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2011年01月12日

◆B2Bの事業高度化戦略~人材への割り切りと発想の転換を持て




※事業のコアに集中し、戦略を先鋭化させたい企業の多くは、コア以外の自社のビジネス機能の構築、運営、更新を、自社の戦略を深く理解する専門機関に委ねたいと考えている...



◆PRのコーナー:

 2011年5月、淑徳大学サテライトキャンパスにて、ドラッカーを学ぶ講座『第一線の実務家と考えよう!ドラッカーに学ぶ新型知識労働者の姿』を開催します。詳しくは下記をご覧ください。

 ○「講座PRチラシ ダウンロードのページ」
 http://jtmt-office.jimdo.com/資料のダウンロード/



◆ニュース雑感:

『ブラジル高速鉄道争奪戦 入札延期に望みつなぐ日本』
(ダイヤモンド・オンライン 1月10日[月])

 ほぼ決まりと見られていた韓国のブラジル高速鉄道(TAV)事業の受注が、土壇場で延期になったそうです。

この商談で新幹線システムを売り込んだ日本企業の関係者によると、ブラジル政府が北朝鮮リスクを抱える韓国への40年にわたる長期の運営委託を危ぶんだ面がある、とのことです。しかし一方で、同政府の「買い叩き」ともいえる購買条件の緩和がなされる気配もいまのところないようです。

ゆえに、もし“節約”志向のブラジル政府に韓国のリスクを危ぶむ気持ちが湧いてきたとすれば、それは将来「高くつく」可能性が頭に浮かんできたからかもしれません。

したがって、日本の新幹線システムを売ろうとする企業連合軍は、新幹線システムの長期安全運営ノウハウや実証データを具体的・体系的に提示するのはもちろん、実績に乏しい韓国のそれが持つ潜在リスクコストや、ブラジル政府の甘い事業見積もり・建設リスクも指摘しながら、新幹線のトータルな経済性や安定運営によるコスト優位性をアピールしていくことが、受注の突破口になるのではないでしょうか?

もちろん、こうした高度な分析や提案を体系的に示すことができる優秀な専門家や、それを支える企業連合の惜しみない協力体制があることが前提となるのはいうまでもありませんが。

○記事詳細
『ブラジル高速鉄道争奪戦 入札延期に望みつなぐ日本』


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◆本日のコラム:

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 ロジスティクス(物流)や工業プラント、生産システム、ITインフラ、交通システム事業など、かつて隆盛を誇ってきたB2B(Business To Business)を展開する企業に元気がありません。国際的な展開はもとより、国内においても必ずしも戦績が良くないようです。

その活動を観察したところでは、いまだに技術やハードウェアの説明に拘泥し、「モノ売り」「技術売り」といった「売りたいものが先にありき」の営業スタイルから脱却できていない企業が大半のように思えます。

つまるところ、こうした姿勢は、高度化・複雑化した顧客の経済活動へ貢献するという観点から、自社の製品・サービスを「顧客ビジネスに組み込まれる戦略的な機能」として、同様に高度化・生態系化して提供できていないことによる部分が、少なからずあるように思われます。

ドラッカーは、「マネージャーは他社への貢献に焦点を当てて仕事を組み立てねばならない」と指摘しますが、これは人間のみならず、ビジネス機能や自社のバリュー(製品・サービス体系)にもいえることなのです。

すなわち、物流もITインフラも生産設備や工業プラントなども、「顧客の事業戦略やビジネス力の向上に貢献すること」に焦点を当てて設計・構築されていなければならない、ということです。

では、どのような方法で、こうした高度な事業スキルを自社にビルトインしけば良いのでしょうか?

もちろんカギとなるのは人材です。しかし、新たにこのような事業スキルを構築しようとすると、単に製品特性の説明や技術的なアピール、価格交渉などしか打ち手を持たない従来型の担当者とはまったく異なる人材が必要となります。

つまり、顧客の立場に身を置き、顧客のビジネス戦略に対するインパクトや経済性・コストメリットなどを科学的・体系的に提示することができる、顧客エージェントや事業コンサルタント的な役割を果たすことのできる人材が、少なくとも司令塔部門には必要となるのです。

ここでポイントとなるのは、できるだけ「現在の担当部門にいる人材とは別立てで人材を育成・調達する方向で考える」ことです。

特に物流などの分野で提案・商談活動に従事してきた人は、社の内外からコストを転嫁されたり、購買条件を叩かれたりしてきており、被害者意識を持っている人が少なくありません。

また、酷な言い方ですが、これらの人たちには、顧客への対応スキルが値引き(コスト対応)や御用聞きなどの低レベルなものにとどまっている人が多く、このような担当者を再教育するのはきわめて非効率であり、改革を冗長化させ、失敗に終わらせる確率を高めてしまいます。

結論から言うと、従来型の担当者は定型業務に専念させる、と割り切ったうえで、業務改革や新しい業務スタイルのかじ取り役には、外部や他部門から調達した、これまでとは異なる視点やスキルセットを持つ人材を据えることが、結果的に最も効率的かつ効果的な策となります。

 ちなみに筆者が経営者として企業の再建にあたる場合、この種の改革には、小型のカルロス・ゴーン日産社長よろしく、事業コンサルタント的なスキルを持つ人材を部門長としてヘッドハンティングしたり、経営分析力や戦略鑑定眼を持つ経営企画部門の中堅・若手メンバーを営業の司令塔部門へと転身させたりすることがあります。

特に後者のやり方は、しばしば有効となります。社内でそのような人材を調達する場合、「自社のビジネスや技術力」を熟知しながらも経営やビジネス戦略を分析する視点やスキルを保有しているというメリットがあります。それゆえ、彼らが思い切って活躍できる環境を整えることさえできれば即効性が高くなるのです。

「当該担当者には、その領域における改革はできない」といった言い方があります。これを一歩進めて解釈すると、改革後の仕事はいままでやってきた仕事とは別物である、ゆえに、「最初から新しいスキルセットを持つ人材をキーポジションに据える」といった発想の転換が必要ということです。

また、「6歳の子供に50kgのリュックを背負わせてはならない」といった表現もあります。ドラッカーの言葉ですが、言い換えると、過去の経験則や価値観を背負ったままの改革をやってはいけない、ということです。

 以上のような考え方は、日本型の組織には馴染まないかもしれません。しかし、このやり方は、「誰を最優先に考えて貢献していくのか」を熟考し、それに向けて体制を整える、という、顧客にとってもっとも真摯な施策を実行することに他ならないのです。

そして、このような顧客志向が徹底できる組織だけが、顧客の戦略的パートナーとして、厚い利益率を享受できる、数少ない存在になれるのです。


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2010年05月17日

◆“価値可能態”ではダメ!本業・コア事業を強化する実戦的手法



             ※本業・コア事業の高度化、インテリジェント化を考える際の1つの突破口は、
               顧客の価値連鎖を正確に理解することである。


 一般的に、自社が提供する製品やサービスを指して、「わが社の価値は●●である」という言い方をする。しかし、これらの大半は、顧客から見ると、価値体系(バリューチェーン)の一部を構成しているに過ぎず、部分的な価値を提供しているにすぎない例が多い。B2B、B2Cに限らず、特に日本企業においてこの傾向が顕著である。

部分的な価値しか提供していないということは、いいかえれば、自社の製品・サービスは、完全価値となりうる可能性を持っているにすぎないもの、いわば「価値可能態」にすぎない発展途上にあるものであるといえる。

たとえばパソコンである。提供側は、完成品で価値そのものと考えていても、享受する側からは環境設定や周辺機器の準備等々、他の膨大な作業やコストが発生するため、「快適な情報環境、作業環境を得たい」といった顧客価値の観点からは、部分的な価値、すなわち価値になる可能性のあるもの(=価値可能態)に過ぎない。

翻って、GE(ゼネラル・エレクトリック社)から街の電気屋さんまで、高付加価値による高い利益率を達成している企業はほぼ例外なく、自社の価値可能体を顧客側から見直し、高度化・インテリジェント化する取り組みを行っている。つまり、価値を完成に近づけるための取り組みとして、「顧客の視点」のうち、特に生産性や経済性、快適性、リスク低減という観点から、しっかりと価値の体系化・仕組み化・システム化を行い、顧客に対応する体制を構築しているのである。

「いや、自社の製品には満足してもらっている」「わが社のサービスへの不満など聞いたことはない」という反論もあるだろう。しかし、日本の消費者やユーザーの特徴として、「今後のことも考えて」あからさまにクレームを言うことは少ないものである。また、長年付き合いがあるから言いにくいということもあるだろう。

しかし、最近とみに増えてきているのは、消費者やユーザー自身が「何が足りていないか、どのような対応をして欲しいか」を明確に説明できないケースである。

よい例が、たとえば、iPodとiTunesをコアとした「音楽ライフの新しい生態系を提供するサービス」である。世の中にまったく存在しなかったこのような体系を、だれが「新しい音楽ツールとソフトウェアを中心にした音楽配信システム環境が欲しい」と事前に説明できただろうか。


















 そこで、これをどういう方向で考え、どういった活動を行っていきながら探りを入れていくかがポイントとなる。

具体的には、顧客からみた完成価値に接近するための方向性が2つある。


1つ目は製品・サービスそれ自体を高度化(必ずしも高機能化ではない)し、顧客から見た完成価値に近づけること。

2つ目は価値可能態に補完的価値やサービス的価値を付加し、価値の体系化をもって顧客のニーズを充足させる方法を考えること。


いうまでもなくこの2つに共通して求められるのが、顧客の潜在的・本質的なニーズを想像力豊かに構想し、しかも、ポイントとなる要素については特にデリケートなレベルで把握しながら、それらを新たな価値へと編成し直す能力である。

(上記2つの具体的なデザイン方法については、別のコラムで述べる)

このようなことをいうと、必ず「顧客ニーズの調査なら、日々の営業やCS(カスタマー・サーベイ)等でやっている」との声が出てくる。しかし、製品・サービスを売らんかなの姿勢で行われるこれらの営業トークや、顧客に経済的なメリットがもたらされないCS活動では、残念ながら本質的なニーズはつかめないことが多い。

(ソリューション営業などという言葉が使われて久しいが、いまだにこれを実現出来ていない企業が多いのは、ひとことでいって、これらのサービスを「おまけ」のレベル=稚拙なレベルでしか実施できていないからである)

ましてや、複雑な産業用機械やプラント設備、ファクトリーオートメーションなどのB2Bビジネスでは、個別性や独自性も高く、顧客自身もどのような「解」が適切なのかが不明確なケースが多いゆえ、とてもCSを実施する程度の取り組みではつかめないのである。


 こうしたサービスは、いわば「問診」などの手法を用いて体系的かつシステマティックに情報収集を行い、経済性や生産性に対するインパクトを把握し、一方で想像力や構想力豊かに頭を働かせながら見えない価値体系の設計にまでつなげることができなければ、とても実現できない。。

この能力を獲得するための1つの近道として、相手の懐に入り込んだ問診、診断を行い、顧客とともに問題点を考え、顧客の問題点を真に解決することを志向する活動、すなわち「コンサルティング(問題解決)機能」を導入するのが、現時点ではもっとも現実的な取り組みである。

ただし、繰り返しとなるが、そのコンサルティングは、製品を売るためのおまけや付随サービスのような位置づけであってはならない。ひとつの目安として、コンサルティングのアウトプットそれ自体に対して、顧客が(少なくとも一定額の)お金を払おうという気になってもらえることが最低の基準である。

これには、緻密でシステマティックなアプローチはもちろんのこと、組織全体の発想の転換が求められる。顧客の経済性、効率化、生産性の向上、はては業績の向上に対し、どのように、どれだけ貢献できるのか、といった説明がしっかりできるチームや体制、組織カルチャを再構築しなければならないのである。

(特にB2Bでは継続的かつ安定した顧客対応が求められるゆえ、“一発芸”で終わらせないための企業カルチャづくりがポイントとなる)

こうした取り組みは、もちろん簡単なことではない。しかし、日々丹念に、適切なやり方をもって検証と改善を積み重ね、「顧客とともに価値をつくりあげる」といった「共創」の視点をしっかりと共有しながらお客さまに対峙することにより、必ず道は開けてくるものである。

いま一度、自社の事業構造や一連の活動をとらえ直し、価値可能態の提供にとどまっていないかを冷静に見直し、自社の本業やコア事業の進化につなげていってほしいと思う。



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2010年04月29日

◆リーダーの役割とは?ベッツィ・サンダースの主張を考える




                     ※リーダーの役割は、スキルや技術を超えたところにあるのか?



 リーダーの役割をたった1つだけあげるとしたら、それは「ビジョンを示し、皆を統率してそこへ導いていくこと」であろう。

以下は、ベッツィ・サンダース氏がのべているリーダーシップ論を集約したものである。よく見ると、MBAプログラムなどで学ぶ手法・技法のほとんどすべてが、これらの5つを効率的または効果的に実現させるための手段にすぎないことがわかる。

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 リーダーシップの能力とは・・・
 
  ◆人を駆り立てるビジョンを創造する
  
  ◆そのビジョンを現実のものとする

  ◆ほかの人とそのビジョンを共有して巻き込む
  
  ◆ビジョンを立証する
  
  ◆ビジョンを更新する

 YOUR PLEASURE IS MY PLEASURE The moment fabled service is born
                          BETSY SANDERS 2000
(ベッツィ・サンダース:
 「お客さまの喜びは、私の喜び~伝説のサービスが生まれる瞬間」より)
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言いかえれば、これらがあらゆる事業経営行為の体系の最上位に位置することになる。MBA的手法を学んでいなくても事業を成功させる経営者がたくさんいるのは、こうした最上位の行為=もっとも重要な行為、にそって四六時中考え、実践し、しかも何年にもわたってそうしたパワーや思考回路を持続できているからではないだろうか?


 たとえばドトールコーヒーの鳥羽氏、雪国まいたけの大平氏、スターバックスのハワード・シュルツ氏、ガリバーインターナショナルの羽鳥氏。

彼らは「稀代の経営者」と言って差し支えないと思うが、直接お話した感触などから述べると、経営理論・手法・技法の知識が決して豊富にあったわけではなく(今もそんなにあるわけではない?)、事業のスタート時点では「普通のおじさん」であったと思う。

シュルツ氏などは貧しいブルーカラーの家庭に生まれ、貧民街で育ち、ギリギリの奨学金で入れる大学にしか進学できなかったという経歴を持つ。大平氏にいたっては、最終学歴は中学卒業で、少なくとも経営理論や手法・技法を体系的にじっくり学ぶという環境にはまったくなかったという。


 ただ、普通のおじさんと決定的に違う彼らの特徴は、執念ともいえる夢やビジョンを持ち、途中であきらめることなくその実現にチャレンジし続けてきたことである。

私自身、かつてさまざまな手法を駆使しながら経営戦略コンサルタントとして仕事を行い、現在も、主体的な立場(経営者の一員)として企業再生などに取り組んでいるが、一貫して感じるのは、彼らのような姿勢を持ち続け、周囲を巻き込み、より上位を目指して気持ちを高めていくことのむずかしさである。

少なくとも、事業に対する最終責任を負い、数年にわたって自らが事業を牽引するという立場にあるとき、戦略コンサルタントの手法やMBA的な経営技法の難易度が、これより上にくることは決してなかった。


 戦略立案手法やファイナンス、市場分析等々のスキルは、お金を出して勉強すればほとんどの人が修得できる。しかも、それらのメニューは豊富で、より取り見取りである。

一方で、夢やビジョンを心の底から信じ、それを目指して日々格闘できる人間になるための汎用的な理論については、基本的なわく組みすら発見されていないように思う。

つまり、成功は、いまだにお金(だけ)では買えないものであり続けているということであろう。そして「考え続け、チャレンジし続ける」という、容易ではない行為を熱意をもって継続すること、これが事業成功の条件あるいは秘訣であるという事実は、時代を越えてもまったく変わっていないのだろう。


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2010年04月24日

◆割れ窓理論と永守会長~劇的なアプローチの本質を考える



              ※実は足もとに答えがある?犯罪率の改善・街の浄化や
                破たん寸前の企業の救済に劇的な効果を発揮したとされる割れ窓理論




 ブロークン・ウインドウズ(割れ窓)理論という、環境改善のための考え方がある。

成功例に、ニューヨーク市の、地下鉄をはじめとした都市環境や犯罪率の劇的な改善例があることはよく知られている。1990年を頂点として、同市における殺人事件は3分の2も減少し、重罪事件は半分、地下鉄での重罪事件の発生は75%も少なくなったというものだ。

日本にも同様の事例がある。

「2001年に北海道警の札幌中央署が割れ窓理論を採用し、すすきの環境浄化総合対策として犯罪対策を行った。(中略)駐車違反を徹底的に取り締まる事で路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少、(中略)2年間で犯罪を15%減少させることができた」という。(『Wikipedia』より)


割れ窓理論のアプローチは単純かつ地味である。

落書きや違法チラシなどの軽微な犯罪をしつこく徹底的に取り締る、といったアナログ的な対応をねばりづよく続ける。落書きが書かれてもすぐに消すことを徹底して繰り返し、軽微な犯罪にも絶対に妥協せず、それらが起こらなくなるまで断固とした姿勢で取り締まりを続ける。たったこれだけである。


 落書きしたり犯罪を引き起こしてしまう人たちの多くは、生まれつきそのような行為に走る資質や悪意を持った人たちではなく、むしろ、周囲の環境に敏感に反応し、その環境に影響されて事におよんでしまうという。

これは、目に見える環境の悪さがある種のメッセージとなり、それが自然に人々の心に潜在的な意識をうえつけてしまうということであり、この意識を変えるためには、(抽象論や精神論などではなく)同様に、目に見える具体的なかたちで直接的に意識にうったえかける方法が有効、ということだと考えられる。


 会社再建の名人である、日本電産の永守会長も、同様の考えかたを実践して成果をあげている。

いわく、「やることは二つしかない。一つは6S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ・作法)。職場をキレイにさせること。もう一つは出勤率。休まずに会社に来させること。これらを徹底してやらせることにより、会社は必ず改善する」

事実、このやり方を適用したコパル社(現日本電産コパル)やトーソク社(現日本電産トーソク)は、それまでの長期低迷がうそのように黒字化している。両社は十数年ぶりに過去最高益を更新するか、またはそれに近いかたちで見事な再生を果たしているのである。

これらの事例は、確実に成果をねらうためには、目に見えるメッセージを、一貫性と継続性を持って発信しそれを意識に植えつける取り組み、およびルール違反を犯す者に対しては断固たる姿勢でのぞむ姿勢が不可欠であることを示唆している。

この裏側には、いくら立派なビジョンや戦略を提示しても、それを迅速かつ徹底して実行させるための「意識改革」「行動変革」がともなわないかぎり絵にかいたモチで終わってしまうという、経営者ならではの実戦的な考え方がある。

 
 きびしい経営環境が続く中、もはや打ち手はないように思える。確かに、大きな業績改善や販売機会の開拓はむずかしいと思う。

しかし、たとえば組織の軽量化、ムダの削減、業務プロセスの効率化など、身のまわり(組織内部)のことに関しては、大がかりな手法や理論を導入せずとも、だれもが取り組めるであろう6Sや割れ窓理論を適用するだけで、一定の成果が得られる可能性があることも忘れてはならない。

整理・整頓というと、「なんだそんなことか」とナメてかかる人がいるが、身の回りの整理・整頓や情報の整理・整頓は、「時間の使い方の整理・整頓」につながるゆえ、効率的かつ効果的なワークフロー(業務プロセス)の形成にもっとも影響をあたえる要因の1つと成り得る可能性があるのだ。

(ちなみに、営業拠点や工場の統廃合による再配置、調達先の再編成などは、戦略レベルの整理・整頓である。これがビジネスの大きなフロー・プロセスに多大な影響を与えることは論をまたないであろう)


 徹底する気さえあれば、確実に改善効果は得られる。組織の沈没を多少なりとも先のばしにしてくれるくらいの成果が得られることは覚えておきたいものである。


○参照:
  「プラウドフット・ジャパン社WEBページ」 2006年
  『壊れ窓理論の経営学』 マイケル・レヴィン 光文社 2006年
  『日経ビジネス 逆境を乗り越える経営』日経BP  2008年
  「カンブリア宮殿 日本電産・永守会長出演回」 テレビ東京 2009年


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2010年04月20日

◆真の事業進化とは?「プロフィットゾーン経営戦略」の誤びゅう



 「プロフィットゾーン経営戦略」という理論がある。「ザ・プロフィット」という書籍で一躍有名になった、マーサー・マネジメント社のコンサルタントであるエイドリアン・J・スライウォツキーが提唱する、利益獲得の戦略を新しい視点から解き明かした、とされる理論だ。

 概要を簡単に述べよう。

 ある企業がいちばん稼げる領域、すなわち「プロフィットゾーン」は、市場や製品・サービスの成熟化・コモディティ化と同時に他の領域へと移動をはじめる。よって、動き出したプロフィットゾーンの範囲と方向を見定め、新しいゾーン、または将来到達すると考えられるゾーンを推定し、自社の利益モデル(ビジネスモデル)を再構築(実質的には拡張)せよ、というのがこの戦略の骨子である。

 これを宅配便のケースに置き換えてくわしく考えてみよう。

 黎明期や揺籃期の市場においては、ある会社の宅配便サービスは、主だった競合がいない状態である。その時点では単純配送サービスの需要が高いので、取扱店のネットワークを拡大するなどして、まさに「単純配送サービスそのものの量的確保」に戦略をフォーカスすればよい。すなわちプロフィットゾーンは自社が現在取り組んでいる領域であり、当面はここでの需要の獲得に集中すべきである。

しかし、市場の成熟度が進むにつれて、さまざまな競合が現れ、価格や配送スピードなど比較的取り組みやすい軸での競争が次第に激しくなる。すると、単純配送サービスの利幅が徐々に圧迫されてくる。そうなると、プロフィットゾーンは、次の「落ち着き先」を求めて、まるで逃げ水のように動き出す。

ビジネスプロセス(流れ)という軸でいえば、川上にある、「家庭への個別集荷サービス」や、川下に位置する「遠隔地への配送サービス、時間指定配達サービス」などの、よりハイレベルな領域を目指して移動をはじめる。また、ビジネスの幅や深さでいえば、クール便やゴルフ便など、取りあつかい種類の多様化、といった領域に移っていく。

それゆえ、プロフィットゾーンを追いかけるか、あるいは先回りするかして事業領域を拡大し、新しいゾーンをカバーする活動を行え、というのがこの戦略理論の主旨である。そしてこれを、コカ・コーラやGE、マイクロソフトなどの豊富な事例を用いて説明しようとしている。

結論から言おう。

こうしたスライウォツキーの一連の観察は、残念ながら事業活動の一面のみをとらえているに過ぎない。企業の内部で行われている、本質的な意図からくる情報の循環や活動は捕捉されておらず、重要な戦略要素を見抜けていないのである。

たしかにスライウォツキーが指摘するように、前述の企業群を観察した場合、各社ともに、他の事業領域を追いかけるように拡張しているように見えるため、観察による描写としては正しい。

しかし、「儲かる分野(プロフィットゾーン)を追いかけての事業の拡大」という一面的な現象に目をうばわれてしまっており、その背後にある、「既存コア事業のさらなる強化・充実・イノベーション」という、これらの企業群がほんとうに意図する重要な視点を見落としてしまっているのである。


 以下、これについて説明しよう。

事例の企業群が新しい周辺事業領域へ踏み出している理由は、単に、積みあげ式に利益を得たいからだけではない。

むしろ、既存事業に関連するコンサルティングやカスタマーサポート、代理店パートナーとの提携などといった領域に「お金が取れるかたち」で進出することによって、自社製品に関する精度の高いニーズやデリケートなアイデア、顧客の深層心理からくる情報などを収集し、従来からのコア事業(もともとのプロフィットゾーン)へそれらを還流・融合させようとしているのである。

そして、最終的に製品やサービス・コア技術を進化させ、何らかのイノベーションを引き起こそうとしているのだ。

そのうえで、ふたたび、コンサルティングやカスタマサポートなどの周辺サービスをもそれに合わせて高度化・精緻化し、顧客のさらに高度化していくニーズの掘り起こしや新たな市場セグメント、チャレンジが必要な上位の顧客層へとアプローチしてゆく。

このような「コア事業(自社の得意分野)のたゆまぬ進化をはかるための好循環」を自社にビルトインしようとする意図がひそんでいるのである。


 新しいプロフィットゾーンへの進出は、「物理的に(目に見える)」新しい領域へ事業を拡大することだけを意味するものではない。既存の製品・サービス・技術などに対して「顧客の斬新な意見や異質な視点をぶつけて既存事業の再定義をはかる」といった、「新しい思考・行動形態」あるいは「自社内部における新しい情報循環構造の構築」という領域への進出をも意味しているのだ。

そして、経営資源に制約がある多くの企業にとっては、むしろこちらのアプローチが効果的であり、着実に本業の強化をねらえるのである。


 さらに噛み砕いて補足すると、メンテナンス・サービスやカスタマーサポートなどは、利益を稼ぐためだけのものでは決してないことは、特に産業用ロボットや生産設備、プラントエンジニアリングなどの精密機械や複雑な機器を扱う業界ではよく知られている。

つまり、単なる「おまけ」としてのサービスに留めるのではなく、それ自体で「お金がもらえるレベル」のサービスにまで高めていかないと、QCDすべての面において高度なサービスが開発・提供できないばかりか、顧客にパートナ(伴走者)として認めてもらえず、本当に重要な相談や情報を継続的に持ちかけてもらうことが難しくなる。

ゆえに力を入れざるを得ないのであり、また、そのような取り組みをベースにしたソリューションを提供することは、真に顧客の問題解決をするかたちへと近づくので、それだけの厚みのある利益も見込めるのである。

このことは、特にB2Bにおける企業において、サービスマンに、ビジネス感覚をあわせ持つ優秀なエンジニアや開発担当者などをアサインしている企業が少なくないことからも容易に想像できるであろう。


 では、(スライウォツキーが事例として用いている)有名なGEのファイナンス事業はどうなんだ、GEの中ではまったく異質の事業として完結しているではないか、といった意見もあるだろう。確かに同社における金融事業は稼ぎ頭でもあり、一見、同社の製品の開発・販売などとは無関係と思われるむきも少なくないと思う。

しかし、実は、GEのファイナンス事業部も、同社の製品が組み込まれ使用される工場の生産ラインや病院、航空機などのスペック、用いられている技術、設備の経済性、顧客の事業計画・財務状況などを精査することにより、ファイナンススキルを蓄積することはもちろん、同社の製品のR&D部門やマーケティング部門などに重要な情報をフィードバックしているのである。

(本コラムとは異なる解釈で、この様子が、彼の著書『プロフィットゾーン経営戦略』にも描かれている)

ゆえに、自社のコア事業に光るものを持っている企業や体力のない企業が安易にコカ・コーラのような事例を真似ると、逆に、コストや不必要な負荷を背負いこむリスクが高くなることは肝に銘じておきたい。


 利益獲得のための戦略は、決して「物理的に(目に見える)新たな領域へ進出をはかること」だけではない。

とくに変動がはげしくリスクが高い経営環境下では、むしろ「自社の価値に対する新しい見方・考え方」を行い進化の軸を発見することや、そのヒントを得るための「新しい情報循環構造」という領域を開拓することが着実かつ有効な戦略となるのである。



◇参照文献
『プロフィットゾーン経営戦略』エイドリアン・J・スライウォツキー ダイヤモンド社 1999年
『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』エイドリアン・J・スライウォツキー ダイヤモンド社 2001年

『ジャック・ウェルチ わが経営 <上・下> 』ジャック・ウェルチ 日本経済新聞社 2001年
『ジャック・ウェルチのGE革命』ノエル・ティシ 東洋経済新報社 1994年
『思考スピードの経営』   ビル・ゲイツ 日本経済新聞社 1999年



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2010年04月15日

◆会議を問題解決トレーニングの場に変え、生産性を高める方法

 


 デフレの長期化懸念のもと、企業には経費節減の圧力がかかり、やむをえず教育研修費をカットする動きも出ているようである。しかし、教材を購入したり外部機関を導入したりしなくても、社内の機能や仕組みを利用して教育や実戦的な訓練が行える場合も少なくない。

そこで、社内であまりコストをかけずに実践できる、「会議を実戦的なトレーニングの場に変える方法」を紹介したい。


 とかく会議は悪者にされがちである。いわく「会議をやり過ぎると内部志向になりやすい」「会議が長い会社は意志決定のスピードが遅くなる」など。しかし、そのような非効率な会議も、見方を変えると、「日頃入手できない、さまざまな情報や意見が飛び交う場」、あるいは「本音で語られた、雑多な意見や情報が集まってくる場」ととらえることができる。

ゆえに、逆にこの環境をうまく利用すると、問題解決スキルや情報整理&ロジカルライティングなどのスキルを養う格好の場となるのである。


以下、これらを行う方法や手順について順番に述べよう。


 まず「問題解決スキル」の訓練方法について。

 具体的には、訓練対象者に、会議の司会(ファシリテーション)を通じて問題解決を主導するリーダーをつとめさせる。これによって、ある問題の情報や論点を整理し、まとめ、解決へと導くための一連のフェーズを意識して行わせるのである。

たとえば、複数の部門や部署が参加する会議では、1つのアジェンダに対する意見や見解、持っている情報はさまざまなものがある。ゆえに、放っておけば、これらが勝手に飛び交って収拾がつかなくなる。

リーダーには、こうした情報の共通項やポイントを整理し、議論の道筋を見きわめ、検証を行いながら皆が納得する結論へとまとめ上げるスキルが求められるわけだが、これは、いわば問題解決のプロセスそのものであるといえる。

重要なのは、このプロセスを自律的に行い、限られた時間の中で生産的に解決策を導き出すことである。従ってリーダーは、以下のような標準的なフェーズを頭に入れておき、これにそって会議から適切なソリューションが得られるように訓練を繰り返すのである。



【問題解決型会議の基本フェーズ構成】

 ◇リーダーは事前に資料を読み、簡単なシミュレーションを行っておく


 ①解決を目指す問題およびそれに関連する情報を告知し、共有する
      ↓
 ②ブレーンストーミングにより、あらゆる意見・情報・知見等を顕在化させる
      ↓
 ③顕在化した意見や情報から共通する点を抽出し、グループ等に分類する
      ↓
 ④各グループの論点(ロジック)またはコンテクストを簡潔に、
  5W3Hフレームワークをあてて表現し、相互に比較・検討する
      ↓
 ⑤各論点またはコンテクストの的確な部分どうしを融合・結合または再編成し、
  最終的に、再び5W3Hを網羅してバランスよく表現された結論へとまとめ上げる



最初からできる人は多くなく、なかなか上達しない期間もあるだろう。しかし、情報を「顕在化」させ、「分類」し、「分析」し、「抽出したポイントを融合させてまとめ上げる」といった単純なサイクルをしつこく、粘り強く繰り返すだけで、ポイントとなるセンテンスやキーワードを把握するコツは必ずつかめてくる。

また、もともとこの中で使用する5W3Hフレームワーク自体は難解なものではないゆえ、平均的な能力を持つ人であれば、これをあてて論点を整理するスキルも意外に早く上達するものである。3ヶ月も経つと個人の生産性が少なくとも15~20%くらいは高まるゆえ、議事進行がかなりスムーズになってくる。


 次に、2つめの、議事録の作成による「情報整理=ロジカルライティング・スキル」について説明する。

これは、ある程度ロジカルに書くことを強制するフォーマットを設計し、これにそって議事録を記録させることでロジカル・ライティングの技術を身につけさせることを目指すやり方である。

基本的な考え方は、前述した4つのフェーズにそって議論された内容を、やはりこの4つのフェーズにそって記録することになる。ただし、言葉の調子や前後の流れにより内容が判断できる実際の会話と違って、記録(センテンス)を見ただけですべてが理解できるような記述をめざすことがポイントである。

しゃべり言葉をそのまま書くだけでは当該意見が持つ背景や意図、目的、ロジックなどがわかりにくくなる。ゆえに、バランスの取れた記述が求められるのである。

これをしっかりと行うために、記録する内容については、基本的にすべての意見に「5W3Hフレームワーク」をあてがい、常に、議論されている内容を網羅的に把握しながら記録することが求められるわけだが、これを「フォーマットの中に項目を設け、記入を義務付ける」ことにより強制的に整理させるのである。


 ちなみに5W3Hは中学校などで学ぶコンセプトであり、「な~んだ、それだけのことか」と感じる人も多いと思う。しかし、目の前の議論や事象・現象、会話の内容を瞬時に5W3Hを網羅して整理するためには、実はかなり高度な思考能力が必要とされる。

なぜなら、混沌とした会話や事象・現象の中から5W3Hに適合する要素を素早く抽出し、場合によっては自分の言葉に変換し、重複を排除した形で体系的に整理することが求められるからである。

私の経験でも、いきなり会社の事業目的や戦略、あるいは自分の活動や目の前の現象を5W3Hで説明してくれと投げかけて、これを瞬時に整理し、きちんと網羅しながら説明できる人はめったにいない。

しかし、各人がこれを修得したときのメリットは予想外に大きなものとなる。なぜならば、このフレームワークは、いわば「白いご飯」のようなものであり、身の回りの業務から戦略・戦術レベルの活動まで、あらゆる“おかず”(状況)に合う、つまり、あらゆる業務に適用が可能となるからである。

こなれてくると、ほぼ確実に会議やメールのやり取り、報告・連絡・相談などの効率が上がり、生産性が向上する。さらに、個人レベルのみならず、部門や組織レベルで5W3Hが共通の思考フレーム(プロトコル)になってくると、事業全体の生産性が目に見えて高まってくる。


 実際に私は、目の前のビジネスマンたちのしゃべり方や思考能力が急速に向上するのを何度も目の当たりにしているが、この方法は、簡便な方法にもかかわらず、かなりの(脳、あるいは思考回路の)トレーニング効果があると確信している。また、“高尚”なフレームワークやロジカル・シンキングの手法などを学ぶより、即効性も実戦性もはるかに高くなること、絶対に請け合いである。

(ちなみに5W3Hのフレームワークは、たとえば組織構成要素を表したマッキンゼーの7S、戦略分析手法である5フォースやSWOTなどのフレームワークを使いこなす上での前提または基礎となるものである。これらとの関連については別の機会に譲りたい)


 なお、1つだけ注意点を上げるとすれば、5W3Hを機械的に運用しないようにすることが肝要である。5W3Hというと、ご存知のように「いつ、どこで、誰が、何を・・・」といったように狭いあてはめ方をする人が多いが、これをやると「遊び」の部分がなくなりギクシャクしてくる。ゆえに、下記の表ように、When=時間や期間に関係すること、Why=目的や背景・理由に関連すること、といったように、各要素をゆるやかにあてることがコツである。


【5W3Hフレームワーク】
 ※使い方のコツは、それぞれの要素を「ゆるやかにあてる」ことである.

 ・Why  =理由、背景、固有の事情、理念、思想、哲学など.
 ・What =当該事象の内容、モノ、コトなど.
 ・When =時間や期間、時代など.
 ・Where =場所、場、空間(サイバー空間なども含む)、環境、市場、産業、領域など
 ・Who  =関係者、関連部門・部署、関係機関、競合、パートナーなど.

 ・How  =方法、メカニズム(構造)など.
 ・How many =オーダー(ボリューム)、影響度、人員数など.
 ・How much =心理的なものなど目に見えないものを含むあらゆるコストなど.


 一般的に、会議は悪者にされうとまれる存在である。しかし、トレーニングという目的を明確に導入し、実戦性の高い道具(思考のためのフレームワークや記録フォームなど)を用意し、システムとして作りかえるだけで、非常に有効な「教育・訓練手段」になる。

形骸化した会議に刺激を与える起爆剤となり、何よりも(会議の本来の目的である)適切なアウトプットが得られ、正確な情報の共有が成されるようになるのである。

ぜひお試しいただきたい。



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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 12:32Comments(0)実戦的マネジメント手法を考える

2010年04月14日

◆隠れたムダを掘り起こせ!コスト削減と生産性向上の両立方法



           ・・・メールのやり取りや会議に、一体どのくらいのコストを費やしているのだろう?


 先日、「コストダウンをやりたいが、われわれの業界は人材が重要。ゆえに、社員のリストラや人件費のカットはやりたくない。どのあたりに着眼すればその機会が見いだせるか?」というご質問を、ある大手サービス会社の役員の方からいただいた。

 コストダウンというと、多くの方は、人件費や原材料費、水道光熱費や文具といった、いわゆる「目に見えるもの」「量的に把握できるもの」の削減をイメージされる方が多い。

確かにこれらはコストダウンの対象であるが、このたぐいの取り組みは、いわば「イロハのイ」である。

事業組織が行う真のコストダウンは、お客様や取引先、他部門の社員など、他者と「成果を共有する前向きなもの」でなければならない。なぜなら、一方的なコストの転嫁は長続きしないばかりか、(社内外の)パートナーとの関係を悪化させてしまうからである。

 ではどこに目をむけるべきか?

 企業活動のあらゆる業務(トランザクション)には、何かしらの作業プロセスが発生する。たとえば、経理伝票処理のプロセス、eメールによる情報交換・連絡プロセス、営業活動や会議、カスタマーサポートの作業プロセスなど、数え上げればきりがない。これらのうち、お互いの改善効果が高く、(できればお手軽に)取り組みやすい作業プロセスに着目するのである。

 以下、私のクライアントの商談プロセスにおける改善例を紹介しよう。
 (守秘義務上、社名は伏せさせていただく)

 この会社は従業員840人、精密機械の生産システムの製造・販売業で、複雑な装置の組み合わせによるソリューションをお客さまに提供している。

そのため、営業マン、フィールド・エンジニア、設計技師などが3~4人でチームを組みながら商談を推進するスタイルを取っており、メンバーどうしや顧客の担当者・技術者との緊密な連絡が欠かせない。

結果として、5~7ヶ月におよぶ1回あたりの商談に飛び交うメールがゆうに1000通を超えることになる。

これに着目し、サンプリング調査を行った結果、飛び交うメールの実に35%が、直前にきたメールの欠けていた部分やわかりにくい表記への確認だったり、アポやミーティングの関するものだということがわかった。つまり、「1回でまとめれば発生しなかったメール」が、3割以上を占めていたのである。


 この状況を改善するため、まずは、チームメンバー同士や顧客と共同でミニ・プロジェクトを立ち上げた。

そして、連絡メールや仕様書、契約書の定型フォーマットを複数作成したり、5W3Hを網羅してメールを書く、基本となる業務フローをえがいて各プロセスごとに処理日数を決める、といったルールを設定して、合意のもとに一斉にスタートした。

その結果、3ヶ月後には、飛び交うメールの数が、何と半分以下の約400通にまで激減してしまった。さらに、メール1通の作成に要する時間や、関係する業務の意思決定の時間なども半分以下になり、各商談の効率(時間コスト)が18~20%も改善したのである。

この効果は、単純に、人件費から換算するだけでも、「1商談あたり平均380万円」のコストダウンになったのである。

(ちなみに、商談の効率化がもたらす、在庫回転率や顧客満足度の向上などからくる効果は、これには含まれていない。これらを厳密に賦課した場合、改善効果は500万円を上回るものと思われる)

こういったコストダウンは、いわば「三方良し」ともいうべき「成果共有型」で、しかも、先に述べた「目に見えるもの」のコストダウンを上まわる改善効果が期待できるのだ。


 さらにもうひとつ例をあげよう。

 ある地方銀行で、単なる「報告会」となってしまっている支店長会議にかかっているコストを、会議の準備段階から完了するまでのプロセスで人件費換算したところ、四半期ごとに1000万円近く(!)のコストが発生していた。

(コストを知った頭取が頭から湯気を出して怒り、会議担当の幹部が左遷に近い処分をくらった、という、笑うに笑えない事件もあった)

ただちに、報告ベースで済む情報は事前の共有に切り替えた。同時に、支店長会議としてのあるべきプログラム内容および議事録フォーマットを設計し直し、決議事項や次回への持ち越し事項を明確にし、これらすべてを明確にしないと次回へ進めないような仕組みに切り替えた。

結果、生産性が増したのはいうまでもない。単純な人件費ベースの計算だけで、年間1600万円強の節約が確認されたのである。また、コスト削減のみならず、この人件費を自覚した支店長たちにより、(もとよりまじめな方々が多い銀行だったことも手伝って)毎回のテーマや論点が明確化され、明らかに意志決定のスピードが向上したのである。


 日本企業はコストダウンがうまい、というのが一般的な評価である。しかし、それは目に見える、把握しやすいものを対象にしたときのことである。大きな改善のチャンスは、まだまだ自社内に潜んでいることを、いま一度、企業の方々には、じっくりと考えていただきたい。

繰り返すが、あらゆる業務にはそれを処理する時間がかかり、そこにはプロセスやそれに付随する作業がいくつも発生する。そして必ず無駄やムラなどが出てくる。ゆえに「逆に、効率の悪い組織ほど改善効果が大きくなる」ということを改めて認識し、積極的に改善機会を探り、成果を狙いにいっていただきたいと思う。



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2010年03月09日

◆ホントに問題解決できるのか?従来型ロジカルシンキングの限界




    ※因果ループ図のイメージ ~組織の機能や問題は、いくつもの循環構造が相互作用して動的均衡している.
      出典:Business Dynamics
            -Systems Thinking and Modeling for a Complex World(Sterman, J.D.)



 従来からある思考法のうち、もっとも代表的であり、多くのコンサルティング会社などで使われている手法に「要素還元法」(いわゆるロジカル・シンキングは、ほとんどがこの方法を指している)がある。これは、問題を論理的に階層やプロセスといった任意の軸をベースにして構造化し、分析を行うための代表的な手法であるといわれる 。 

要素還元法の前提にあるのは、ある事象や現象は独立した別個の要素に分解できるものであり、分解した要素のいずれかまたはいくつかに問題が潜んでいる、さらに、その要素を再び組み上げると、ある事象や現象が再現され元通りに機能する、といったものである。

しかし、あらゆる問題が複雑化しソフト化する傾向にある昨今、この方法は大きな問題を見逃すリスクを孕んでいる。まず、分解された要素の相互関連性や全体を薄膜で包み込むような問題が見えにくいという点である。

これは、たとえばエンジンなど、まさにここが独立した要素たる部品を組み上げてつくられた機械などに置き換えて考えると分かりやすい。

要素還元的な考え方では、分解したパーツのどれか、あるいはいくつかが個別の問題を抱えていると考え、これを分解して問題個所を特定しようとする。しかし、たとえばパーツどうしがお互いに影響しあって高熱を発する、あるいはそれぞれの寸法の微妙な誤差が累積して異常な振動が起きる、といった影響に関しては逆に見えにくくなってしまうという欠点がある。

いわば、問題の構造をまさに機械的なメカニズムとしてとらえていることになるわけだが、こうした考え方では問題を構成する要素への個別または積算値への対応以外は不可能となる。つまり、問題Aに対しては対処法A、問題Bに対しては対処法Bといった対応、またはそれらの問題の積み上げへの対応が前提になっている考え方といえる。

ゆえに、もともと、ある構造が全体にわたって保有する問題(たとえば組織カルチャやある種の行動パターンなど)に働きかけるような解決は困難になる。


 これに対して、システムズ・ダイナミクスの領域で提唱される「因果関係のループ構造(Causal Loop Diagrams)」というものがある。この考え方は、対象をひとつの動態的な系としてとらえようとする。

関連するすべての活動(アクティビティ)や事象・現象が連なる連鎖・循環構造を特定し、大元の発生原因を構成する要素すべてに働きかけ、循環構造に変化を起こすことで問題解決を図ろうとするものである。

これらは、現時点では、どちらが優れている、というよりは、状況や対象に応じて使い分けるのが賢明であろう。

たとえば市場の反応や経営・事業戦略レベルにおける活動分析など不透明な要素が多い領域には因果ループ構造分析を、財務比率の分解やリスクの体系的なマネジメント、生産システムの効率化など視認・捕捉しやすい(機械的システムと見なしやすい)領域には要素還元法を、といった具合に使い分けると良いのではないか。

ただし、経営・事業活動はソフト化の度合いをますます強めており、企業の競争優位性もインタンジブル・アセット(目に見えない資産)に依存するようになってきている。ゆえに、生み出される現象や結果は、さまざまな要因が複雑に絡み合ったものとしてできあがるようになってきており、自然科学でいう生態系の様相を呈していること、単純な要素に分解しただけでは、本当の要因や原因がつかめないケースが増えてきていることは頭に入れておきたい。


 ちなみに、企業活動を分析する際、事業体を機械的なシステムととらえるのか、ハード、ソフトが混然一体となった生態系ととらえるのかといった違いが出てくる背景には、その手法を用いる人間や機関のバックグラウンドも関係していると思われる。

前者は主にMBAを多数擁した外資系コンサルティング会社が多用するやり方である。これに対し、後者は(常に臨床実験を持ってその妥当性を検証しようとする)自然科学者のアプローチである。これをさらに一歩踏み込んで表現すると、前者は机上で考えることを容易にする手法であり、後者は事実や実態を(人間の感情などのソフト情報も含めて)知覚・認識できなければ始まらない手法であるといえる。


 繰り返すが、経営・事業活動やビジネス・モデルはますますソフト化・生態系化の様相を強くしている。あらためて問題を機械的・断面図的にとらえようとする「要素還元法」には限界があることを知ると同時に、自然科学的なアプローチにより組織構造をとらえようとするダイナミック(動態的)な思考法の必要性が高まってきていることだけは、しっかりと覚えておきたいものである。



◆参照文献:

Sterman, J.D., Business Dynamics: Systems Thinking and Modeling for a Complex World, McGraw Hill Higher Education, 2000(ジョン・D・スターマン著、小田理一郎・枝廣淳子訳『システム思考―複雑な問題の解決技法―』東洋経済新報社、2009年)

高杉尚孝『問題解決のセオリー―論理的思考・分析からシナリオプランニングまで―』日本経済新聞社、2006年

後正武『意志決定のための分析の技術-最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法』ダイヤモンド社、1999年

イーサン・ラジエル『マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック』英治出版、2002年




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