし、ハンドルを切って引き込み線に退避すると、そこで作業をしている1人を轢いてしまうだけで済む。あなたはどうすべきか」

●「船が難破し、漂流している救命ボートに、4人の船員が乗っていた。水も食料も尽きたのち、一人の衰弱した身寄りのない青年を殺し、その血と肉を食料として他の船員たちは生き延びた。彼ら3人は家族を抱えていたので、自分たちがいなくなると経済的に困窮する人数が多くなると判断し、独り身の青年を犠牲にした。彼らの判断は正しかったのか」


判断の是非の議論はさておき、この設問にはどのような意図があるのでしょうか?

察するところ、サンデル教授が送ろうとしているメッセージは、比較的把握が容易な経済合理性の領域と、人間の尊厳や存在意義、命の重さといった、合理的な解釈がきわめて難しい領域の双方を提示し、それらに対峙する姿勢がどうあるべきかについての考えを迫っているように思われます。

これを企業経営にあてはめて考えてみたいと思います。

 事業の経済性は、ご存じように、財務分析や経営環境分析のような定量情報によって判断されます。

あえて言うと、この種の情報による判断はある意味で容易です。また、そうした情報のうち、特に業績やコストの多寡に一喜一憂することは、良くも悪くも没頭しやすい作業でもあります。

さらに、多くの企業が、新たな価値・革新を連続的に創出するというよりは、散発的に生み出した価値を反復・再生産することで事業を行っているため、前述のような作業がルーティン化され、意志決定や活動の是非が、その時点での経済的な判断に偏重して行われるようになっていきます。

先のサンデル教授が投げかける設問の例でいえば、あのような状況が繰り返されるうち、死にかけた少年を助けようとして必死に考えた気持ちや苦しみ抜いた感覚はいつしか薄れていき、人間の尊厳や人命よりも、経済性を優先した判断が当たり前になっていく、ということになると思います。

こうした判断を繰り返し、それ自体が目的化してくると何が起きるか。

まず、市場や顧客に貢献する(ニーズを十分に満たす)ための方策を最優先に考える、というマインドが薄れていきます。そして、価値の創造や品質の充実を図る能力、顧客の課題やニーズを繊細なレベルでとらえる組織的な感度などが減退してしまい、それが原因で、さらに経済性を追い求める体質に染まっていきます。

そして、(ドラッカー流にいえば)「明日を切り拓いていくための仕事」が「過去の確認をするための仕事」に浸食されていき、「毎日忙しく働いている割に儲からない」という体質ができあがっていきます。

以上を、サンデル教授の設問に答える形でまとめるとすれば、何かを選択するということは、必ずその他のものを犠牲にすることになる、ゆえに犠牲になったものは何かということをしっかり把握しながら、自らを律し、次の行動を考えていかねばならない、ということを示唆しているのだと思います。

さらにこれを事業経営の枠組みで(拡大?)解釈するなら、あくまでも市場や顧客への貢献を起点に置き、同時に経済的な選択をし続けることのリスクへもしっかりと対処しながら、バランス良く事業活動を行っていかねばならない、ということを、サンデル教授の講義が教えてくれているような気がするのです。


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2010年11月20日

◆巨大なバーチャル空間?~「日本的経営」など存在しなかった




※われわれが生きてきた空間は現実のものではなかった。「Ignorance is bliss.(無知は至極の幸福)」・・・。現実を直視することに耐えられず、バーチャルの世界に戻るために仲間の居場所を密告し、記憶の消去を申し出るサイファー(ジョー・パントリアーノ)。・・・『マトリックス』1999年アメリカ映画より

                       ●       ●       ●
◆ニュース雑感:

『事業仕分け「賞味期限切れ」か=財源効果失速、関心も薄く』
(時事ドットコム2010年11月17日)

民主党の売り物である「事業仕分け」に、早くも陰りが見えてきているようです。

以前に仕分けられた事業が、“看板”をかけ換えて生き残ったり、ひどいのになると、さらに予算を積み増して、いわゆる「焼け太り」をする形で残っていたりと、その最終成果は惨憺たるものです。

ひとことで言うと「詰めが甘い」わけですが、事業仕分けをシステムとしてとらえ、適切なプロセスを設計し最後までトラッキングする、といった、民間企業の業務では当たり前の発想も、民主党の仕分け人たちにはまったくないようです。

何よりもコストダウンは、“一発芸”で終わるのではなく、恒常的に行っていくことが重要です。民間では、これをTQCや管理会計システムなどの導入で体質レベルにまで高めようとするわけですが、事業仕分けには、こうしたアイデアは影も形もありません。

民主党議員の主な特徴として、とにかく実務・実戦感覚やマネジメント感覚の大幅な欠如が目立ちます。

少なくともわれわれ企業人は、彼らのパフォーマンスやメディアのスキャンダル的な報道に惑わされることなく、実務者としての冷静な視点から、彼らが継続性のあるしくみやシステムを適切な形で構築しているかを監視し、厳しく指摘していくべきだと思います。

○詳細記事
  http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010111700930

                       ●       ●       ●

◆本日のコラム

 さて、本日のコラムに参りましょう。

「日本的経営」という言葉があります。本日は、このテーマについて、思うままに綴ってみたいと思います。

「日本的経営」とは、戦後の高度成長期からバブル崩壊あたりまで行われてきた、日本企業に共通する経営・活動形態をさすようです。その主な構成要素は、一般に、三種の神器といわれた「年功序列型昇進・賃金」「終身雇用」「企業内組合」や「家族主義的経営」「稟議・根回し」などのようです。

まずは、これらが前提に置いていることを整理してみましょう。


〔日本的経営(上記要素)の前提〕
◇事業を発展させる資源として「経験則(年功、年齢)」が最も重要である。
◇たとえ優秀であっても、若い人には高い賃金を払わない(年をとってもほぼ無条件に賃金が上がり、払われ続ける)。
◇能力に乏しくても雇用され続けることが可能である。しかも、一定の賃金は保証される。
◇社員は家族であり、みんな仲良くやることが第一義。また、年長者の言うことは素直に聞かねばならない。
◇皆が納得し、全員で責任を分担すること(稟議、根回し)が、スピーディな意思決定よりも優先される。


 普通に考えてみればわかりますが、このようなやり方が通用する環境はなかなかありません。まさに戦後の復興期や高度成長期くらいしか思いあたりませんよね。

そして、現実に、このような環境が、戦後の一定期間、日本に存在したのです。

さらに、これを支えた要因として、日本語というわれわれしか使わない言語や、四方を海に囲まれているといった物理的な条件が防護壁となりました。加えて、戦後、欧米から基本的なアイデアをすべてタダでもらった、という好条件が重なったこともあって、そうした環境がより強固なのものになったのだと思います。

さらに踏み込んでいえば、マインドが成熟することなく図体だけが大きくなった状態(生産工場や販売チャネルなど手足の部分だけが海外へ拡大した状態)を国際化と呼んでみたり、70~80年代に、現象面を見ただけのアメリカの学者に“Japan as No.1”と誉められたりして、カン違いを加速させたのだと思います。

これは、言い換えれば、戦後のある一時期を切り取って、「日本的経営」と信じ込んでいたということです。つまり、きわめて特殊な環境(保護された環境)の下でしか成立しない経営であり、その実態は「周回遅れ」で欧米の背中を追いかけているに過ぎないのだと思います。

 しかし、こうした話をすると、決まって、かつてのソニーや松下、ホンダはどうなんだ、という話を持ち出す人がいます。

私がまずこのような人に言いたいのは、「盛田昭夫さんや松下幸之助さん、本田宗一郎さんらの個人としての資質と日本的経営なるものを混同してはダメ」ということです。

つまり、彼らのリーダーシップや高い国際感覚、燃えるような情熱などが道を切り拓いていったのであって、日本的経営なるものの枠組みが威力を発揮した、ということではないと思います。

 また、民族性や文化によって経営スタイルが異なり、自由主義経済下においてそれが完全に成立し得るのであれば、さらに民族意識の強い韓国の企業を見てみると、それが妥当な意見かどうかが、少なくともある程度は推測できるでしょう。

たとえば、サムスンやLG電子などを見てみると、日本人を含む多数の外国人を幹部クラスでも採用し、徹底的に現地化を図ろうとしています。その振る舞いには、民族的なこだわりや差別はほとんどありません。実際に話をしてみるとわかりますが、彼らには「韓国的経営」などといった意識もあまりありません。
(成果においてライバル企業を上回る、という意識は逆にスゴイものがありますが)

現実として、韓国企業にヘッドハンティングされた日本人のマネージャーや上級クラスのエンジニアもたくさんいます。そして彼ら彼女らには、むしろ「とんがった、おもしろい仕事ができる」(※)と、活力を取り戻して働いているような人が少なくないのです。

 このことは、韓国以外の国の企業の人と話をしてみてもわかります。

韓国企業と同様、中国的経営、インド的経営、フィンランド的経営などといった発想は、彼の地の企業の人たちにはほとんど感じられません。そこには、たんに自らの市場や顧客に応えていこうとする経営があるだけです。

 厳しいことを言いましたので、いままで述べてきたことを悲観的にとらえたり、不快に感じたりする人がいるかもしれません。しかし、実はこのことは、むしろ、若い起業家や、独自の新しいやり方を追求してみたい、世界の人々に貢献していきたい、と考える多くの人にとっては朗報です。

なぜなら、日本的な慣習やスタイルにとらわれることなく、また、そうしたやり方を押し付けようとする人を気にすることなく、「市場や顧客にどうしたら素晴らしい価値を届けることができるか」、「どうしたらお客さまの役にもっと立てるか」に集中して自由にアイデアを出し、ビジネスを組み立てていけばよいからです。

そして、これまで、前提条件のように考えられていたスタイルや慣習が取り払われるのであれば、逆にエネルギーが湧いてくる人は、実はわれわれの周囲には少なくない、と考えるからです。

 とくに、次世代を担うリーダーや元気のある若い人には、時代の“あだ花”に過ぎない「日本的経営」にとらわれないで欲しいと思います。そして、ドラッカーなどが経営の原点と説く、「顧客の創造」「社会への貢献」に焦点をあわせて、自らの能力を存分に磨いていって欲しいと願うのです。



※『ワールドビジネス・サテライト』テレビ東京系2010年11月13日放送分より.


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2010年11月12日

◆信念と実践の経営を実感~プレジデント社藤原社長との交流から




※2010年11月9日、プレジデント社社長室にて。代表取締役社長の藤原さん(左)と私(右)。13階にある社長室からは都心を一望できます。ちなみに撮影は、いつもすばらしく機転が利く秘書のKさん。
 「写真とろう!」と言いながら、藤原さん、私、Kさんが列をなして社長室になだれ込んでいったので、部屋の机でお仕事をされていたプレジデント編集長の長坂さんがびっくりされていました。お騒がせして申し訳ありませんでした(汗)。
・・・でも、近いうちに、またお邪魔することになりそうです。

                     ●        ●        ●

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 先日、懇意にさせていただいているプレジデント社の藤原昭広社長にお会いしてきました。同社が平河町森タワーという新築のビルに引っ越しされてから初めての訪問です。

 ご存じの方も多いと思いますが、藤原さんは、プレジデント社事業の中核である『プレジデント』誌において、大きな改革を行われた方です。ターゲット層を経営トップからミドルに切り替え、低迷を続けていたかつての誌面を刷新し、ほとんど人員規模を変えないまま、月1回から2回の発刊体制へ移行するといった改革を断行したのです。

以来、出版不況が続くなか、ここ数年、平均して昨年対比110~130%と順調に発行部数をのばしています。いまや、書店やコンビニで真っ先に目にとまる、新時代を代表するビジネス誌に生まれ変わったといっても過言ではないでしょう。

 本日は、この改革を成し遂げ、いまだに進化を続ける組織を率いる経営者としての藤原さんの話をしましょう。

藤原さんの特徴を簡潔に言うと、とにかく、ブレがない経営者であり、他に見当たらないタイプの経営者である、という表現がピッタリくると思います。

いつも話をしていて感じるのは、自らがやるべきミッションを明確に理解されていること、それを、いついかなるときも、わかりやすくストレートな言葉で語られることです。

しかし、いろいろな施策について話を聞いてみると、非常に多彩な面を持ち合わせていることもわかります。驚くほど緻密な面を持っているかと思えば、中小企業の親父さんのようにざっくばらんな面もあり、欧米のらつ腕CEOに勝るとも劣らないドライな一面を見せることもある、といった感じです。

つまり、ミッションや信念についてはブレるところがないが、それを実践するためのスタイルは、柔軟で、とらわれることなく自在に変化するということなのです。

 そのような藤原さんが改革時に打ち出したプレジデント誌のミッションは、「優れた経営者を作り、世に送り出すこと」という、実にストレートで力強いものでした。

もちろん、単にミッションを打ち出すだけで、厳しいメディア世界の競争を乗り切れるわけではありません。

特にプレジデント社の場合、同誌以外にもdancyuやALBA、プレジデントFamilyなど、それぞれターゲットが異なる雑誌をいくつも発行しており、誌面づくりやマーケティングの方法も違う、といった複雑性を抱えています。しかも、こうした異なる活動を、100名に満たない社員でこなさなければなりません。

しかし、それにもかかわらず、人員拡大をほとんどすることなく、同社は、前述したミッションのもと、着実な進化・多様化を続けています。

あまり知られていませんが、プレジデント社の本質は、緻密なデータベース・マーケティングや高度な情報解析力を持つ、科学的なアプローチを得意とする会社です。通常、こうした組織が異なる事業をいくつも抱えると、能力が分散したり、逆に(分析力があるゆえに)リスクを取らずに硬直化したりするものなのですが、この会社はまったく違うようです。

 なぜ、このような事業展開ができているのでしょう?

その秘密を解き明かすヒントは、藤原さんの経営姿勢、すなわち、明確な事業ドメインと目標の設定力、そして日々の行動・思考形態にあるように思えます。

つまり、藤原さん自身が、ホンモノの迫力をもったメッセージを組織の隅々にまで届けるメッセンジャーであり、チャレンジを実践するロールモデルの役割を日々、果たしていると考えられます。

さらには、藤原さんが体現する、とらわれない柔軟な思考スタイルが、これも社員にとって、明確なメンタルモデルとなって、日々影響を与えていることは間違いないでしょう。

それゆえ、社員の皆さんは、膨大な情報を分析したり、新しい企画にチャレンジしたりしても、目標を見失うことなく、また、硬くなることもなく、のびのびと前に進むことができているのだと思います。

 さらに、これらに加えて私が特筆したいのは、藤原さんの「その後」です。

確かに、改革を断行し、業績をV字回復させた手腕は素晴らしいと思います。たとえば、日本の経営者に対してきびしい大前研一さんも、高い評価をされているようです。しかし私はむしろ、それを成し遂げたあとの姿勢に、藤原さんの非凡さを感じるのです。

一連の改革を通して名が知られるようになった藤原さんには、TBSの報道番組のコメンテーターの仕事が舞い込むなど、引っ張りだこになった時期がありました。しかし、自分が有名になることで、社内に依存心が生まれ、次世代を担う人材が育ちにくくなると察するや、すぐにそうした活動からキッパリと身を引きました。

(昨年、私に面と向かって「自分が前に出過ぎるのは良くないと判断し、すぐに辞めた」とサラッと言われました)

さらには、小さなことかもしれませんが、今回のオフィス移転にもその姿勢を垣間見ることができます。

業績が伸びると、瀟洒なオフィスに借り替えて悦に入っているような経営者が多いなか、藤原さんは、さらなるオフィススペースのムダの削減と充実をはかりました。同時に、現在の不動産不況をうまく利用して、賃貸コストの大幅な削減も実現されたのです。

しかも、コストを節約できたことを、実に嬉しそうに、また、楽しそうに語られます。

つまり、復活を成し遂げた今も、まったくブレることがないばかりか、以前にもまして、経営のあるべき姿や社会への貢献を希求される姿勢を強めているのです。

これは、並の人間にできることではありません。

そして、社員の皆さんは、この姿をしっかりと見ているのです。

志とか理念、社会貢献など、美麗字句を発するのはたやすいことです。しかし、365日それを体現し、成功をおさめたあとも、さらに一歩も二歩も踏み込んでドライブをかけ、自社のミッションを追求していこうとする経営者やリーダーは決して多くありません。

景気が悪い、政治が悪い、などといった他責の言葉をよく聞きますが、藤原さんにお会いするたび、「ブレることなく経営努力を尽くしている」と言い切れる経営者が、この日本にいったい何人いるのかと考えさせられてしまいます。

(ちなみに、私はお会いするたびに親しく会話をさせていただいていますが、藤原さんの口から、悲観論めいた話を一度も聞いたことがありません)

同時に、企業再生のプロ経営者を標榜する自分を鑑みて、大いに身が引き締まる思いがするのです。

 私にとって、この日は、信念を持ち、真摯にそれを実践していくことの大切さを、社員の皆さんの生き生きとした姿を見ながら、改めて深く心に刻んだ一日となりました。


  ※本コラムは、藤原昭広社長ご本人に掲載をご快諾いただいております。


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2010年10月12日

◆割れ窓理論を考える-2「一人で始めたゴミ拾い、260人に」




※適切なビジョンと情熱、粘り強い継続の姿勢に、正しい技術を加味すれば、「割れ窓理論」は企業組織においても応用が可能である.

                   ●         ●         ●

 一昨日、以下のような記事が配信されてきました。つい数日前にこうしたムーブメントの有効性を説いたコラム「割れ窓理論と日本電産・永守会長」を書いたばかりだったので、嬉しくなって思わず取り上げてしまいました。

(前回予告した戦略立案方法に関するコラムは次回以降とさせていただきます。熱心なご意見をいただいた皆さん、ゴメンナサイ)



『美化活動 輪広がる 旧江戸川護岸、1人で始めたごみ拾い 協力者260人に/千葉』
【毎日新聞 10月10日(日)】
 
 口コミで協力者260人に。21日に堤防の落書き消し--浦安南高生徒らも参加

 たった1人の強い意志が周囲を動かし、状況を大きく変えつつある。「ごみだらけで風景画が描けない」。そんな子供たちの声を聞き、4年ほど前、市内に住む男性が浦安市の旧江戸川護岸で、1人黙々とごみを拾い始めた。美化活動の輪は広がり、21日には市内の県立浦安南高(山中克男校長)の生徒たち20人を含む市民が、東京湾岸の堤防の落書きを消す作業に取り組む。【山縣章子】

※詳細記事: 毎日新聞社
   http://mainichi.jp/area/chiba/news/20101010ddlk12040131000c.html

*******

 さて、コメントに参りたいと思います。

 こうした取り組みを企業に展開するための方法について考えてみましょう。

 この事例も、過日のコラム「割れ窓理論と日本電産・永守会長」で説明したのと同じく、ひとりの強い意志と行動が強力なメッセージとなり、周囲の人たちの共鳴・共振へとつながっていった「割れ窓理論」の典型的な事例と言えるでしょう。

このごみ拾い活動は、4年の歳月を経て大きなムーブメントになっていったそうです。長期にわたって地道な活動を続けられた姿勢は、本当に素晴らしいと思います。ですが、これを企業が導入する場合、3~4年もかけてじっくりとやるのはなかなか難しい、というのが正直なところでしょう。

こうした取り組みの導入を検討する企業の多くは、その時点で、何らかの危機的な状況に陥っています。よって、手遅れになったり、途中で挫折したりしないように、波及効果の生産性・効率性を高める施策を意識的に打ち込んでいく必要があります。

ただ、その前に、絶対条件として確認しておきたいのが、記事の事例と同様、中心となる人の思いや信念の重要性です。

割れ窓理論の本質は「人の心」を動かすところにあります。人から人へと、強固な意志や、本物だけが持つ感動が伝播することによってのみ、中身の伴ったムーブメントが形成されます。つまり、強い思いを抱いた人のエネルギーが常に活動の中心に存在し、周囲にそれを供給し続けることが生命線となります。

それゆえ、中心人物の「気持ちと行動で周囲を引っ張る」という姿勢を活動のエンジンとして位置づけ、それを継続できる環境を必ず確保する必要があります。

この形が十分に担保されたうえであれば、さまざまな施策を打ち込んで、その生産性や効率性を上げることが可能となります。それらをうまく組み合わせたり、タイミングよく打ち込んでいくことにより、企業組織においても、その本質を損なうことなく、生産性・効率性の向上をめざすことができるのです。

以下はその施策の例です。



[割れ窓理論によるムーブメントの生産性・効率性を向上させる施策:例]

◆思いや信念を“布教”できるコアとなるメンバーのネットワークを形成する
 →定期的に忌憚のない議論やアイデアの創出を行う場を設け、思いや信念を維持・強化しながら進む。

◆思いや信念をわかりやすい形で可視化(文書化、物語化など)する
 →言葉の綺麗さよりも内容を重視する。必要に応じて書き換えても良い。ブログなどで情報を発信することも有効。

◆達成度を測定・共有し、そこから更に刺激を得られるようにする
 →成果を共有し、メンバーにパワーと元気を注入する。

◆理論、手段、具体的なツールなどで“武装”させる
 →開始前に、活動の意義や論理的な裏付けに関する研修や勉強会を行う。

◆新たな評価項目やインセンティブを少しだけ活動向けに整備する
 →評価・報酬目的の「ニセモノ」が現れるので、過剰な報酬や評価の改訂は必要ない。

◆批判や妨害に対しては、断固たる姿勢で臨む
 →必ず天の邪鬼(あまのじゃく)的に、ネガティブに捉える者が出てくる。これを放置ぜず、断固たる姿勢で対処する。



以上のような準備が整い、活動計画に落とし込んだら、あとはPDCAサイクルを回しながら、ひたすら前進あるのみです。

なお、全体的なポイントとしては、あまりガチガチのルールを作らず、自主的に取り組もうとする人の意志をできるだけ尊重する体制を維持することです。過剰なルールや細かい指示・命令は、それに依存する傾向が出てくるのと、結果的にあまり熱心でない人に基準を合わせる「護送船団方式」になってしまうので注意が必要です。



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2010年10月02日

◆割れ窓理論と日本電産永守会長~戦略具現化手法の可能性は?




※答えは足もとにある?ニューヨーク市の地下鉄犯罪・落書きの撲滅や、破たん寸前の企業の救済に劇的な効果を発揮したとされる割れ窓理論.


      ●                ●                ●


 大阪地検前特捜部長らが逮捕されました(2010/10/2日経新聞)。大阪特捜部の組織ぐるみの証拠改ざん隠ぺい工作が疑われているようですね。本日のテーマは、こうした集団による犯罪行為に手を染めていく心理構造や悪循環に陥ってしまった組織を救済するための一つの考え方を提示している「割れ窓理論」です。

*******

さて、本題に入りましょう。

 割れ窓(ブロークン・ウインドウズ)理論という、都市環境改善のための考え方があります。

成功例に、ニューヨーク市の、地下鉄などの都市環境や犯罪率の劇的な改善例があることが知られています。その主な成果は、1990年を頂点として、同市における殺人事件が3分の2減少し、重罪事件は50%減、そのうち地下鉄での重罪事件の発生は75%も少なくなったというものです。

日本にも同様の事例があります。

2001年に北海道警の札幌中央署が、同じく割れ窓理論を採用し、「すすきの環境浄化総合対策」として犯罪対策を行いました。駐車違反を徹底的に取り締まる事で路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少、2年間で犯罪を15%減少させることができた、という報告がなされています。

このような効力を持つ割れ窓理論アプローチですが、その内容は実にシンプルです。

たとえば、落書きや違法チラシなどの軽微な犯罪を徹底的に取り締る、といったアナログ的な対応を、とにかく粘り強く続けます。落書きが書かれてもすぐに消すことをひたすら繰り返し、軽微な犯罪にも妥協せず、それらが起こらなくなるまで断固とした姿勢で取り締まりを続けるのです。

このメカニズムを考えてみましょう。

落書きしたり犯罪を引き起こしてしまう人たちの多くは、生まれつきそのような資質を持っているというよりは、むしろ、周囲の環境に感化されて事におよんでしまう傾向が強いといいます。

これは、目に見える環境の悪さや規律のゆるさが「自分も同様のことをしてもよい」という暗黙のメッセージとなり人々の潜在意識に植え付けられ、集団への帰属意識や環境への適応本能と相まって、人々の悪しき行動を誘引する、という構造を持ってしまうと考えられています。

これを変えるためには、抽象論や精神論などではなく、同様のレベル、すなわち「具体的なかたちで、継続的に、断固とした意志を示す方法で“応戦”する」という方法が効果的とされており、前述の事例は、まさにこれを正面から実践した、ということになります。

 会社再建の名人で知られる、日本電産(※1)の永守会長も、同様の考えかたを実践して成果をあげています。

永守氏いわく、

「やることは二つしかない。一つは6S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ・作法)。職場をキレイにさせること。もう一つは出勤率。休まずに会社に来させること。これらを徹底してやらせることにより、会社は必ず改善する」

事実、このやり方を適用したコパル社(現日本電産コパル)やトーソク社(現日本電産トーソク)は、それまでの長期低迷がウソのように黒字化しています。両社は十数年ぶりに過去最高益を更新するなど、見事な再生を果たしているのです。

もちろん行動を律するだけでは業績の向上は望めません。しかし、一方で、いくら立派なビジョンや戦略を示しても、それを実行するための足まわりが伴わないかぎり「絵にかいたモチ」で終わってしまう可能性が高いことも事実なのです。

つまり永守会長は、戦略や利益計画を具現化するための足まわり(意識改革と行動)を徹底して再構築した、ということだと思います。
 
 ちなみに、「6S」や「行動を律する」というと、「なんだそんなことか」とナメてかかる人がいます。しかし、その習慣が、たとえば時間の使い方や顧客の情報の整理・整頓につながり、ひいては、業務全体の大きな改善へと波及してくることも忘れてはなりません。

 こうした類の手法は、最後までやり抜く覚悟さえあれば、ほぼ確実に一定の成果を得ることができるのです。少なくとも、戦略や経営計画の足まわり(具現化能力)を強化してくれるくらいの成果が得られることは覚えておきたいものです。




※1:弊社アドバイザー・協力者の京都大学経営管理大学院、末松千尋教授は、2010年6月より、日本電産の監査役を務められています。



※参照文献・情報:
   『壊れ窓理論の経営学』 マイケル・レヴィン 光文社 2006年
   『日経ビジネス 逆境を乗り越える経営』日経BP  2008年
    その他独自ルートによる情報、資料を分析


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2010年09月28日

◆ドラッカー~その波瀾万丈の生きざまを知って欲しい




※第二次大戦前夜、ドラッカーは、台頭著しいナチスへの取材を敢行し、アドルフ・ヒトラーやヨーゼフ・ゲッペルスらに何度も単独インタビューを行っている。「ヒトラーの思想は危険だ」と警告を繰り返すが、彼の意見に耳を傾ける人は僅かであったという。


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 きょう、武富士が会社更生法の適用を受けるとのニュースが飛び込んできました。

同社に対しては賛否両論があると思います。しかし、銀行などと違って行政の保護も何もない中で、回収率の算定方法や迅速な審査プロセスなど、小口融資に関して驚くようなノウハウを独自で築き上げ、多くの人たちの窮地を救ってきたのも事実です。

今後、再建を目指すのであれば、今まで培ったケイパビリティと逞しさを、より健全に、社会に貢献する形で生かしていって欲しいと思います。

 (参考: 日経WEB版9/27【武富士、会社更生法の適用きょう正式に申請】)


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 さて、本題に入りましょう。

 中小企業の経営者やベンチャー起業家など、チャレンジャーとしての人生を送ることを選択した方々に、ドラッカーの理論や哲学とともにぜひとも知っておいていただきたいのは彼の「生きざま」です。

実は、私は、中小企業やベンチャー企業支援のための団体を支援しているので、これらの経営者の方々と交流する機会が多くあります。

特に必要なことだと思われるので、生意気を承知であえて言いますが、こうした経営者の方々には、(孤独な戦いを強いられているがゆえに)ご自分の価値観にとらわれすぎていたり、偏った経験則に依存して苦しんでいたりする方が、少なからずいらっしゃるように思います。

しかし、新たな発見や構想、具体的なビジネスチャンスへの道を切り開くためには、自分の枠組み(=価値観や事業領域、付き合いの範囲などさまざまな境界線)を超えて動き、ものを見聞きし、考えなければなりません。

このためにヒントになるのが、ドラッカーの波瀾万丈の生きざまです。


 ここで、彼の経歴に簡単に触れておきましょう。

◆ピーター.F.ドラッカーは、1909年にオーストリアのウイーンに生まれます。高校卒業と同時にドイツに移住。商社マンや証券アナリスト、新聞記者などの仕事をこなしながら、フランクフルト大学に通って(仕事の合間に図書館で猛勉強しながら)博士号を取得。

◆記者時代には、ヒトラーやナチスに何度もインタビューを行います。しかし、彼らの思想に反する記事を書いて目をつけられ、ナチス党員にアパートに踏み込まれる前に荷物をまとめてドイツを脱出(!)。

◆新天地アメリカにおいては、TQCの元祖エドワード・デミング、GMの創業者アルフレッド・スローン、IBMの創業者トーマス・ワトソン、イギリスのチャーチル首相、黎明期のマッキンゼーの指導者マービン・バウワーなど、さまざまな人々と交流を持ちます。

◆1943年頃から、新しい社会機関としての可能性を感じたアメリカの大企業(GMやIBM、GEなど)のコンサルタントを努めるようになり、再びヨーロッパやアジアへの遠征も開始します。そして、後に金字塔と評されることになる「現代の経営」(1954年)や大著「マネジメント」(1973年)などを世に送り出していきます。

◆新しい社会機関としての可能性を感じたアメリカの大企業GMやIBMのコンサルタントを努めるようになり、再びヨーロッパやアジアへの遠征を開始します。そして、後に金字塔と評されることになる「現代の経営」や大著「マネジメント」などを世に送り出していきます。


 今よりははるかに国境や言語の壁が高かった時代に、ドラッカーはこれをものともせず、新しい活動の場を求めてヨーロッパやアメリカを駆け巡りました。

すなわち、常に現場に己の身を投じ、見聞を積み重ねながら、先行研究や文献などがまったく存在しなかったゼロの状態から、マネジメントの体系的理論や社会思想の新たな視点を打ち立てていったのです。

(※本ばかり読んで多少の違いを付け加えることで「新説」としているような多くの学者・研究者の著作とは、その背景も言葉の重みもまったく異なるのです)


以上の経歴からもわかるように、ドラッカーは、まさに実践・行動の人として、あらゆる障壁を乗り越えて動き、自らの可能性を切り拓いていきました。そしてこの姿勢は、ますます不透明さを増す経営環境を生き抜く術として、中小企業の経営者やベンチャー起業家に最も求められるものだと思うのです。

 こうした彼の「生きざま」を知ったうえで、その考え方や哲学に触れていただけるのであれば、ドラッカー理論を日々考え、実践しようとしている者として、これ以上の喜びはありません。



※参照文献・情報ソース:
 『ドラッカー わが軌跡』(『傍観者の時代』の新訳)
 『知の巨人 ドラッカー自伝』
 『わがドラッカー流経営論』(NHK知る楽テキスト、柳井正)
 ドラッカー学会資料および学会要人への、ありし日のドラッカー教授についてのインタビューなど。

※ドラッカー学会WEBサイト
  http://www.drucker-ws.org/


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2010年09月10日

●つれづれ日記: ドラッカー理論は、実は中小企業向けの理論?




※左から、わがドラッカー学会員で「もしドラ」の著者でもある岩崎夏海氏、ご存知ドラッカー教授、ドラッカー学会企画委員の私、そしてドラッカー学会代表の上田惇生氏。・・・今年の年末の大会は、どんな企画をしようかな?


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 「ドラッカーのマネジメント理論」というと、GMやIBM、ダイエー、ユニクロなどの企業名がよく出てくるので、大企業の経営者向けの理論、というイメージが強いと思います。

しかし、その内容は、(他の経営学者などのものと違って)本質を突いたものでありながらシンプルで、方向性と真に重要なポイントのみ簡潔に示されている部分が多く、日々の活動にも取り入れやすいものとなっています。

つまり、しがらみが多く、多大な調整や手続きが必要となる大企業と違って、経営者や管理者の意志ひとつで、明日からでも実践できるのがドラッカー理論であるとも言えるのです。


 また、ドラッカー学会員のファーストリテイリング社(ユニクロ)柳井正会長も指摘されているように、特に経営理論の類は、実践なくしては、ビジネスパーソンにとっては、あまり学ぶ意味がありませんよね。

その一方で、ドラッカーのマネジメント理論は、細かい方法論や実現のための仕組み・システムが細かく規定されているわけでもなく、取り組み方法はそれぞれに任されている感があります。

ゆえに、各人が個性を発揮しながら取り組めるので、特に自由度の高い中堅・中小企業人にとっては、実践するのにうってつけのものとなっているのです。


 中堅・中小企業の方々には、ぜひドラッカーの理論に触れ、その意味合いが自分にとって何なのか、自分でやるとすればどう工夫するか等々を考え、自らの機動性を最大限に生かしながら、成果の獲得にチャレンジしていって欲しいと思います。



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2010年08月30日

●つれづれ日記: 親子二代をドラッカー教授がつなぐ?




※先日、20数万部が発行されている、あんしん財団情報誌「あんしんLife」さんの取材を受けました。これについてのご報告はまた後日。



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 上の写真で私が持っている本は「ドラッカー経営哲学」(当時の定価で230円!)といって、1959年に、野田一夫さんの監訳で、日本事務能率協会から刊行されたものです。

つい先日、父から譲り受けました。

銀行員だった両親の仲人をしていただいた当時の副頭取が、熱烈なドラッカーの信奉者だったそうで、その方から、結婚する直前にこの本をプレゼントされ、以来、40数年間、大切に保管してきたということです。

今年の夏休みに、久しぶりに会いに行ったとき、私がドラッカー学会の要職に就いたことを聞いて、父が、書庫から引っ張り出してきたのです。

ここ数年、私の方が仕事に忙殺され、会いに行く機会がなかなか得られず、ドラッカー学会の仕事も含めて近況をきちんと報告していなかったので、両親がドラッカーに、このような形で縁があったことを、今回、初めて知りました。


 当時からドラッカーはかなり人気があり、父も若いころには、彼の書籍を読み込んだ時期があったようで、父いわく「魂が込められた理論」というものに初めて触れた気がしたそうです。また、当時の同僚の中には、実際に彼のセミナーに出かけた人も何人かいらしたとのことです。

しばし、当時の様子や現在のドラッカー学会についての話題に花が咲きました。


 今回の出来事は、コミュニケーションが希薄になりがちだった私たち親子の関係を、40数年の時を経たドラッカー教授のこの本がふたたび繋いでくれた、ということになるのでしょうか。

そう考えると、とても感慨深いものがあります。




◎書籍データ:
 『ドラッカー経営哲学』 野田一夫監修、日本事務能率協会編 1959年11月刊 定価230円(当時)



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2010年08月03日

●つれづれ日記:ケイパビリティによる企業進化戦略の視点とは?



 ※時代とともに事業の“重心“とそれを支えるコア・ケイパビリティが移動する。ゆえに、かつての重心の周辺を丹念に検証し、再び重心を捕捉したうえで事業の再構築を図ることが重要.


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 きょうは、長期的に着実な成長を続ける企業群が、どのような視点で自社の進化を図っているかについて触れてみましょう。

 この分野の初期の開拓者として知られる、ベイン&カンパニー社の戦略コンサルタントであるクリス・ズック氏が、事業を着実に進化させるために、以下のようなユニークな視点を提唱しています。


いわく、

●「事業活動を支える機能単位であるケイパビリティを、ある種の枠組みにそって丹念に可視化・構造化すると、多くの企業において、化学の元素記号の周期律表のように沢山のものが浮かび上がってくる」

●そして「市場性や顧客の経済性をにらみながらこれらを再組成したり、他の分野の補完的な資産と組み合わせたりすることで、従来とは異なる事業の進化軸を発見できる可能性が高まる」



 これは、リスクを抑えながら事業の進化を図るための重要な視点にもかかわらず、多くの企業で、正面から体系的に検討されることが殆ど無い方法論だと思います。

何故なら、一般的に言って、多くの企業は、ともすれば新しい市場や技術、経営手法・技法に目を奪われがちになります。特に現在の事業ややり方に陰りが見えてきたとき、いいものを持っているケイパビリティさえも、陳腐化しつつある事業と一緒くたにしてしまい、事業全体を構成する機能すべてをダメなものと判定してしまう企業が少なくないからです。

しかし、どんなに厳しい状況にある企業にも、当人たちも自覚していない、または過小評価しているケイパビリティやインタンジブルな資産が埋もれています。

その最小単位は、個人の中に留まっているスキルやノウハウなどですが、大きな単位になると、ある一定方向からのアプローチしかできていないゆえに、せっかく特権的なアクセス権があるにもかかわらず、「大きなプロフィット・ポテンシャルを持つ顧客セグメントを丸ごと埋没させてしまっている例」などがあります。

また、メインの製品やサービスの業績動向に一喜一憂するあまり、それに付随する将来のコア・ケイパビリティの可能性を見逃してしまう。そして、突如として現れた、当該事業領域における新しいコア・ケイパビリティを持つ新興企業に、得意なはずの分野で出し抜かれてしまう、といった例もよく見受けられます。


 ここで改めて企業の進化を、自らのケイパビリティを検証して進化軸の発見につなげていった有名な企業の事例で考えてみましょう。

例えばアメリカン・エクスプレス社とIBM社です。前者は社名からもわかるように、かつては貨物運送事業を、IBM社は、これもよく知られているように、メインフレームS390を中心とした、いわゆるハード設備の販売を事業の中心にしていました。

しかし、それらの事業に陰りが見えてきたとき、主力事業を支えるサブシステム(サブ・ケイパビリティ)として事業体系の下位に位置していたペイメント・郵便為替サービス機能(アメックス)や顧客ソリューション提供サービス機能(IBM)を新たに事業体系の最上位(事業領域の中心)へ移動させました。そして更に、それに付随するケイパビリティ群や資産群を組み換えて事業の進化・高度化をはかり、成長への道を切り開いていったのです。

こうした、長期的にたゆまぬ成長を実現している会社は、いわゆる「飛び地」といわれるまったく新しい分野での事業立ち上げやM&Aなどに社運を賭ける、などといったことは殆どありません。実は、意外にも、自分の足元をしっかりと見つめ、「すでに持っている資産の可能性」を丁寧に検証し、着実な事業進化につなげている例が多いのです。


 いさましい競争戦略やM&A戦略を語ることも時には必要でしょう。しかし、リスクを最小限に抑え、着実な事業進化をはかる、といった堅実な経営が求められているのもまた現実です。

改めて自分の足元を見つめ、すでに持っている資産を丁寧に掘り起こし整備していく、すなわち「身の回りにあるものをフルに活用して攻勢に転じる」といった姿勢も決して忘れてはならないと思います。



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2010年07月28日

●つれづれ日記: 戦略立案に携わる実務者の本当の姿とは?




※理論・フレームワークによる戦略立案を提唱する人たちとそれを真っ向から否定する大前研一氏。
 写真左より、J.バーニー、B.ネイルバフ、M.ポーター、A.ブランデンバーガー、J.アベグレンの各氏、そして大前氏。
 ちなみに、このブログで何度か取り上げているH.ミンツバーグ氏は大前氏と同様の立場を取っている。


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 先日、あるグループのオフ会があり、千代田区にあるOhma works(大前研一さんのオフィスビル)に遊びに行ったとき、ある方から、大前さんが以下のように言っていると聞かされ、実際にそのビデオを拝見するということがありました。

いわく-----戦略理論やフレームワークありきで経営を行おうとするのは本末転倒である。これらはいずれも、成功事例を自分流に解釈した人のあと講釈であって、実際にフレームワークや理論で経営ができるわけではない-----(大前研一:BBT大学院の講義録より)

これを見て、さすが、数多くの戦略実務に携わってこられ、自らの事業を起こして成功している方であると感じました。

なので、きょうは、大前氏のこの言葉について、思いつくままに語ってみたいと思います。


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 意外に知られていませんが、責任を持って「本当に」戦略を立案し運用するという実務に携わっている、たとえば優れたリーダーが率いる事業会社の経営企画部門やマッキンゼーのような戦略の専門機関、あるいは大手企業の再生実務に携わる専門家などは、いわゆる戦略理論やフレームワークを中心的に使って戦略を立案しているわけではありません。

戦略というと、すぐにM.ポーターやJ.バーニーといった学者を思い浮かべ、彼らの理論が戦略そのものであり、事業成功の虎の巻のように語る人が多いように思います。しかし、実務者は、あくまでも戦略理論やフレームワークは、目的を実現に導くための手段にすぎないととらえます。

つまり、理論やフレームワークが先にありきではないところが、実務における戦略立案・運用に携わる者に共通する姿勢なのです。


 多くの優れた企業における戦略立案の実務では、あくまでも、以下のようなシンプルなフェーズを積み重ねて(相互に作用させながら)戦略の立案を行います。



【実際に行われている戦略立案フェーズの典型例】

 ①実現したい経営目標やビジョンを構想し、設定する。

 ②経験や体感、手元に存在する情報などを通じて、現時点でベストと考えられる、
  そこに至るまでの仮説的シナリオをいくつか立てる。

 ③それらの妥当性について分析・検証を行う。

 ④検証した仮説的シナリオを、実現や不確実性の可能性の範囲内で
  複数(代替案として)抽出し整理する。

 ⑤さらに統廃合や組み合わせの可能性を考察しながら洗練させ、絞り込む。

 ⑥最終的にもっとも腹に落ちる戦略案を選択する。

 ⑦選択した戦略を事業システムや業務プロセスへ展開する。

 ⑧経営計画に落とし込む。

 ⑨モニタリング体制を組んで実行に移す。



 もちろん、この過程で、必要であれば、何らかのフレームワークを用いたり、組み合わせて参照したりすることはあります。しかし、少なくとも、一貫して1つのものにとらわれ続けることはありません。

なぜなら、戦略の実務者にとっての仕事の中核は、あくまでも、戦略仮説に対し、知力を尽くして洞察を与えたり、斬新な視点を付加したりして、その可能性や信ぴょう性を高めることにあるからです。

更には、言うまでもないことですが、社会や顧客、従業員などのステークホルダーに対する大きな責任を背負った者に対する評価は「結果がすべて」であり、知識が豊富である、とか、精密な戦略を立案した、といったようなことのみで評価を得られることはあり得ないからです。


 冒頭の大前さんの言葉が示唆しているのは、何千人、何万人もの生活を預かるトップマネジメント・レベルの世界においては、単に理論やフレームワークにそって作業を行えば成果や評価が得られるような甘い仕事は存在しない、ということではないでしょうか。



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2010年07月20日

◆つれづれ日記: 映画『大脱走』に見るマネジメント思想



※実際に脱走が行われたドイツ空軍管轄の第三捕虜収容所(当時ベルリンの南東約160kmのサガンに存在)とDVD『大脱走-アルティメット版』・・・そして脱走後に捕らわれたヒルツ大尉が収容所に送還されてくる感動のラストシーン!


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 連休中、久しぶりに映画『大脱走』を(DVDで)観ました。3時間近い大作で、小学生の時に初めてこの映画に出会って以来、もう何度も観ているのですが、いつもあっという間に時間が過ぎてしまいます。

改めて私が解説するまでもありませんが、まず史実に基づくストーリー展開が素晴らしい。さらには登場人物も個性豊かで、娯楽映画としても第一級の作品だと思います。

ですが、われわれ企業戦略に携わる実務者としては、組織やマネジメントの視点から、特に以下の3点を意識して鑑賞すると、改めて別の面白さや新しさが感じられるかもしれません。



●多様性の連帯
 道具の調達屋や身分証明書の偽造屋、トンネル堀りのプロ等々、一癖も二癖もありそうな個性豊かなメンバーそれぞれが自分の役割をしっかりと理解したうえで、知力をふりしぼって問題解決策を考え、それを遂行する。そして、お互いを絶妙にサポートしながら「大脱走」に向けて一丸となる姿が印象的です。

さらに彼らをまとめ上げるリーダーの執念や判断力、差配力にも見るべきものがあります。

史実においても、リーダーだった人は、メンバーからの尊敬を一身に集めていたようですが、脱走のプロたちが嫌な顔一つせずに彼に従ったのは、メンバーの能力や個性をしっかりと理解し尊重したうえで、「すべてを任せる」姿勢を基本にすえて統率していこうとするリーダーの姿勢があったからではないでしょうか?

そして、日本人の経営者やマネージャーがもっとも苦手とするのが、この多様性のマネジメントだと思います。



●リスク・マネジメントと決断力
 リスクを分散するため、脱走用のトンネル「ディック」「トム」「ハリー」の3本を同時に掘り進めます。しかし、ドイツ監視兵にそのうちの1本が発見されてしまうと、見つかっていない1本も捨てて、残りの1本へ全力で集中する決断を即座に下します。

日本人なら、(これまでの労力や担当者への配慮も含めて)もったいないと考えるあまり、見つかっていない1本を含めた残りの2本のトンネルを引き続き、掘り続けてしまうかもしれませんよね。



●システムによるオペレーション管理
 きびしい監視体制の下、トンネルを着実に掘り進めるため、簡単な器具を使った何気ない動作をサインとし、それを複数連動させたアラート・システムを作ります(実際に映画の中で、「すぐに作業をカモフラージュできる完璧なアラート・システムを作れ!」といったセリフが出てきます)。

単に個人のガンバリに依存するだけではなく、メンバーのシステマティックな連携による、確実かつ安定して24時間機能する仕組みを作り上げる、といった発想には、この脱走が行われた時代(1944年)を考えると驚きを禁じ得ません。



 なお、『大脱走~アルティメット版』(2ディスク仕様)の特典ディスクには、メイキングはもちろん、S.マックイーン演じるヒルツ大尉のモデルとなった人物のその後や、実話のドキュメンタリーが収められています。史実を詳しく知ることができる興味深い内容となっているので、こちらもオススメです。



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2010年07月13日

●つれづれ日記:MECEの基本形、5W3Hを使いこなそう!



                   ※まずは5W3Hフレームワークでチェックする習慣を身につけよう!



 ものごとを構造的にとらえる、というときの思考法の基本は、マッキンゼー社を嚆矢とするMECE(ミッシー:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略)でしょう。

なかでも5W3Hのフレームワークは、ある事象・現象を構造化するための、最も汎用的かつベーシックなMECEであるといえます。


 5W3Hは中学生くらいの時に知る考え方なので、「な~んだ、簡単じゃん!」と感じる人も多いと思います。しかし、目の前の議論や事象・現象、会話の内容などを瞬時に5W3Hに沿って整理・特定することは、実は容易ではありません。

私の企業コンサルティングの現場経験から言っても、自社の戦略は言うに及ばず、自分の仕事や目の前の現象でさえ、5W3Hを網羅して簡潔明瞭に即答できる人はめったにいません。

だからあまりナメてはいけません。これを修得したときのメリットは想像以上に大きなものになるのですから。なぜならば、このフレームワークは、いわば「白いご飯」のようなもので、身の回りの業務から事業戦略まで、あらゆる“おかず”に適用が可能となるからなのです。


 こなれてくると、ほぼ確実に会議や報告・連絡・相談などの生産性が向上します。さらに、個人レベルのみならず、部門や組織レベルで5W3Hが共通の思考フレーム(プロトコル)になってくると、事業全体の効率が目に見えて高まってきます。

仮に、1人の従業員の生産性が7%向上したとして、それに従業員数を乗じると、組織全体の生産性やトランザクション・コスト(業務で発生するやり取りのコスト)低減の度合いがかなりのものになることは、容易に想像いただけると思います。


 ここで、使用法について、1つだけポイントをあげておきましょう。

それは、5W3Hをあまり機械的に当てはめないことです。われわれは5W3Hというと反射的に「いつ、どこで、誰が、何を・・・」といったように、それぞれに狭い言葉(定義)をあてて考えようとしてしまいます。

もちろんそのやり方でOKの場合もあります。しかし、対象が複雑なものになるにつれて、これだけでは対応できなくなるものが増えてくるのです。ゆえに、その場合は、(下記の表でも示すように)When=時間や期間に関係すること、Why=目的や背景・理由に関連すること、といった形で、各要素を緩やかにあててみることがコツとなります。

 
 ちなみに、こうした思考法の修得もスポーツと同じく反復練習が必要で、ある程度成果が見えてくるまでしつこく粘る姿勢が大切です。

ですが、馴染んでくると、むしろこうしたロジカルな思考スタイルをとらないと気持ち悪さすら感じるようになってきます。ここまでくればしめたもので、あなたの仕事の生産性は確実に向上し、口から出る言葉までが変化していることに気付くでしょう。

別の言い方をすると、この思考法は取り組みやすい割にかなりの脳トレ効果があるようです。実際に私は、わずか2~3ヶ月の間に、目の前の人たちのしゃべり方やライティング能力が目に見えて向上していくのを何度も目の当たりにしています。


 まずは、報告・連絡・相談事項に関することや身の回りで起きている問題など、身近な出来事から始めてみてはいかがでしょうか?



【5W3Hフレームワーク】

 ※使い方のコツは、それぞれの要素を「緩やかにあてる」ことである.

 ・Why =理由、背景、目的、固有の事情、理念、思想、哲学など.
 ・What =当該事象の内容など.
 ・When =時間や期間、期限など.
 ・Where =場所、場、空間(物理的な場所以外も含む)、置かれた環境、市場など
 ・Who =関係者、関連部門・部署、関係機関、競合、パートナーなど.

 ・How =方法、メカニズム(構造)など.
 ・How many =オーダー(ボリューム)、影響度、人員数など.
 ・How much =心理的なものなど目に見えないものを含むあらゆるコストなど.



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2010年07月05日

◆つれづれ日記: マッキンゼー社の「OVA」から学べること



 
    ※あらゆる業務は本質的にサービスである。その価値を測るとき、「成果の受益者」の視点を忘れてはならない...


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 連日蒸し暑いですね。数回着ただけでスーツをクリーニングに出さなければなりません。最近は洗えるものが出回っているようですがどんな感じなんでしょう?ちゃんときれいになって、シワとかも出ないんですかね?お持ちの方はぜひ教えてください---




---さて、突然ですが、私はもともと生産システム畑の出身で、VA/VE(バリュー・エンジニアリング/バリュー・アナリシス)やIE(インダストリアル・エンジニアリング)などの手法を用いて生産工程や生産管理システム、FA(ファクトリー・オートメーション)の設計・改善を行うといった仕事をしていました。

なので、今日は、これらのむかし(?)の手法について、思いつくままに述べてみたいと思います。


 VA/VEやIEというと、一般的には、自社製品と他社製品を並べてバラバラに分解し、細かいムダやオーバーデザイン、プロセスの隘路などを発見し、材料費の削減や手間ヒマの簡略化など、主に内部の事情からくるコストダウンにつなげるという目的で使われている例が多いようです。

つまり、(限りなく)「閉じられた世界」で用いられてきたということです。

しかし、実は、VA/VEやIEといった手法は、このような絶対基準(閉鎖空間)でのコストダウンに用いるだけではなく、「受益者からの視点」すなわち「提供先にどういった経済的なインパクトやリスク低減などのメリットをもたらすか」といった外からの評価指標を加えて使ってみると、サービス業務をはじめとするさまざまなワークを設計・改善するためにも活用できるのです。

つまり、業務を行っている当事者だけではなく、その業務の受益者の視点が入るので、そうした人たちも巻き込んで、より多角的な視点から、「その製品や業務はほんとうに役に立っているのか」「コストや工数に見合う効能が得られているのか」といった議論ができるようになるのです。

そして、この考え方を反映し体系的にまとめた数少ない手法があります。マッキンゼー社が間接業務の削減のために開発したOVA(オーバーヘッド・バリュー・アナリシス)です。


 このOVAはかなり実用的な手法で、コストダウン・プロジェクトにありがちな「10%一律削減」や「トップダウンによる一方的なコスト削減」と違って、まず当該業務に対し、当事者や業務の受益者によって定量・定性的な評価を施したうえで削減や改善の可否を決定します。

ゆえに、改善案がファクトとコンセンサスに基づいて決定されるので受け入れられやすく、また、真に無駄な業務が削減されるので、バグを除去したプログラムのように業務プロセスが滑らかになり、結果として定着しやすくなるというメリットが認められています。


 大胆な戦略立案コンサルティングのイメージが強い同社ですが、実はVA/VEのような地味(?)で伝統的な手法もしっかりと取りこんで、自社の視点を加味しながら活用しているんですね。

ものごとを鵜呑みにせず、理論や手法・技法の本質をみきわめ、さらに自分たちの問題意識や創意工夫をぶつけてみる、といった姿勢には、われわれも学ぶべきところがあるのではないかと思います。


 ちなみに、かつて一世を風靡しながら、古くなってしまったと思われている手法とか、適用範囲が狭いなどと思われる手法にも、新たな視点を加えたり、ちょっとした改良を施したりするだけで、複雑な現代の企業経営や、その他の(特にソフトサービスなどの)領域に応用できるものがいくつもあります。

VA/VEにかぎらず、皆さんも、むかし学んだり使ったりした手法・技法を別な角度から見直してみると良いと思います。

自分の創意工夫を注入することによってその手法がさらに手になじんだツールとなるし、さらには大きなコストもかからない。何よりも成果を獲得できる可能性がグンと高まると思うのですがいかがでしょう?



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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 08:20Comments(0)戦略請負人のつれづれ日記

2010年06月28日

◆つれづれ日記:技術ポートフォリオ戦略の仕事が佳境です!




  ※断面図として使われてきたポートフォリオ手法だが、現代においては、むしろ戦略的な方向性を読み取る動態的なツールとして活用すべき...



                  ●          ●          ●

 先週の木曜日は久しぶりによい天気でしたね~。でも、前日に緊急の依頼案件もあって、その日の午前3時頃までその資料を読み込んだりしていたので、朝の陽射しがやけにまぶしく感じてしまいました-----



 さて、この日は終日、神奈川にある、某産業用化学品メーカーの研究開発センターへ行ってました。ここ何年も投資効率の悪さが続いている「R&D戦略&体制」の見直しが主なテーマで、4ヶ月ほど前からプロジェクトがスタートしています。

その内容について少しだけ。

プロジェクトの骨子は、変化の激しい化学技術を包括的・体系的に管理するため、技術戦略のプラットフォームとしてテクノロジー・ポートフォリオと、それを進化させながらドライブする体制をあわせて構築し、秋口までに運用にこぎ着けようというものです。


 ご存知のようにポートフォリオというしくみの本質は、二律背反する変数群の最適な組み合わせを科学的に維持管理し、恒常的にROIや生産性を最大化しようとするところにあります。

ですが、化学製品における技術は、通常のハードウェア製品などに使われる技術と違って、素材技術や組成技術といった流動的な要素が入ってくるので、一般的にはポートフォリオ・システムに落とし込みにくいと言われています。

ゆえに、技術間の境界線の設定や単位変数をどのレベルの大きさでくくるか、といった難しい問題があり、これを科学的・理論的に特定するための作業がひとつの山場となります。


・・・で、このテクノロジー・ポートフォリオ・システム(TPS)の構築作業をごく簡単に説明してみますと...

まず、現在、同社が抱えている技術や特許を、ターゲット市場や既存顧客に対する経済的インパクト、顧客の生産性への寄与の度合い、顧客のリスク軽減度合い、といった「顧客に対する付加価値」に貢献する変数として定量把握し体系化します。これがTPSの二律背反するうちの1つの軸、すなわち「対市場付加価値軸」となります。

一方で、もう1つの軸を設定するため、技術・特許の原価・利益構造、開発組成工数、付随データ資産の価値、製品展開の可能性、生み出すキャッシュフローの多寡などの内部経済性に影響するデータを体系化します。これが「対自社経済性貢献軸」となります。

そして上記変数のすべてについて、総合評価をしやすくするための統一スケール化や調整を施し、TPSを動かすための従属変数群として決定し、これらをシステムへ落とし込みます。

最後に、中期戦略経営計画の立案フローへ組み込み、モニタリング体制も構築し、運用に入ります。


・・・このようにサラっと説明すると、全体の作業量はそれほどではないように見えるかもしれません。でも「言うは易し、行うは難し」で、実は、連日大変な作業が続いているんですよね。




膨大な量のデータを解析するために、同社の研究者・技術者、同社顧問の技術士や弁理士の先生方、さらにはフィールド・エンジニアやファイナンス部門の社員まで動員して作業を行っているのですが、前例のない不透明な領域も多く、悪戦苦闘の連続です。

もともと扱っている技術の幅が広いため、4つのプロジェクトチームを並行して走らせています。しかし、複雑な化学組成データや大量の実験データから顧客・財務経理データまでを取り扱い、しかも、それらが複雑な因果関係を持っているので、進捗・成果管理も一筋縄ではいかないのです。


 ただ・・・大変だけど、同社の社風にはずい分と助けられているんです。。経営陣をはじめ、明るく前向きな人が多いので、他にも数社の顧客を抱えて疲労困パイ気味の私が逆にはげまされる、なんてこともあったりするんですよね(苦笑)。


 とにかく、この種のプロジェクトは、スタートから半年が勝負です。このくらいの期間で一定のメドをつけないと、生産性が急に下降カーブを描きはじめ、疲労感が指数関数的に増加するようになってしまいます。

なので、もうしばらくは、膨大なデータの分析と、しばしば白熱した議論をともなうミーティング、そして総勢22人からなる4つのチームのマネジメントに追われる日々が続きそうです。


※本コラムは同社の了解を得て掲載しています。


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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 08:25Comments(0)戦略請負人のつれづれ日記

2010年06月21日

●つれづれ日記:ミンツバーグの言葉とある特殊機器メーカーの例




 ※会議や書類作成はあくまでも手段。目的を追求する真摯な姿勢があってこそ、その中身も充実したものとなる...


◆ミンツバーグの言葉が頭をよぎった瞬間

 今月初旬(2010年6月)、東海地方にある某船舶・港湾設備機器メーカー(特殊クレーンや搬送用機械製造/従業員約1600人の準大手)の経営者および経営企画部の方々とお会いしてきました。

戦略の策定・運用体制とメンテナンス部門の充実に関してのご相談を受けたのですが、それに先駆けて、現在作成中の経営計画書を見せていただきました。

まず驚いたのは、来期の経営計画書を3種類、並行して作成しようとしていたことです。

この会社では、セミナーで指導してもらった企業診断士や、付き合いのある会計事務所の指導のもと、3ヶ月かけて6人の事業計画担当者が、それぞれ異なる3通りの経営計画書を作成しようとしていたのです。

彼らに言わせれば、この方法は「シナリオ・プランニング」だそうで、3本の経営計画書の「おいしいところ」を統合して、最適なものへと1本化するのだそうです。

3本同時作成の是非はさておき、各計画書が(ある程度)しっかりとしたロジックとファクトに基づいて作成されているのならまだいいでしょう。しかし、問診を行ってみると、どの計画書も、根拠に乏しい情報や思い込み、過去の経験則などがかなり混在したままで作成されていることがわかってきたのです。

すなわち、経営陣・事業部長らの経験則や組織全体の成功体験、過去の都合のよいデータなどを前提として需要の伸びや安定した経営環境が続くとされ、それにもとづいて予算が割り振られ、投資計画が決められようとしていたのです。

このとき、まさに、先日のコラムで取りあげたミンツバーグ教授のことば、「多くの戦略プランニングは、実は戦略プログラミング(=作業)にすぎない」(★別コラム参照)が頭をよぎりました。



◆自覚症状がない企業が実は多い

 実は、彼らのように、真に議論や分析をつくすべきところを何となく避けてしまい、最初から過去の成功体験や経験則を“改良”し詳細化することをプランニングだと思い込んでいる例は少なくないのです。

この会社の例でいえば、本来時間をかけて行うべきは、次のことでした。

すなわち、計画の前提となった成功体験や経験則に多角的にメスを入れ、徹底して検証、反証を行う、そしてそれらの良いところ・悪いところをきちんと識別したうえで、とらわれない素直な思考を加味しながら成長・進化が可能な軸・次元(戦略仮説)を、知力をふり絞って見出していく、という知的生産活動です。


 あまり一般には知られていないように思いますが、こうした状況は、実は、このクラスの規模の日本企業に割と見られる特徴ではないかと思います。

いちばんメスを入れなければならない本丸の部分を何となくみんなで回避し、逆にそれによって発生するであろうリスクや事業上の不都合を補うために、わざわざ本丸の周囲に膨大な作業(3本の計画書づくり)を発生させ帳尻を合わせようとする、という一種のねじれ現象です。


 ちなみに、私が主にお手伝いをするのは、従業員の規模でいえば、だいたい300~5000人くらいの中堅・準大手企業が多いのですが、このクラスには、創業者のイケイケの事業姿勢やひとつの技術が当たってドーンとデカくなったところが多い。

しかも、地元で名前は知られており、“優秀”な大卒や院卒の社員も集まるので、彼らが気を利かせるおかげでおかしな知恵や機能がヘンに発達してしまい、このようなゆがんだ戦略・計画づくりが行われるようになるのではないかと思います。



◆手法・技法だけではなく、取り組み姿勢が重要

 いかがでしょう?当ブログを読んでくださっている皆さんの会社では、このようなイビツなプランニングが行われていないでしょうか?“聖域”を暗黙のうちにつくり、それを回避する免罪符としての「作業」をわざわざ増やしてしまっているようなところはないでしょうか?

色々と申し上げましたが、私の言いたいことはただ一つ、勇気をもって正面から真の戦略プランニングに取り組んでください、ということです。経営陣やマネージャーの方々には、勇気をもって、いったん自分の成功体験をチャラにしてください、と言いたい。

この姿勢がなければ、いくらシナリオ・プランニングなどの手法を駆使しても、得られるものはきわめて少なくなる(投資利益率はいちじるしく悪くなる)ということを、いくつもの実例を見てきた者として申し上げたいのです。

大前研一氏も強調されているように(★別コラム参照)、個性があって、豊かで、しかも腹に落ちる戦略が生み出されるには、何よりも取り組み姿勢が重要になってくるのです。決して分析技術の高さだけが決め手になるのではありません。

着実に進化を続けている企業は、常に真摯に自らと向き合うことで問題や可能性を発見しています。この事実をいま一度見すえて、あらゆる企業に、真の戦略プランニングに正面から取り組んで欲しいと思うのです。



※本コラムは同社の了解を得て掲載しています。


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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 11:27Comments(0)戦略請負人のつれづれ日記