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ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所の代表、田中です。日比谷のオフィスを拠点に、起業家、経営者に対し、濃密な支援を行っています。いつでもお気軽にコンタクトしてください。              ※詳しい経歴は、カテゴリ(左バー)の「My Profile & 会社概要」をご覧ください。
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2011年04月17日

◆淑徳大学ドラッカー講座開催のお知らせ




   ※下記の要領でドラッカー講座を開催します。ドラッカーに関心のある方はお気軽にお問い合わせください。


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【ドラッカー講座の概要】

日米を代表するグローバル企業において第一線で活躍する人材開発担当者などがリードし、
ドラッカー理論のエッセンスを学びつつ、グローバル時代における新しい知識労働者の
スキルセットやマインドセットを皆さまと一緒に考えていこうという趣旨の講座です。

ぜひ添付のPRチラシをご一読いただき、
お誘い合わせのうえ、お気軽にご参加いただければ幸いです。


●「講座PRチラシ」ダウンロードのページ
 http://jtmt-office.jimdo.com/資料のダウンロード/



********************SHUKUTOKU UNIVERSITY OPENCOLLEGE***********************

公開講座番号B-001


『第一線の実務家と考えよう!

      ~ドラッカーに学ぶ新型知識労働者の姿』



[概 要]
定 員: 50名
時 間: 19時00分~20時30分(すべて火曜日開催)
開催日: 平成23年5月17日(火)、5月31日(火)、6月14日(火)(全3回)
受講料: 9,000円
会 場: 淑徳大学サテライトキャンパス(JR池袋駅東口から徒歩2分)



[ポイント]
◆対象:
 ドラッカーに興味があるすべての社会人、知識労働者をめざす人または関心がある人

◆コンセプト:
 ドラッカー理論の中核にある「知識労働者のあり方とスキルセット」を学び、考察を通じて気づきを得る。

◆特徴:
 1.講座の特徴
  ・理論やコンセプトに加えて、データや事例を用いながら、わかりやすく臨場感をもった講義を行う。
  ・人材開発に第一線で取り組んできたプロの人事マンとのディスカッションやアドバイスの享受が可能。

 2.講師の特性
  ・全員が、世界的に希少なドラッカー教授の公認学術団体「ドラッカー学会」(上田敦生代表)の要職者。
  ・世界で戦う日米のグローバル企業の第一線で、人材育成に取り組んできたプロの人事マン。
  ・知識労働者(企業再生プロフェッショナル)としてすでに機能している。



[講座内容]
 1.第一回:5月17日(火)
  『ドラッカー理論のエッセンスを学ぶ~ドラッカーは実践・行動の人だった』

 2.第二回:5月31日(火)
  『日本社会の人材・組織はどうなっているか
              ~第一線の人事プロフェッショナルと考える』

 3.第三回:6月14日(火)
  『ドラッカー教授の遺志を継ぐ~みんなで考える、新しい知識労働者の姿』




[講師プロフィール]
○花松甲貴 (はなまつ こうき)
株式会社日立製作所情報・通信システム社人事総務本部主任、ドラッカー学会企画委員。
同社の本社・支社にて人材育成・採用、マーケティング企画等を担当ののち、コーポレート・ユニバーシティ((株)日立総合経営研修所)へ出向。セールス/マーケティングを中心とした人材育成プログラムの開発、HR コンサルティング業務を担当。現在、(株)日立製作所情報・通信カンパニー担当として人材育成、ダイバーシティ関連プロジェクトの企画業務に携わる。

○田中 純 (たなか きよし)
ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所代表、ドラッカー学会企画委員。
生産管理システムのエンジニア、大手サービス会社の経営企画、外資・戦略系コンサルティングファームの取締役等を経て2007年より現職。現在は、米国系投資ファンド等が指名するプロフェッショナル経営者として経営破たん企業の再生、および準大手・中堅技術系企業に対する経営戦略コンサルティング業務に従事。経済学修士(大学院経済科学研究科博士前期課程修了)。

○佐々木英明 (ささき ひであき)
エクソンモービル社人事統括部長、ドラッカー学会企画委員。
同社に1980 年入社以来、財務・総合企画、マーケティング部門を歴任。キャリアを通して、プロジェクトファイナンス、キャッシュフロー経営、経営計画策定、企業統合・合併における業務プロセスの変革、国際人事管理などに精通。ロンドン・シンガポール勤務時代には、グローバルオペレーション・プロジェクトに参画。MBA(大学院経営管理研究科修士課程修了)。

*************************************************************************
●本講座へのお申込みページ
 http://ext.shukutoku.ac.jp/course/detail/455/

●公開講座の各種お申込み方法について
 公開講座の資料の請求と申込方法(淑徳大学ホームページ)

●「講座PRチラシ」ダウンロードのページ
 http://jtmt-office.jimdo.com/資料のダウンロード/

●公開講座のお問い合わせ先
 〒171-0022 東京都豊島区南池袋1-26-9 MYT第2 ビル7F「淑徳大学エクステンションセンター」
   TEL: 03-5979-7061  FAX: 03-3988-7470
   E-mail: ext★ccb.shukutoku.ac.jp(★を@に変換してください)


●淑徳大学/池袋サテライトキャンパス地図




ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所
 http://www.jtm-tanaka.com/
 〒105-0003
 東京都港区西新橋1-2-9日比谷セントラルビル14階
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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 10:19Comments(0)2011年:淑徳大学ドラッカー講座のお知らせ

2011年03月17日

◆被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。



※日本国民みんなが、被災された方々を心から心配し、また応援しています。何としてこの危機的状況をしのいで、生き抜いてください! できることは私たちも必ずやります!!


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このたびの東北地方太平洋沖地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
また、同時に、1日も早い復旧、復興をお祈り致します。

しばらくは余震が続くとの報道もあります。
被災者の皆さま、読者の皆さまにおかれましては、どうか充分にお気をつけてお過ごしください。
(2011.3.16記)


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2011年03月14日

◆真の事業計画とは?~旧来型事業計画のあり方を見直そう




※力強く、かつ機動的な軍隊の作戦においては、常に「戦略」と「戦場における実戦の成果」の照合を通じて、戦略をスピーディに修正・高度化させるための作業が行われている.



◆ニュース雑感:

『ANAがJAL上回る、10か月累計旅客実績』
 (2011年3月10日(木)読売新聞) 

 ANAがJALを10か月間の顧客累積実績で上回ったようです。2010年通期でも上回る可能性が大きくなり、もし実現すると、2002年度以降初めてとなるそうです。

 ANAとJALは、日本の代表的な航空会社としてよく引き合いに出されます。しかし、その組織体質や企業カルチャはかなり異なります。JALはまさに官僚体質が蔓延しており、意志決定も遅く、今回の経営破たんにおいても、いまだに懲りていない幹部クラスの社員が大勢いるといわれています。

一方のANAは、10年余りにわたって改革をリードしてきた大橋現会長のスタイルからもうかがえるように、“暴れん坊”といってもいいような人材が幹部クラスにも結構いるなど、さまざまなチャレンジをする体質があります。

あまり知られていませんが、ANAは、2000年頃から、継続して、内部の業務改革やコストダウン(空港業務の改善や無駄な宣伝材料費の削減、空港物流の統合による効率化など)、グローバルネットワーク(スターアライアンス)に焦点を当てた運航体制の整備、人材教育への積極投資なども地道に続けてきているのです。

 今回の逆転劇は、ライバルのJALの失速という理由だけではなく、世界を睨んで組織の内外でさまざまな努力を続けてきたANAの成果が表れ始めている証左だと思います。


○ANAがJAL上回る、10か月累計旅客実績(読売新聞3月10日)


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◆本日のコラム:

 さて、本日のコラムにまいりましょう。

 会合などで知り合った経営者に「事業計画を作っているか」ときくと、みなさん、自信満々に「作っている」と答えます。しかし、その中身を見せてもらうと、たとえば「製品の売上高が毎月10%ずつ増加していく」「コストが毎月数%ずつ下がる」「原価構成が年間を通して安定している」等々、あまり根拠のない数字が並べられていたりします。

また、ファクトと希望的観測が混在していたり、現場がどこに努力を集中するかといった「勘どころ」が不明瞭だったり、肝心の、計画を具現化するための実行計画が欠落していたり、といったものも目立ちます。

要するに、単なる数字合わせや過去の延長線上の経験則を整理し、そこに少し願望を加えただけのようなものが実に多いのです。

こうした計画は、いわば事業計画の皮をかぶった「経験則整理書」「銀行向け説明書」(アスキー創業者・西和彦氏のことば)、あるいは「よき意図の表明」(P.F.ドラッカーのことば)に過ぎないといわねばなりません。すなわち、こうしたものには、事業の可能性をどう掘り起こしていくか、勝ちパターンをどう組織で共有し、利益を積み上げていくか、といった一番肝心な考察が抜け落ちているのです。
(銀行を説得できたとしても、肝心の社員有志に響かない計画書では、本末転倒といわれても仕方ありませんよね)

たしかに、全体の経営数値やタスクを体系的にレビューしたり、過去の経験則を整理したり、という意味においては、項目や数字をズラっと並べた計画書を作ることは必要です。小規模な企業であれば、こうしたものさえ作れば、あとは社長の掛け声ひとつで何とかなるかもしれません。しかし、少なくとも複数の製品系列や事業部を持ち、ある程度の規模を持つ企業は、これを事業計画のすべてとしてはいけません。

戦略的ポイントや勘どころを事業ごと、あるいは各部隊ごとにしっかりと明示し、「どこに活動努力を集中すればよいかが直感的にわかるレベル」「これらを積み重ねると、事業戦略にどう貢献するかが瞬時にわかるレベル」にまでこなれた形で、事業計画書の中に明記することが重要です。

 ちなみに、こうした議論をすると、実務経験に乏しい人に限って「戦略と戦術は分けるべきだ」などと言い始めます。しかし、事前に立てた予測や計画が昔ほどには機能しなくなり、戦略そのものを進化・高度化させながら前進していかなければならない昨今において、それら(戦略と戦術または計画と実行)は、頭で考えるほど明瞭に区分できるものではありません。

つまり、戦略と戦術は常にリンクし同期しながら進めなければならないものとなったのです。具体的に言うと、実行活動は、成果をあげるのはもちろんのこと、戦略をさらに進化・高度化させるための情報収集機能やセンサー、実験的行動の場の役割をも担わなければならなくなったということです。

(★私は、もともと昔から、優れた企業ほど戦略と戦術は、一体のものとして運用されていたと考えていますが、これはまた機会を改めて論じたいと思います)

 機能分担に基づく経営・事業計画や戦略立案手法のほとんどは、過去の右肩上がりの経済環境を背景に考案されたもので、これらは、すでに過去のものになりつつあるのです。

われわれ実務家は、戦略と戦術、あるいは計画と実行は表裏一体のものであり、常に両者が相互作用し、高め合いながら進めるべきものになってきたことを改めて認識しておくべきです。

 惰性や経験則のみで従来スタイルの計画作りに取り組んでいないか、実際に計画と活動実態がかい離していないか、計画はどの程度成果をあげているか、あるいは、経営や実戦の経験がない“専門家”に勧められた方法を妄信していないか等々、経営・事業計画についての考え方をゼロベースで見直してみることを、ぜひともお勧めしたいと思います。



◆PRです!:

 2011年5月、淑徳大学サテライトキャンパスにて、ドラッカーを学ぶ講座『第一線の実務家と考えよう!ドラッカーに学ぶ新型知識労働者の姿』を開催します。詳しくは下記をご覧ください。

 ○「講座PRチラシ ダウンロードのページ」
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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 12:32Comments(0)使える戦略理論を考える

2011年02月14日

◆見えない資産活用戦略~既に上手くやれていることを掘り起こせ




※自社が「すでに上手く行えていること」を応用展開できる空白地帯はまだまだあるかもしれない。


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◆ニュース雑感

『エジプト:政権崩壊、ネットで連帯 新たな民衆革命の姿』
(毎日新聞 2011年2月12日)

 ムバラク大統領が辞任し、30年にわたって維持されてきたエジプトの独裁政権が崩壊しました。

つい先日も、本ブログで「ウィキリークスのジュリアン・アサンジさんが『パンドラの箱』を開けたのではないか」ということを書きましたが、早くもその余波が、具体的な形となって表れてきたようです。

すなわち、かつてないほどのスピードとパワーで、国家権力などの大きな枠組みを揺さぶる、といった大規模な活動が常態化する様相を見せ始めているのです。

 かつては、いわゆる独裁・強権政治体制を維持するために、情報や言論を人々が共有できないようにして、大きなパワーにつながる連携・連帯を阻止する必要がありました。

しかし、国家の制約を(実質的に)受けないネットや携帯電話の普及で、正確な情報が写真や動画などを伴って共有されるようになり、以前と違って格段に人々が連携しやすくなりました。

さらには、各国の政府を慌てさせたウィキリークスやチュニジア政府崩壊などの“成功”事例が積み重なって、人々が、さらにネットのパワーに確信を持ち始めたのが、こうした活動が連鎖する大きな要因の一つになっているのだと思います。

こう考えると、最初に、国家を向こうに回してネットによる言論パワーを行使した(パンドラの箱を開けた)ジュリアン・アサンジ氏にノーベル平和賞を、との声は、あながち突飛な提案とはいえないのかもしれません。


○参照(毎日新聞): エジプト:政権崩壊、ネットで連帯 新たな民衆革命の姿


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◆本日のコラム

 企業の新たな強みとなる可能性を秘めている領域にインタンジブル・アセット=目に見えない資産という領域があります。この議論を行うとき、まず出てくるのがブランド、知的所有権などです。しかし、これらは企業が保有するもののほんの一部にすぎません。

本コラムでは、これらはひとまず置いて、ほかのインタンジブル・アセットに焦点を当てて考えてみましょう。

まずはどのようなものがあるか、思いつくものをざっと並べてみます。


 ◇すでに開通している顧客へのアクセスルート
  (現在、接触が途絶えている顧客へのルートも含む)

 ◇すでに蓄積している各種顧客・市場情報

 ◇ある対象を分析したり管理したりするための体系的なスキル
   -経営データ分析スキル
   -原価管理スキル
   -購買部門の購買スキル
   -顧客管理機能 /その他

 ◇本業をサポートしているような業務スキル
   -物流・サプライチェーン運用スキル
   -カスタマーサポート機能
   -コールセンター運営スキル・ノウハウ
   -メンテナンス・スキル /その他


 これらは、通常は、資産としてとらえられることはありません。なぜなら、自分たちの事業を行うためにしか使われておらず、顧客や市場へ提供していく、といった発想は多くの当事者(当該部門で働く人たち)が持っていないからです。

しかし、実は、これらは「他者から見るとうらやましい得意技」である場合も少なくないのです。そして、現実に、これらを他の機能と組み合わせたり、適用する対象や場所を変えたりすることにより、大きなコストをかけることなく、既存の事業活動を進化・高度化させることが可能になることがあるのです。
  
一例を上げましょう。

ある米国の中堅の薬剤・医療キットの卸・物流会社は、おもに、大手の医療施設に対して、緻密な仕分け&パッケージングを行ったり、細かくジャストインタイムで配送するなど、差別性の高い物流スキル体系を持っていました。

ある日、彼らは気が付きました。この物流ルートは、医療施設の入り口までのもので、その内部にまでは及んでいないことを。そして、自分たちの緻密なスキル体系をその内部にまで拡張できないものかと。

同社はまず、施設内部のモノの流れを精査してみました。すると、医療キットや薬剤の仕分け・トレイに乗せる作業、各部署へ配布する作業を、本来の担当ではない看護師や医療事務員が、1日に何時間も費やして行っていることがわかったのです。

そこで、問題を解消するべく、同社のノウハウを応用して、薬剤や医療キットが最終ユーザーに円滑に届くための「病院内のミニ・サプライチェーン」を設計し、既存の物流サービスに接続して提供し始めました。

その結果、この会社は売上げ・利益率を伸ばし、固定客が増加したのです。

 もうひとつの成功事例をあげましょう。

これは私が実際に行ったある物流サービス企業の例で、以前のコラムでも述べたものです。

この会社は長年、物流の世界に居ますが、最近はお客様からコストを転嫁されるケースが多くなり、収益悪化に苦しんでいました。

しかし、そうした逆境にあったことで鍛えられていたスキルがありました。顧客からの厳しいコスト転嫁に耐えていくために物流管理部門が行っていたコスト分析力が非常に精緻な体系になっていたのです。

そこで、新たに、自社の分析スキルを既存の物流サービスに組み込みました。顧客が製品にかけるコスト配分の妥当性を細かく分析し、それにフィットした物流サービスを設計し提供する、といったスタイルに、自社のサービスを進化させたのです。

その結果、コスト競争力のある物流システムの設計・運用ができる会社として認識され始め、価格転嫁される案件を減らすことに成功しました。

 前述したように、目に見えない資産、というとブランドや知財にばかり目を奪われがちです。しかしこれらの事例が示すように、「すでに上手く行えていること」を掘り起こし、他の機能やスキルと融合させることにより、自社のビジネスを進化させることもできるのです。

多大な投資をしたり、外部のコンサルタント会社などに、他力本願的に解決策を求めたりするまえに、まず、自社組織に正面から向き合い、インタンジブル・アセットを丹念に掘り起こすアプローチをおすすめしたいと思います。




◆PRのコーナー:
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2011年01月26日

◆「林原」破たん~社会機関としての事業体マネジメントを考える




※多彩な事業展開で知られる林原グループ.おそらく当事者である従業員にも、なぜグループが現在のような事業構成になっているかを、社会貢献との関連から簡潔かつ明りょうに語れる人はいなかったのではないか?


             ●          ●          ●


 本日はいきなりコラムに参りましょう。

 トレハロースの開発・製造や「研究開発に目的は必要ない」などの“ユニーク”な経営観で知られる岡山のバイオ関連企業「林原グル-プ」の企業4社が、1000億円の負債を抱えて、事業再生ADR(私的整理の一種)を関連機関に申請していることが明らかになりました。


○記事詳細/毎日新聞:
 『林原:私的整理を申請 負債1000億円、多角化が経営圧迫』
 (毎日新聞 1月26日(水)2時30分配信)


同社は食品バイオの研究からはじまって、美術館の経営、恐竜の化石発掘、チンパンジー(類人猿)の研究、レストラン・ホテルの経営など多彩な事業展開を行っています。そのユニークさで、一時期は、テレビ東京の『カンブリア宮殿』やNHKの教育テレビの題材、研究者による書籍などで盛んに取り上げられていた企業です。

特に、組織づくりや経営観に関しては独特のものがありました。まるで時代に逆行するかのごとく、組織を同族や縁故採用、地元採用で固め、顧客のニーズを考えない、常にオンリー・ワンをめざす、などの方針を打ち出していました。

そんな同社ですが、私が何よりも気になったのは、冒頭にある、最高経営責任者である林原健社長が「研究開発に目的は必要ない」という言葉を、あたかも社是のように発していた、ということです。

もちろん、社員の自由な発想を促すため、過度な利益責任やプレッシャーから解き放つ環境をつくることは重要です。実際にそれが、斬新なアイデアの呼び水となることに異論はありません。

しかし、これを、あたかも社会機関の一部である会社のあり方、あるいは事業経営のやり方のように発信し、現実の事業体にまで、目的や脈絡がわかりにくい事業展開をやらせてしまってはいけません。

やはり、会社という「社会の生態系の中に生きる機関」は、何らかの形で社会に貢献することでしか生かされないという根本的な原理を忘れてはならないのです。

 ドラッカーは特に晩年、(林原のような)知識労働者を擁する会社のあり方を、よくオーケストラに例えていました。

それは「会社という機関は、個人の可能性や強みを存分に引き出し、それを美しいハーモニーになるように組み合わせ、社会に向けてわかりやすく発信していく重要な機能を担っている」という主張です。

これにそって考えれば、おそらく林原氏は、個人に対するマネジメント方法と、社会機関としての組織をマネジメントする方法を混同しているところがあり、それを開発体制のみならず、事業展開のスタイルにまで波及させてしまった部分があったのではないでしょうか。

したがって、財務リストラにとどまらない、根本的な経営の再建をめざすのであれば、このあたりをもう一度きちんと整理し、改めて「社会への貢献」に焦点を当てながら、いま抱えている資源、資産を最大限に生かすための組織や事業グループのあり方、あるいはマネジメント体制のあり方を考えてみる必要があります。

「目的は組織の外にある」とは、これもドラッカーの言葉ですが、目的や存在意義を社会の中に見出せない企業は生き続けることはできないのです。

林原グループには、この不変の原理から目をそらさずに、しっかりと再建の道を歩んでいってほしいと思います。



○記事詳細/毎日新聞:
 『林原:私的整理を申請 負債1000億円、多角化が経営圧迫』
 (毎日新聞 1月26日(水)2時30分配信)


◆PRのコーナー:
 2011年5月、淑徳大学サテライトキャンパスにて、『第一線の実務家と考えよう!ドラッカーに学ぶ新型知識労働者の姿』を開催します。詳しくは下記をご覧ください。

 ○「ドラッカー講座PRチラシ ダウンロードのページ」
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 〒105-0003
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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 14:23Comments(0)使える戦略理論を考える

2011年01月20日

◆「コミュニケーションが組織を強くする」は本当か?




※「ケミストリー(チームワークによる相乗効果)が勝利を生み出すのではなく、勝利がケミストリーを生み出す」とは、NYヤンキース監督時代に地区優勝10回、ワイルドカード獲得2回という実績を持つ名将ジョー・トーリ氏の言葉である。



◆PRのコーナー:

 2011年5月、淑徳大学サテライトキャンパスにて、『第一線の実務家と考えよう!ドラッカーに学ぶ新型知識労働者の姿』を開催します。詳しくは下記をご覧ください。

 ○「ドラッカー講座PRチラシ ダウンロードのページ」
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◆ニュース雑感:

『オムロン次期社長に山田氏 若さ、統率力前面に』
(京都新聞1月18日)

 オムロン(立石電機)に、49歳の社長が誕生しました。執行役員から11人抜きで就任した山田義仁氏は、つい最近まで国内外の第一線でにビジネスをドライブし、競争が厳しい海外事業や販売部門でしっかりと成果を上げてきた人で、何よりも能力と行動力が評価されたのだと思います。

かつてよく見られた、あまり現場には口出しをせず、大きく構えておけばよかった大企業の経営者像とはかなり異なるタイプの人です。筆者は個人的には、同じCOOから社長になったカルロス・ゴーン日産自動車社長や、世界中を駆け巡り、現場で陣頭指揮を執り続けながらIBMを復活へと導いたルイス・ガースナー氏に通じるタイプだと思います。

これからの経営者には、スポーツに例えていえば、プロ野球の監督だった野村克也氏やその愛弟子の古田敦也氏のように、キャッチャーマスクをかぶり、自らも戦いの場に身をおきながら、チーム全体のマネジメントも行っていけるようなタイプが求められるように思います。

別の例に例えると、航空機に乗って上空から全体を俯瞰しながらも、変化の兆しを見つけると、自らがパラシュートを背負い、その場所へ急降下していくようなタイプです。ローソンの新波さんもこのタイプかもしれませんね。
(ちなみに某国産航空会社の会長のような、お膳立てされている現場を行列を従えて視察する、といった行動を指すのではありません。念のため)

 オムロンのこの人事は、変化が激しい昨今、環境変化の兆候を鋭敏に嗅ぎ取る、実戦的な感覚を持った経営者が求められていることの、まさに兆候なのではないでしょうか。

○記事詳細:『オムロン次期社長に山田氏 若さ、統率力前面に』
 http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20110118000019



◆本日のコラム:

 さて、本日のコラムに参りましょう。

コミュニケーションを活性化し、社員のモチベーションを向上させ、丹念に教育・研修を施すなど「社員の活性化」を行えば業績が上がっていく、ということを言う専門家がいますが、これは事実でしょうか。

確かに業績の良い会社は社員が元気です。積極的な議論や創意工夫がなされるなど社員のコミュニケーションやモチベーションが充実しているように見えます。しかし、実際に自らの手で経営を行ってきた者から言わせてもらうと、それは現象的あるいは結果的にそう見えるだけであり、決してそのような状況を先に作ってから業績を上げていったのではありません。

何よりも強い組織となるためには、ずばり「ビジネスに勝利すること」、すなわち目の前の受注件数が増え、売上げや利益を獲得すること以外に方法はないと思います。

すなわち、成果をあげられるスタイルや活動プロセスを確立し、受注を獲得できる武器(製品・サービスなどのバリューパッケージ)を持ち、それを顧客へしっかり移転できる技術を組織のメンバーが習得し、目の前のビジネスを勝ち抜いていくことによってしか実現し得ないのです。

モチベーションやコミュニケーションはどこまでいっても手段や道具にすぎず、少なくともそれだけでは、決して活力を持った組織は持続的なものとはならないのです。

 ちなみに、われわれ企業再生や改革を生業とする者が、破たんして社員の意識がどん底状態にある企業に乗り込んだ場合、財務リストラや資産の売却など、あまり手段を選ばすに、まず何よりも利益の確保を最優先にして行動を開始します。

「後ろ向きな作業やコストダウンをやると、組織のモチベーションが下がり活力が奪われる」などともっともらしいことをいう学者や専門家がいます。

しかし、資産売却だろうが、コスト削減だろうが、ムダな脂肪を取り除いてスリム化し、ガン細胞を切除して、黒字をしっかりと確保することに成功すると、そうした取り組みに一生懸命ついてきた社員たちの顔は明るくなっていきます。多くのケースにおいて学者などがいうようなことは例外なのです。

むしろ、経営破たんの責任を取ろうとしない者へ厳しい対応を取ったり、非効率な資産を思い切って処分したり、生産性の低い業務を削減してしまうなど、ドラッカーがいうところの「体系的な廃棄」を断行するようなやり方に対しては、それを前向きにとらえる人も、確実に増えてきているように感じます。

 「ケミストリー(チームワークの相乗効果)が勝利を生み出すのではなく、勝利がケミストリーを生み出す」とは、メジャーリーグ・NYヤンキース監督時代の12年間で地区優勝10回、ワイルドカード獲得2回という実績を持つ名将ジョー・トーリ氏の言葉です(※)。

これを言い換えれば、必死で勝利を目指す過程(=実戦)で得たものでなければ、それは、決して本物のケミストリー(手段や道具)とはならない、という意味であると思います。

すなわち、トーリ氏の言葉は、あくまでも事業の本分である「ビジネスにおける勝利」を通じて組織力を高めていく、という視点を忘れてはならず、コミュニケーションを良くしたり、モチベーションを高めたりするなどの手段や手法は、あくまでも補助的なものに過ぎない、ということを示唆しているのだと思うのです。


※参照:
 『メジャーリーグ~アメリカ社会を映す鏡』NHKドキュメンタリー、2011年1月放送
 『さらばヤンキース―我が監督時代』
    ジョー・トーリ、トム・ベルデュッチ共著、2009年、貴志社



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2011年01月12日

◆B2Bの事業高度化戦略~人材への割り切りと発想の転換を持て




※事業のコアに集中し、戦略を先鋭化させたい企業の多くは、コア以外の自社のビジネス機能の構築、運営、更新を、自社の戦略を深く理解する専門機関に委ねたいと考えている...



◆PRのコーナー:

 2011年5月、淑徳大学サテライトキャンパスにて、ドラッカーを学ぶ講座『第一線の実務家と考えよう!ドラッカーに学ぶ新型知識労働者の姿』を開催します。詳しくは下記をご覧ください。

 ○「講座PRチラシ ダウンロードのページ」
 http://jtmt-office.jimdo.com/資料のダウンロード/



◆ニュース雑感:

『ブラジル高速鉄道争奪戦 入札延期に望みつなぐ日本』
(ダイヤモンド・オンライン 1月10日[月])

 ほぼ決まりと見られていた韓国のブラジル高速鉄道(TAV)事業の受注が、土壇場で延期になったそうです。

この商談で新幹線システムを売り込んだ日本企業の関係者によると、ブラジル政府が北朝鮮リスクを抱える韓国への40年にわたる長期の運営委託を危ぶんだ面がある、とのことです。しかし一方で、同政府の「買い叩き」ともいえる購買条件の緩和がなされる気配もいまのところないようです。

ゆえに、もし“節約”志向のブラジル政府に韓国のリスクを危ぶむ気持ちが湧いてきたとすれば、それは将来「高くつく」可能性が頭に浮かんできたからかもしれません。

したがって、日本の新幹線システムを売ろうとする企業連合軍は、新幹線システムの長期安全運営ノウハウや実証データを具体的・体系的に提示するのはもちろん、実績に乏しい韓国のそれが持つ潜在リスクコストや、ブラジル政府の甘い事業見積もり・建設リスクも指摘しながら、新幹線のトータルな経済性や安定運営によるコスト優位性をアピールしていくことが、受注の突破口になるのではないでしょうか?

もちろん、こうした高度な分析や提案を体系的に示すことができる優秀な専門家や、それを支える企業連合の惜しみない協力体制があることが前提となるのはいうまでもありませんが。

○記事詳細
『ブラジル高速鉄道争奪戦 入札延期に望みつなぐ日本』


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◆本日のコラム:

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 ロジスティクス(物流)や工業プラント、生産システム、ITインフラ、交通システム事業など、かつて隆盛を誇ってきたB2B(Business To Business)を展開する企業に元気がありません。国際的な展開はもとより、国内においても必ずしも戦績が良くないようです。

その活動を観察したところでは、いまだに技術やハードウェアの説明に拘泥し、「モノ売り」「技術売り」といった「売りたいものが先にありき」の営業スタイルから脱却できていない企業が大半のように思えます。

つまるところ、こうした姿勢は、高度化・複雑化した顧客の経済活動へ貢献するという観点から、自社の製品・サービスを「顧客ビジネスに組み込まれる戦略的な機能」として、同様に高度化・生態系化して提供できていないことによる部分が、少なからずあるように思われます。

ドラッカーは、「マネージャーは他社への貢献に焦点を当てて仕事を組み立てねばならない」と指摘しますが、これは人間のみならず、ビジネス機能や自社のバリュー(製品・サービス体系)にもいえることなのです。

すなわち、物流もITインフラも生産設備や工業プラントなども、「顧客の事業戦略やビジネス力の向上に貢献すること」に焦点を当てて設計・構築されていなければならない、ということです。

では、どのような方法で、こうした高度な事業スキルを自社にビルトインしけば良いのでしょうか?

もちろんカギとなるのは人材です。しかし、新たにこのような事業スキルを構築しようとすると、単に製品特性の説明や技術的なアピール、価格交渉などしか打ち手を持たない従来型の担当者とはまったく異なる人材が必要となります。

つまり、顧客の立場に身を置き、顧客のビジネス戦略に対するインパクトや経済性・コストメリットなどを科学的・体系的に提示することができる、顧客エージェントや事業コンサルタント的な役割を果たすことのできる人材が、少なくとも司令塔部門には必要となるのです。

ここでポイントとなるのは、できるだけ「現在の担当部門にいる人材とは別立てで人材を育成・調達する方向で考える」ことです。

特に物流などの分野で提案・商談活動に従事してきた人は、社の内外からコストを転嫁されたり、購買条件を叩かれたりしてきており、被害者意識を持っている人が少なくありません。

また、酷な言い方ですが、これらの人たちには、顧客への対応スキルが値引き(コスト対応)や御用聞きなどの低レベルなものにとどまっている人が多く、このような担当者を再教育するのはきわめて非効率であり、改革を冗長化させ、失敗に終わらせる確率を高めてしまいます。

結論から言うと、従来型の担当者は定型業務に専念させる、と割り切ったうえで、業務改革や新しい業務スタイルのかじ取り役には、外部や他部門から調達した、これまでとは異なる視点やスキルセットを持つ人材を据えることが、結果的に最も効率的かつ効果的な策となります。

 ちなみに筆者が経営者として企業の再建にあたる場合、この種の改革には、小型のカルロス・ゴーン日産社長よろしく、事業コンサルタント的なスキルを持つ人材を部門長としてヘッドハンティングしたり、経営分析力や戦略鑑定眼を持つ経営企画部門の中堅・若手メンバーを営業の司令塔部門へと転身させたりすることがあります。

特に後者のやり方は、しばしば有効となります。社内でそのような人材を調達する場合、「自社のビジネスや技術力」を熟知しながらも経営やビジネス戦略を分析する視点やスキルを保有しているというメリットがあります。それゆえ、彼らが思い切って活躍できる環境を整えることさえできれば即効性が高くなるのです。

「当該担当者には、その領域における改革はできない」といった言い方があります。これを一歩進めて解釈すると、改革後の仕事はいままでやってきた仕事とは別物である、ゆえに、「最初から新しいスキルセットを持つ人材をキーポジションに据える」といった発想の転換が必要ということです。

また、「6歳の子供に50kgのリュックを背負わせてはならない」といった表現もあります。ドラッカーの言葉ですが、言い換えると、過去の経験則や価値観を背負ったままの改革をやってはいけない、ということです。

 以上のような考え方は、日本型の組織には馴染まないかもしれません。しかし、このやり方は、「誰を最優先に考えて貢献していくのか」を熟考し、それに向けて体制を整える、という、顧客にとってもっとも真摯な施策を実行することに他ならないのです。

そして、このような顧客志向が徹底できる組織だけが、顧客の戦略的パートナーとして、厚い利益率を享受できる、数少ない存在になれるのです。


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2010年12月15日

◆製品「生き物化」の時代~「ものつくり」体制の限界を考える




※多くの製品が生き物のように頭脳を持ち、ネットワークという新しい世界につながって自律的・有機的に活動を始める.

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◆ニュース雑感

『米空軍、新聞サイトも閲覧禁止 ウィキリークス余波で』
 (2010年12月15日CNN)

 CNNによると、ウィキリークスの影響で、米空軍や米国政府機関は、自組織の職員による「ウィキリークス」のサイトや一部の報道機関のサイトへのアクセスを禁止したことを明らかにしたそうです。

国家や政府という枠組みは、イデオロギーという境界線で守られた情報で成り立っています。国家間や一般大衆の間に情報量の格差があると同時に、その枠組みが持つ問題点を合法的に白日のもとにさらす手段がない時代においては、国家による統制が保たれていました。

しかし、グローバル経済の流れがますます加速し、一般市民が、情報が持つパワー(インターネットのパワー)を皮膚感覚で理解したいま、機密漏えいのみならず、国家の枠組みや政府機関が持つ問題点に何らかの是正措置が及ぶまで、情報公開を求める動きは止まらないのではないかと思います。

何故なら、たとえウィキリークスが潰されたとしても、他の誰かが必ずそのあとを継ぐと考えるからです。

ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏は、「終わりなき連鎖」というパンドラの箱を開けてしまったように思えてなりません。

◎記事詳細:
  http://www.cnn.co.jp/usa/30001232.html


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◆本日のコラム

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 メーカーの開発体制に携わっていると、つくづく日本の製造業は「ものつくり」の体質にどっぷりと浸かっていると感じます。

ユビキタス社会、ネットワーク社会の進展で、あらゆるマシンに「頭脳=ソフトウェア」が組み込まれるようになりました。航空機、自動車、交通システム、次世代発電システム等々、製品それ自体の高機能化はもとより、ネットワーク化が急速に進展しており、機能要件は複雑化の一途を辿っています。このような状況に対して、「ものつくり」という考え方では対処しきれなくなってきている事例が目立ち始めました。

にももかかわらず、多くの日本企業は、いまだに、ものつくりの発想から脱することができずに非効率なやり方を繰り返しています。たとえば、わずかなコストダウンのためにソフトウェアの機能評価テスト工数を削ってしまい、かえって製品の信頼性を損ねたり、ハードウェアとのすり合わせによる動作テストを端折って、後工程でトラブルが多発するような状況を作ってしまったりしているのです。

 ご存じのように、製品開発コストの50~70%をソフトウェアの開発コストが占める時代です。一見すると、機体やジェットエンジンなどハードウェア部分が高価に見える最新鋭の旅客航空機(ボーイング777など)の開発も、実はソフトウェアの開発~組込みのためのコストが全体の60%近くを占めています。

ゆえに、物理的な「モノ」つくりの思想に染まった企業から見ると、ブラックボックス的に開発が進められるソフトウェアは、どうしても膨大なコストやムダの塊に見えてしまうのでしょう。部材のコストダウンと同じ発想で、開発作業工数やテストの工数を削減してしまう、あるいはソフト開発チームに必要以上のコスト圧力をかけたりしてしまうのはここら辺に理由があるようです。

 しかし、ズバリ言ってしまいますが、特に高度な機能を実現する組込みソフトウェアを単なる「モノ」や「部品」と考えていては、効率的かつ効果的な開発体制は実現しません。

なぜなら、膨大なソースコードにより発生するバグや相互干渉などの不具合を、終りが見えない中で根気よくケアし続け(※)、場合によっては製品の出荷後もアップデートを図る、といった流動的な対応が必要になるソフトウェア開発には、新種の有機体や生き物を、粘り強く、試行錯誤しながら育てるような開発スキル体系が求められるからです。

(※ある程度高度な機能を持つ製品であれば、ハード部分との整合を図る動作テストや評価作業は1000~3000回におよぶことも珍しくありません)

また、スキルセットのみならず、ソフトウェア開発機能(チームや部署などの機関)の位置づけも考えていかねばなりません。

ほとんどの日本企業においては、いわゆる、ものつくりの思想を根底にして開発プロジェクトや生産体制が組み上げられています。ゆえに、開発体制全体の管理スキルや人材育成方法、人事評価制度もそれが前提となっています。しかし、文化や仕事スタイルの異なる1つの生態系機能を存分に生かすため、それとは別に、ソフトウェア開発独自の価値基準や判断基準、人材の評価基準などを持つ機関を設置し、ものつくりの体制よりも上位か、少なくとも同等に議論できるようなポジションを与えるといった工夫も必要です。

たとえば、そうした機関を開発トップのすぐ下に置き、R&D部門に対して設計を変更させたり、いざというときに開発をストップさせたり、(ある機能をソフトウェアで実現できることが判明した場合)いったん決まったモジュールの採用を取り消したり、キリのないデバッグ作業を終わらせるために、確証的なデータがないまま、あえてGOを出すことを可能にする権限を付与したりすることを考えていかねばなりません。

また、ソフトウェアの組込みリスクを事前に減らすために、ハードウェア領域全体の受け入れ態勢をあらかじめ総合的に診断するルールとシステムをつくるなどの施策も有効になります。

もちろんこれらは「モノ」の開発力を簡略化してしまえ、ということではありません。正しい設計を行い、精巧なパーツを作ったり組み立てたり、部材を最適なQCDバランスで調達したりすることは、もはや必要最低条件に過ぎなくなってしまったということです。

 携帯電話から産業用ロボット、交通システム、医療機器に至るまで、特に社会において重要な役割を担う製品の機能はますます高度化・複雑化しています。加えてネットワーク化の進展により、自動車や住宅、建設機械など、既存の製品群にも高度な頭脳を持つことが要求され始めています。

その一番のカギを握るソフトウェアの開発思想や体制を、(わかったつもりになっているソフト開発者も含めて)改めて深く考え直すと同時に、いちはやく「ものつくり」の思想から上位移行し、「価値づくり=デリケートかつ頼もしい機能・効能づくり」に開発体制の重心を移した企業だけが、これからの熾烈な開発競争に勝ち残っていけるのだと思います。


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2010年12月08日

◆サンデル教授の問いかけ~経済性偏重によって失うものとは




 今年の4月から6月にかけて、ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデル教授の講義(ハーバード白熱教室/NHK教育)がテレビで放送され、その後、続々と著書も発刊されるなどして大変な話題となりました。

現在はその横浜市立大学版が放送中です(次回は12月10日)。2011年1月には大阪大学でも、サンデル教授の講義スタイルを継承した番組が放送される予定だそうで、いまだ興奮冷めやらずといったところでしょうか。

 さて、サンデル教授の講義は、彼が投げかけるテーマに対して、参加する生徒たちが自分の考えを述べ、議論をしながら、考えを深めていく方式で進められます。

たとえば以下のような、判断が容易ではない問いが投げかけられます。


●「あなたはブレーキが壊れた列車の運転をしている。このまま直進すると5人の人を殺してしまう。しかし、ハンドルを切って引き込み線に退避すると、そこで作業をしている1人を轢いてしまうだけで済む。あなたはどうすべきか」

●「船が難破し、漂流している救命ボートに、4人の船員が乗っていた。水も食料も尽きたのち、一人の衰弱した身寄りのない青年を殺し、その血と肉を食料として他の船員たちは生き延びた。彼ら3人は家族を抱えていたので、自分たちがいなくなると経済的に困窮する人数が多くなると判断し、独り身の青年を犠牲にした。彼らの判断は正しかったのか」


判断の是非の議論はさておき、この設問にはどのような意図があるのでしょうか?

察するところ、サンデル教授が送ろうとしているメッセージは、比較的把握が容易な経済合理性の領域と、人間の尊厳や存在意義、命の重さといった、合理的な解釈がきわめて難しい領域の双方を提示し、それらに対峙する姿勢がどうあるべきかについての考えを迫っているように思われます。

これを企業経営にあてはめて考えてみたいと思います。

 事業の経済性は、ご存じように、財務分析や経営環境分析のような定量情報によって判断されます。

あえて言うと、この種の情報による判断はある意味で容易です。また、そうした情報のうち、特に業績やコストの多寡に一喜一憂することは、良くも悪くも没頭しやすい作業でもあります。

さらに、多くの企業が、新たな価値・革新を連続的に創出するというよりは、散発的に生み出した価値を反復・再生産することで事業を行っているため、前述のような作業がルーティン化され、意志決定や活動の是非が、その時点での経済的な判断に偏重して行われるようになっていきます。

先のサンデル教授が投げかける設問の例でいえば、あのような状況が繰り返されるうち、死にかけた少年を助けようとして必死に考えた気持ちや苦しみ抜いた感覚はいつしか薄れていき、人間の尊厳や人命よりも、経済性を優先した判断が当たり前になっていく、ということになると思います。

こうした判断を繰り返し、それ自体が目的化してくると何が起きるか。

まず、市場や顧客に貢献する(ニーズを十分に満たす)ための方策を最優先に考える、というマインドが薄れていきます。そして、価値の創造や品質の充実を図る能力、顧客の課題やニーズを繊細なレベルでとらえる組織的な感度などが減退してしまい、それが原因で、さらに経済性を追い求める体質に染まっていきます。

そして、(ドラッカー流にいえば)「明日を切り拓いていくための仕事」が「過去の確認をするための仕事」に浸食されていき、「毎日忙しく働いている割に儲からない」という体質ができあがっていきます。

以上を、サンデル教授の設問に答える形でまとめるとすれば、何かを選択するということは、必ずその他のものを犠牲にすることになる、ゆえに犠牲になったものは何かということをしっかり把握しながら、自らを律し、次の行動を考えていかねばならない、ということを示唆しているのだと思います。

さらにこれを事業経営の枠組みで(拡大?)解釈するなら、あくまでも市場や顧客への貢献を起点に置き、同時に経済的な選択をし続けることのリスクへもしっかりと対処しながら、バランス良く事業活動を行っていかねばならない、ということを、サンデル教授の講義が教えてくれているような気がするのです。


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2010年12月04日

◆『あんしんLife』12月号にインタビューが掲載されました




※ピーター・F・ドラッカー: 1909年に帝都ウィーンに生まれる。ナチスドイツに追われ、'39年に米国に移住。GMのコンサルタントを引き受けるなど「マネジメントの発明者」との評価を確立。'49年から22年間、ニューヨーク大学教授、'71~'05年に死去するまで、クレアモント大学院ドラッカースクール教授。95年間の生涯で30冊以上の著作を発表。
(『知の巨人-ドラッカー自伝』日経ビジネス人文庫より)

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 25万部の発行部数を誇るビジネス・生活情報誌『あんしんLife12月号』の巻頭特集「顧客創造への新たな挑戦」に、ドラッカー学会企画員として弊社代表田中へのインタビュー記事が掲載されました。

顧客の創造に取り組む企業3社の事例とともに、3ページにわたってインタビューが掲載されています。


ドラッカー学会員のユニクロ棚井正会長の言葉などを引用し、

 ・「中小企業に有効なドラッカーの経営理論~実践してこそ確かな成果を生む」
 ・「ドラッカーは実践・行動の人」
 ・「理論を自分なりに進化させることが重要」

など、他のドラッカー研究者とは一味違った実戦的な観点から、特に中堅・中小事業者向けにドラッカー理論のとらえ方を解説しています。


あんしん財団『あんしんLife』特集「顧客創造への新たな挑戦」(目次のみ)





【無料プレゼントのお知らせ】

先着30名様に、無料で『あんしんLife12月号』を送付させていただきます。
ご希望の方は、下記弊社ホームページのお問い合わせフォームに必要事項をご記入のうえ、「ご相談・お問い合わせ内容」の欄に「あんしんライフ希望」と明記してご送信ください。

なお、雑誌の発送の有無をもって先着順の発表にかえさせていただきますのでご了承ください。

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2010年11月20日

◆巨大なバーチャル空間?~「日本的経営」など存在しなかった




※われわれが生きてきた空間は現実のものではなかった。「Ignorance is bliss.(無知は至極の幸福)」・・・。現実を直視することに耐えられず、バーチャルの世界に戻るために仲間の居場所を密告し、記憶の消去を申し出るサイファー(ジョー・パントリアーノ)。・・・『マトリックス』1999年アメリカ映画より

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◆ニュース雑感:

『事業仕分け「賞味期限切れ」か=財源効果失速、関心も薄く』
(時事ドットコム2010年11月17日)

民主党の売り物である「事業仕分け」に、早くも陰りが見えてきているようです。

以前に仕分けられた事業が、“看板”をかけ換えて生き残ったり、ひどいのになると、さらに予算を積み増して、いわゆる「焼け太り」をする形で残っていたりと、その最終成果は惨憺たるものです。

ひとことで言うと「詰めが甘い」わけですが、事業仕分けをシステムとしてとらえ、適切なプロセスを設計し最後までトラッキングする、といった、民間企業の業務では当たり前の発想も、民主党の仕分け人たちにはまったくないようです。

何よりもコストダウンは、“一発芸”で終わるのではなく、恒常的に行っていくことが重要です。民間では、これをTQCや管理会計システムなどの導入で体質レベルにまで高めようとするわけですが、事業仕分けには、こうしたアイデアは影も形もありません。

民主党議員の主な特徴として、とにかく実務・実戦感覚やマネジメント感覚の大幅な欠如が目立ちます。

少なくともわれわれ企業人は、彼らのパフォーマンスやメディアのスキャンダル的な報道に惑わされることなく、実務者としての冷静な視点から、彼らが継続性のあるしくみやシステムを適切な形で構築しているかを監視し、厳しく指摘していくべきだと思います。

○詳細記事
  http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010111700930

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◆本日のコラム

 さて、本日のコラムに参りましょう。

「日本的経営」という言葉があります。本日は、このテーマについて、思うままに綴ってみたいと思います。

「日本的経営」とは、戦後の高度成長期からバブル崩壊あたりまで行われてきた、日本企業に共通する経営・活動形態をさすようです。その主な構成要素は、一般に、三種の神器といわれた「年功序列型昇進・賃金」「終身雇用」「企業内組合」や「家族主義的経営」「稟議・根回し」などのようです。

まずは、これらが前提に置いていることを整理してみましょう。


〔日本的経営(上記要素)の前提〕
◇事業を発展させる資源として「経験則(年功、年齢)」が最も重要である。
◇たとえ優秀であっても、若い人には高い賃金を払わない(年をとってもほぼ無条件に賃金が上がり、払われ続ける)。
◇能力に乏しくても雇用され続けることが可能である。しかも、一定の賃金は保証される。
◇社員は家族であり、みんな仲良くやることが第一義。また、年長者の言うことは素直に聞かねばならない。
◇皆が納得し、全員で責任を分担すること(稟議、根回し)が、スピーディな意思決定よりも優先される。


 普通に考えてみればわかりますが、このようなやり方が通用する環境はなかなかありません。まさに戦後の復興期や高度成長期くらいしか思いあたりませんよね。

そして、現実に、このような環境が、戦後の一定期間、日本に存在したのです。

さらに、これを支えた要因として、日本語というわれわれしか使わない言語や、四方を海に囲まれているといった物理的な条件が防護壁となりました。加えて、戦後、欧米から基本的なアイデアをすべてタダでもらった、という好条件が重なったこともあって、そうした環境がより強固なのものになったのだと思います。

さらに踏み込んでいえば、マインドが成熟することなく図体だけが大きくなった状態(生産工場や販売チャネルなど手足の部分だけが海外へ拡大した状態)を国際化と呼んでみたり、70~80年代に、現象面を見ただけのアメリカの学者に“Japan as No.1”と誉められたりして、カン違いを加速させたのだと思います。

これは、言い換えれば、戦後のある一時期を切り取って、「日本的経営」と信じ込んでいたということです。つまり、きわめて特殊な環境(保護された環境)の下でしか成立しない経営であり、その実態は「周回遅れ」で欧米の背中を追いかけているに過ぎないのだと思います。

 しかし、こうした話をすると、決まって、かつてのソニーや松下、ホンダはどうなんだ、という話を持ち出す人がいます。

私がまずこのような人に言いたいのは、「盛田昭夫さんや松下幸之助さん、本田宗一郎さんらの個人としての資質と日本的経営なるものを混同してはダメ」ということです。

つまり、彼らのリーダーシップや高い国際感覚、燃えるような情熱などが道を切り拓いていったのであって、日本的経営なるものの枠組みが威力を発揮した、ということではないと思います。

 また、民族性や文化によって経営スタイルが異なり、自由主義経済下においてそれが完全に成立し得るのであれば、さらに民族意識の強い韓国の企業を見てみると、それが妥当な意見かどうかが、少なくともある程度は推測できるでしょう。

たとえば、サムスンやLG電子などを見てみると、日本人を含む多数の外国人を幹部クラスでも採用し、徹底的に現地化を図ろうとしています。その振る舞いには、民族的なこだわりや差別はほとんどありません。実際に話をしてみるとわかりますが、彼らには「韓国的経営」などといった意識もあまりありません。
(成果においてライバル企業を上回る、という意識は逆にスゴイものがありますが)

現実として、韓国企業にヘッドハンティングされた日本人のマネージャーや上級クラスのエンジニアもたくさんいます。そして彼ら彼女らには、むしろ「とんがった、おもしろい仕事ができる」(※)と、活力を取り戻して働いているような人が少なくないのです。

 このことは、韓国以外の国の企業の人と話をしてみてもわかります。

韓国企業と同様、中国的経営、インド的経営、フィンランド的経営などといった発想は、彼の地の企業の人たちにはほとんど感じられません。そこには、たんに自らの市場や顧客に応えていこうとする経営があるだけです。

 厳しいことを言いましたので、いままで述べてきたことを悲観的にとらえたり、不快に感じたりする人がいるかもしれません。しかし、実はこのことは、むしろ、若い起業家や、独自の新しいやり方を追求してみたい、世界の人々に貢献していきたい、と考える多くの人にとっては朗報です。

なぜなら、日本的な慣習やスタイルにとらわれることなく、また、そうしたやり方を押し付けようとする人を気にすることなく、「市場や顧客にどうしたら素晴らしい価値を届けることができるか」、「どうしたらお客さまの役にもっと立てるか」に集中して自由にアイデアを出し、ビジネスを組み立てていけばよいからです。

そして、これまで、前提条件のように考えられていたスタイルや慣習が取り払われるのであれば、逆にエネルギーが湧いてくる人は、実はわれわれの周囲には少なくない、と考えるからです。

 とくに、次世代を担うリーダーや元気のある若い人には、時代の“あだ花”に過ぎない「日本的経営」にとらわれないで欲しいと思います。そして、ドラッカーなどが経営の原点と説く、「顧客の創造」「社会への貢献」に焦点をあわせて、自らの能力を存分に磨いていって欲しいと願うのです。



※『ワールドビジネス・サテライト』テレビ東京系2010年11月13日放送分より.


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2010年11月12日

◆信念と実践の経営を実感~プレジデント社藤原社長との交流から




※2010年11月9日、プレジデント社社長室にて。代表取締役社長の藤原さん(左)と私(右)。13階にある社長室からは都心を一望できます。ちなみに撮影は、いつもすばらしく機転が利く秘書のKさん。
 「写真とろう!」と言いながら、藤原さん、私、Kさんが列をなして社長室になだれ込んでいったので、部屋の机でお仕事をされていたプレジデント編集長の長坂さんがびっくりされていました。お騒がせして申し訳ありませんでした(汗)。
・・・でも、近いうちに、またお邪魔することになりそうです。

                     ●        ●        ●

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 先日、懇意にさせていただいているプレジデント社の藤原昭広社長にお会いしてきました。同社が平河町森タワーという新築のビルに引っ越しされてから初めての訪問です。

 ご存じの方も多いと思いますが、藤原さんは、プレジデント社事業の中核である『プレジデント』誌において、大きな改革を行われた方です。ターゲット層を経営トップからミドルに切り替え、低迷を続けていたかつての誌面を刷新し、ほとんど人員規模を変えないまま、月1回から2回の発刊体制へ移行するといった改革を断行したのです。

以来、出版不況が続くなか、ここ数年、平均して昨年対比110~130%と順調に発行部数をのばしています。いまや、書店やコンビニで真っ先に目にとまる、新時代を代表するビジネス誌に生まれ変わったといっても過言ではないでしょう。

 本日は、この改革を成し遂げ、いまだに進化を続ける組織を率いる経営者としての藤原さんの話をしましょう。

藤原さんの特徴を簡潔に言うと、とにかく、ブレがない経営者であり、他に見当たらないタイプの経営者である、という表現がピッタリくると思います。

いつも話をしていて感じるのは、自らがやるべきミッションを明確に理解されていること、それを、いついかなるときも、わかりやすくストレートな言葉で語られることです。

しかし、いろいろな施策について話を聞いてみると、非常に多彩な面を持ち合わせていることもわかります。驚くほど緻密な面を持っているかと思えば、中小企業の親父さんのようにざっくばらんな面もあり、欧米のらつ腕CEOに勝るとも劣らないドライな一面を見せることもある、といった感じです。

つまり、ミッションや信念についてはブレるところがないが、それを実践するためのスタイルは、柔軟で、とらわれることなく自在に変化するということなのです。

 そのような藤原さんが改革時に打ち出したプレジデント誌のミッションは、「優れた経営者を作り、世に送り出すこと」という、実にストレートで力強いものでした。

もちろん、単にミッションを打ち出すだけで、厳しいメディア世界の競争を乗り切れるわけではありません。

特にプレジデント社の場合、同誌以外にもdancyuやALBA、プレジデントFamilyなど、それぞれターゲットが異なる雑誌をいくつも発行しており、誌面づくりやマーケティングの方法も違う、といった複雑性を抱えています。しかも、こうした異なる活動を、100名に満たない社員でこなさなければなりません。

しかし、それにもかかわらず、人員拡大をほとんどすることなく、同社は、前述したミッションのもと、着実な進化・多様化を続けています。

あまり知られていませんが、プレジデント社の本質は、緻密なデータベース・マーケティングや高度な情報解析力を持つ、科学的なアプローチを得意とする会社です。通常、こうした組織が異なる事業をいくつも抱えると、能力が分散したり、逆に(分析力があるゆえに)リスクを取らずに硬直化したりするものなのですが、この会社はまったく違うようです。

 なぜ、このような事業展開ができているのでしょう?

その秘密を解き明かすヒントは、藤原さんの経営姿勢、すなわち、明確な事業ドメインと目標の設定力、そして日々の行動・思考形態にあるように思えます。

つまり、藤原さん自身が、ホンモノの迫力をもったメッセージを組織の隅々にまで届けるメッセンジャーであり、チャレンジを実践するロールモデルの役割を日々、果たしていると考えられます。

さらには、藤原さんが体現する、とらわれない柔軟な思考スタイルが、これも社員にとって、明確なメンタルモデルとなって、日々影響を与えていることは間違いないでしょう。

それゆえ、社員の皆さんは、膨大な情報を分析したり、新しい企画にチャレンジしたりしても、目標を見失うことなく、また、硬くなることもなく、のびのびと前に進むことができているのだと思います。

 さらに、これらに加えて私が特筆したいのは、藤原さんの「その後」です。

確かに、改革を断行し、業績をV字回復させた手腕は素晴らしいと思います。たとえば、日本の経営者に対してきびしい大前研一さんも、高い評価をされているようです。しかし私はむしろ、それを成し遂げたあとの姿勢に、藤原さんの非凡さを感じるのです。

一連の改革を通して名が知られるようになった藤原さんには、TBSの報道番組のコメンテーターの仕事が舞い込むなど、引っ張りだこになった時期がありました。しかし、自分が有名になることで、社内に依存心が生まれ、次世代を担う人材が育ちにくくなると察するや、すぐにそうした活動からキッパリと身を引きました。

(昨年、私に面と向かって「自分が前に出過ぎるのは良くないと判断し、すぐに辞めた」とサラッと言われました)

さらには、小さなことかもしれませんが、今回のオフィス移転にもその姿勢を垣間見ることができます。

業績が伸びると、瀟洒なオフィスに借り替えて悦に入っているような経営者が多いなか、藤原さんは、さらなるオフィススペースのムダの削減と充実をはかりました。同時に、現在の不動産不況をうまく利用して、賃貸コストの大幅な削減も実現されたのです。

しかも、コストを節約できたことを、実に嬉しそうに、また、楽しそうに語られます。

つまり、復活を成し遂げた今も、まったくブレることがないばかりか、以前にもまして、経営のあるべき姿や社会への貢献を希求される姿勢を強めているのです。

これは、並の人間にできることではありません。

そして、社員の皆さんは、この姿をしっかりと見ているのです。

志とか理念、社会貢献など、美麗字句を発するのはたやすいことです。しかし、365日それを体現し、成功をおさめたあとも、さらに一歩も二歩も踏み込んでドライブをかけ、自社のミッションを追求していこうとする経営者やリーダーは決して多くありません。

景気が悪い、政治が悪い、などといった他責の言葉をよく聞きますが、藤原さんにお会いするたび、「ブレることなく経営努力を尽くしている」と言い切れる経営者が、この日本にいったい何人いるのかと考えさせられてしまいます。

(ちなみに、私はお会いするたびに親しく会話をさせていただいていますが、藤原さんの口から、悲観論めいた話を一度も聞いたことがありません)

同時に、企業再生のプロ経営者を標榜する自分を鑑みて、大いに身が引き締まる思いがするのです。

 私にとって、この日は、信念を持ち、真摯にそれを実践していくことの大切さを、社員の皆さんの生き生きとした姿を見ながら、改めて深く心に刻んだ一日となりました。


  ※本コラムは、藤原昭広社長ご本人に掲載をご快諾いただいております。


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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 08:30Comments(0)戦略請負人のつれづれ日記

2010年11月08日

◆ものつくり思想の弊害~日本企業が進化・高度化できない理由




※われわれは、いまだにこの世界から卒業できていない?・・・映画『モダンタイムス』(チャーリー・チャップリン主演・監督・製作・脚本・作曲、1936年アメリカ映画)より.


                ●          ●          ●


『村上龍さんが電子書籍の新会社』
(2010年11月5日 読売新聞)

作家の村上龍さんが、電子書籍を販売する新会社を設立されました。

村上氏自身が経営に携わるのだとすれば、当面はネームバリューや当事者感覚を生かした出版活動が強みになると思います。しかし、電子書籍ビジネスには、これといった障壁が存在しないため、おそらく参入してくる企業が相次ぐと思われます。そうした状況で、村上氏には、作家の立場にとらわれないビジネスライクな意思決定ができるかが問われることになるでしょう。

また、新会社は、グリオという企画会社との合弁で作られていますが、もし村上氏の参画なしでは設立はなかったとしたら、グリオの人たちが、企画の専門家の立場から、彼に対して率直な意見を言えるかどうかも課題になると思います。

さらには、今後、電子書籍に映像や音声などの要素が入ってくることも考えられ、書籍や文筆の世界とは異なる構想力や人材ネットワークの運営が求められるかもしれません。

村上氏の名声や経験が吉と出るか凶と出るか、動向を見守りたいと思います。

○記事詳細
 http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20101105-OYT8T00539.htm


                ●          ●          ●


 さて、本日のコラムに参りましょう。

 日本では、高い収益性を確保できる高付加価値型サービスがなかなか生まれません。

たとえば、昨今の、海外における交通インフラや開発途上国における水処理・循環インフラ、ITインフラ、資産の安定運用、特許戦略など、「顧客の問題解決や成功を支援するための解決策を提供する」という重要な分野で、なかなか高付加価値型のサービス・スタイルが確立されません。

それどころか、確実に消費品質(消費する人にとって真に必要な機能が備わっている、という意味の品質)を押さえた韓国や中国のメーカーに、お家芸である家電製品や自動車の領域まで脅かされつつあります。

参考コラム:『競争は戦略の目的ではない【大前研一】』

 なぜこのようなことが起こっているのでしょうか?

 いわゆる「ものつくり」を行う製造業は、すべてのビジネスシステム(開発~生産~チャネル~販売etc...)を組み上げ、それを固定化し、モノを反復的に生産・販売します。そして市場が成熟した後は、ビジネスシステム全体の効率化やコストダウンを全社的に図っていくというのがパターンとなっています。

一方で、効能や効果を提供する高付加価値型サービスは、それを提供する者が、「インタラクションを通じて顧客と価値を共創する」ことになります。ゆえに、高度な情報収集活動や最適な意思決定など質の高い対応を、常に自律的判断に基づいて行うことが求められます。従って、そこには、効率化や自分のパターンを押し付ける、といった論理はありません。

このことを理解せずに、「ものつくり」的な経験しかない人間や事業体がサービス・マネジメントをやろうとすると、どうしても最初から、いわゆるマニュアル管理的・工業生産的なアプローチになってしまいます。

確かにマクドナルドなどの飲食サービスや事務手続き代行、単品販売などの業界においては、そのような形の“サービス”で良いのかもしれません。

しかし、これらは、本質的に工業的発想による大量生産品であり、大きな付加価値を生み出すものではありません。その多くは提供者側の論理、すなわち効率性やコストを重視した形で設計されており、そこには、個別性や例外への対応を最重要視する、といった発想はあまりありません。

(こうした姿勢は、実は「ものつくり」そのものにも影響を与えますが、今回は省略します)

翻って、顧客の成功や問題解決を支援する高度なサービス、たとえば生活インフラやITインフラなど複合的なシステムを、固有の文化を持つ主体へと融合させていくようなビジネス、あるいは個別性・例外性の高い金融・法律サービスなどの領域においては、反復・再現性を担保するだけでは、高い付加価値を提供することはできません。

もちろん高付加価値型サービスにおいても、それに従事する人材に基本的な知識を持たせるための足掛かりとして、行動規範や知識を体系化したマニュアルライクなものが必要になる場合が多くあります。

しかし、高付加価値型サービスに従事する人材は、きわめて早い段階でそれをクリアします。そして、それが本質的に求めているものや背景にある考え方を十分に理解したうえで、平常時の課題はもちろん、あらゆる例外的・緊急的なケースにおいても対応できる能力を、自らが能動的に開発していくところが大きく異なります。

そのために、マネジメントを行う人間は、何よりも彼ら彼女らの強みや個性、自立心を最大限に開花させるための支援を行います。そして多様な才能を、もっとも効果的に組み合わせることが可能となるビジネスモデルづくりに全力を注ぎます。

つまり、製造業的な活動とは、マネジメントの視点や方法が根本から異なるのです。ドラッカーが繰り返し説いていたように、真の意味で人を「資産」ととらえるための高度なマネジメントが求められるのです。

 こうした高付加価値型サービス・マネジメントの考え方や実例は、いままで日本企業にはほとんどありませんでした。

言い換えれば、製造業との違いを皮膚感覚で知る経営者や管理者がほとんどおらず、それが、顧客の問題解決や成功とは程遠い価値の提供が、いまだに、あらゆる業界で平然と行われる要因となっています。

そして、このことに(組織や産業として)気付いていないことが、日本企業が進化・高度化できないひとつの原因にもなっているのです。

 日本復活のカギは、やはりマネジメントを行う層にいる人たちにあります。まずこの人たちが、従来型の「ものつくり」の発想からいち早く脱皮し、新しいスタイルへの上位移行を目指すべきだと思います。

それが無理であれば、専門スキルを持つ人材の導入を積極的に推進し、自らの人脈や影響力を駆使して、その活動を側面から支援して欲しいと思うのです。


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2010年11月01日

◆私の組織論~本気で組織を「生き物」として育成せよ!



※むかし、「魂」がどこにあるかを特定するために人体の解剖を行った科学者がいたという。臓器や肉片を寄せ集めただけの体に魂が宿ることは決してないのに...

           ●           ●           ●

「アラン・ドロンさん吹き替え、野沢那智さん死去」
(2010年10月31日 読売新聞)

 名声優、野沢那智さんが亡くなられたそうです(享年72歳)。私の父の世代(70歳代)には、特にアラン・ドロンの吹き替えでよく知られた方です。決して声そのものだけではない、色気のある「声の表情」を駆使して、俳優や映画自体の魅力を増幅させることができる、稀有な才能をお持ちの方でした。

声優のギャラが法外に安い時代、孤独なドロンの役作りを行うために、収録の3日前から人に会わない、声の訓練のために膨大な数のクラシック曲を、楽器のパートを含めて真似るように丸ごと歌う、などの努力を継続されていたそうです。色々な意味で、映画界はかけがえのない人材を失ってしまったということになるでしょう。

心よりご冥福をお祈りしたいと思います。

○詳細記事
 http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20101030-OYT1T00608.htm?from=os4

           ●           ●           ●

 さて、本日のコラムに参りましょう。

 「組織は生き物だ」という人が多い割には、それを具体的に創造したり整備したりする理論がまったくありません。

事業活動を本当にダイナミックに行いたいのであれば、まず組織を、パーツから構成される機械的システム論ではなく、まさに、有機的・自律的に動く「生き物」としてとらえなおす必要があります。

すなわち、組織を構成する要素機能(戦略、マーケティング、営業、生産、R&D、物流など)を、「個別のシステムとして設計する」のではなく、要素機能どうしの整合性や全体の連関性、一体感、調和を最優先にしながら創り上げていかなければなりません。

 実はこの考え方に、いきいきとした組織づくりを成功させるカギが潜んでいます。

 経営学やビジネススクールでは、いまだに事業体を構成する機能をバラバラに学びます。また、これに拍車をかけるように、ある現象や事象を、同様にバラバラにして考えるロジカルシンキング(要素還元法)や、○○システム論、△△工学など機械論的な手法・技法を修得します。

しかし、賢明な企業家やリーダーは、こうしたものに、少なくとも盲目的に飛びつくことはありません。まず、ある事業をやろうとするとき、その仕組みやプロセスについては、最低限の行動規範や判断基準、品質・コスト基準、必要設備などを設置するにとどめます。そして何よりも、目標をはっきりと打ち出し、「成果を出そう!」と皆を叱咤激励します。

さらに、さまざまなチャレンジや創意工夫を奨励し、成果に向けて皆の思考・行動スタイルがひとつの方向に、自律的に揃っていくようにマネジメントを行います。そして、試行錯誤の中から適材適所を見出し、自社に最も適している事業活動の流れや業務プロセス、ノウハウなどを(迅速に)明確にしていきます。

 ちなみに、コンフリクト、という言葉がありますが、これは人間ばかりではなく、各機能どうし、あるいは機能を構成する細かい業務プロセスどうしにも発生するという事実をご存知でしょうか?

これを、たとえば、「人体構造学(医学)の本を複数の医師で共同執筆する」という作業で考えてみましょう。

担当する各章の領域、例えば脳、胃腸、肺、骨格、皮膚それぞれの仕組みや治療法を研究すればするほど、ひとりの医師が使う各領域の研究時間に、相互にトレードオフが働き、自分の専門の臓器以外の知識には疎くなっていきます。

また、どの臓器も細胞や毛細血管、粘膜などで組成されていますが、それらについての全員の理解が100%同じとは限らず、細部のパーツになればなるほど解釈にズレが出てくる可能性が高くなります。治療法についても、自分の領域を優先するあまり、他の臓器に悪影響を与えかねない方法を書いたりするかもしれません。

さらには、全体の不整合や重複を解消させようとする監修者や編纂者の管理・調整コストが多大なものとなってしまうことは、容易に想像がつくでしょう。

 このことからもわかるように、「機能やパーツ先にありき」の発想で組織や事業活動を設計しようとすればするほど、必ずコンフリクトやトレードオフが発生し、組織という生き物を弱らせます。

安易に専門コンサルタントなどを導入しようとする経営者には、この事実をしっかりと認識してほしいと思います。同時に、夢やビジョンを目指す力とそれを支えようとする従業員をもっと信じて、事業活動に邁進していただきたいと思うのです。


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2010年10月25日

◆スモール企業の経営者は最強の顧客コンサルタントを目指せ!




※少なくとも自社の製品・サービスが影響を与える範囲に関しては、顧客の事業や活動が最も生産的になるようなアドバイスができるようになろう.

                 ●          ●          ●

「仁川空港に挑戦状」、羽田空港の国際化に韓国でも危機感高まる
 (10月24日サーチナニュース)

 国際的なハブ空港を目指してリニューアルされた羽田空港がオープンしました。近隣となる韓国の仁川空港関係者は、ライバルのこの動きを、危機感を持って見ているようです。ただし、まだまだ仁川空港のハブとしての機能には及びません。

羽田の関係者は、これを単にハブ空港どうしの競争と位置づけて同じ土俵に上がるのではなく、あくまでも利用者や交通各社の利便性の視点に立ち、「トータルなシステム」で戦って欲しいと思います。

すなわち、京急や東京モノレールなどの首都圏の交通機関はもとより、羽田からつながる地方の空港や各種交通機関、観光地などとも連携して、「列島規模の移動・観光システム」としての魅力と経済性で戦うことを目指して欲しいと思うのです。


                 ●          ●          ●


 さて、本日のコラムに参りましょう。

 ドラッカー理論における原則の一つに「問題の解決に資源を投入するのではなく、機会にフォーカスして資源を投入し、拡大せよ」というのがあります。

これを経営者やマネージャーの仕事に置き換えると、「日々のオペレーションよりも、機会の拡大に時間(資源)を使え」ということになります。

・・・きわめてまっとうな意見といえるでしょう。しかし、こんな正論をいうと、すぐさま「そんな機会があったら、とうの昔に取り組んでいる!」となどといった声が返ってきそうです。

でもちょっと待ってください。ほぼすべての会社に必ず持っている機会があります。

それは、(当たり前のことですが)自社には製品・サービスという資産がすでにあること、およびそれをすでに購入している顧客があり、彼らと接触・交渉した経験を持っているということです。

中小企業の経営者やベンチャー起業家は、多くの製品系列を持つ大企業の社長と違って、自社の製品・サービスについては誰よりも熟知しているはずです。また、それを購入している顧客についても、深く理解しているか、または少なくとも一定の知識は持っているはずです。

この「すでにある資産」を最大限に活用することを考えます。すなわち専門家である経営者自身が、その導入に関して、最も的確なアドバイスができる顧客コンサルタントへと上位移行するのです。

ただ、コンサルタント、といっても、プロのような能力をカバーする必要はありません。まずは、「自社の製品・サービスを最も効果的、生産的、低リスクの形で使ってもらえる方法」に集中して知識やノウハウを開発していけばよいのです。

そのためには、以下の三つの視点による、新たな知識やノウハウの開発が必要です。


◆1つ目は、顧客の活動や事業プロセスなどを全体的・体系的に見渡し、そこに組み込まれる構成要素として、自社の製品・サービスをとらえ直します。すなわち製品・サービスの再定義を行い、それをもとに新たなポテンシャルを見出していきます。

◆2つ目は、顧客は本質的に何を購入しているかを理解することです。つまり、製品・サービスそれ自体ではなく、そこから得られる効能や効果を購入している、ととらえ直し、新しいPR方法や用途に関する知識・ノウハウの開発余地を見つけます。

◆3つ目は、最終消費の形態や用途、場面(これを消費品質といいます)を詳細に把握することです。これにより顧客のニーズ体系への組み込み方法や、さらに改善を施したスペックを提案できる可能性を探ります。


これら3つの視点に、前述の「効果的、生産的、リスク低減的」という軸を掛け合わせ、「ナレッジ・マトリックス」を作成するなどして体系的かつ網羅的に知識を整理します。これにより、顧客ニーズの詳細な識別が可能になるゆえ、顧客に対するより的確なアドバイスや説得が可能になります。

 こうしたコンサルティング機能の開発により、大きな投資をすることなく、現在の顧客関係を強化できると同時に、新たな顧客セグメントに水平展開することが可能になります。

もちろん、コンサルティング活動で得た情報が、製品・サービスの改良やイノベーションのための重要なヒントにもなることは言うまでもありません。

 ドラッカーが主張するように、「過去を維持するための仕事」が「明日のための取り組み」に優先するようではいけません。ニーズがますます高度化・複雑化する中で、大胆に仕事の配分を組み替え、得意な領域に集中して戦う方法を、これまでにもまして真剣に考えていくべきでしょう。

 「製品・サービスおよび顧客への販売経験」という有効な資産をフルに活用するために、まずは経営者自身が最強の顧客コンサルタントをめざすことを強く推奨したいと思います。



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2010年10月18日

◆実務家のための戦略とは?・・・もっとシンプルに考えよう




※ビジョンや志なき戦略は決して持続しない。あなたの会社は、そしてあなた自身は、自らの存在意義や本当にやりたいこと、実現したいことを深く真剣に考えたことがあるだろうか。


          ●             ●             ●


 『マツダ 自立の道険しく…フォード、株式売却へ』 10/17(日) 読売新聞

 広島の自動車会社マツダが、90年代に、当時の住友銀行に半ば強制される形で傘下に入ったフォードとの資本関係をさらに薄め、距離を置く方向に傾いているそうです。

同社の、かつてのロータリーエンジンや近年の水素エンジンなど、既存型エンジンを向上させる技術には一定の評価が与えられています。しかし、肝心のEVへの対応が大きく出遅れています。

つまり、強みを生かそうとした場合、基本的に新興国市場への展開しか道は残されておらず、現在の中途半端な事業規模では、再び他の資本との提携を模索せざるを得ないということだと思います。

このことは、結局、価値を創出しての収益確保の力(自力経営力)は、90年代にフォードに買収されたときからあまり向上してないことを意味するのではないでしょうか。

独自性を追求するのは結構なことです。しかし、世の中における自動車の位置付けは明らかに変わりつつあります。こうした流れを敏感に感じ取り、社会に貢献できる価値は(提供するタイミングを含めて)どうあるべきかを本気で考えられる組織体質へと変わらないかぎり、今後もマツダの迷走は続くのではないでしょうか。


*******

 さて、きょうは、実務家にとっての戦略理論はどうあるべきかを綴ってみたいと思います。

 戦略にはさまざまな定義があります。例えば、資源戦略論で高名なジェイ.B.バーニーは「書かれた本の数だけ戦略の定義が存在する」(※1)と言っています。

いくつか有名なものをピックアップしてみましょう。



◆ジェイ.B.バーニー
 「戦略とは、競争に成功するためにその企業が持つセオリーである」

◆A.チャンドラー
 「戦略とは、企業の基本的な長期目的を決定し、これらの諸目的を遂行するために必要な行動の方向を決定すること、そのために必要な諸資源を割り当てること」

◆マイケル.E.ポーター
 「戦略とは、企業の独自ポジションを決定し、それを伝達すること、トレードオフを作ること、および活動間の調和を図ることである」



人によってずい分と違うようですね(笑)。

しかし、われわれ実務家は、定義の正確さを競ってもあまり意味がありません。それによく見てみると、現在の状態から脱して何かを目指そうとしている、といったニュアンスは、どの定義にも共通しているようです。

...いきなり独断を承知で言ってしまいます。

つまるところ戦略の定義とは、「現状から目指すべき姿や夢に到達するための、自社にとって最も適切な道のり・方法」としておくのが一番わかりやすいのではないでしょうか(図-1)。


●図-1



ただ、世の中そう甘くはありませんよね。上記のようにシンプルに考えるだけですっきりと夢が実現すれば良いのですが、それを邪魔(?)する人たちや、思いもかけない環境の変化が襲いかかります。おまけに顧客(市場)は、浮気症の傾向がますます強くなっています(図-2)。


●図-2


だから、自社を取り巻く環境を合理的にカバーした「フレームワーク(戦略理論)」を通して経営環境をウォッチングしながら、夢の実現を目指していきましょう、ということになるのです。

しかし、ここで注意が必要になります。

理論やフレームワークは道具にすぎません。使いこなすには、「何のために戦略を立てるのか」「目的は何か」がはっきりしていないと、道具自体を使うことが目的化してしまいます。

やはり、あくまでも中心になければならないのは、目指すべき姿=ビジョンに到達する、という強い志(こころざし)であり、そのために最も適切な道のりをどう考えていくか、という視点です。理論やフレームワークを使用するにしても、ビジョンや夢を実現するために活用する、という姿勢を忘れてはならないと思います。

これを言い換えると、多くの競争戦略論が推奨するような、競合他社に勝つことを目的とした分析などは二義的なものであるということです。

仮に競合分析をするにしても、自らを正すために他者の動きにも学ぶ、といった姿勢で取り組まないと、過度なコスト競争や使いもしない機能の追加レース、といった消耗戦に首を突っ込んでいくことになりかねません。

 私なりの結論を申し上げましょう。

まず、しっかりとした目的(夢やビジョン)を持つこと。そして、目的の実現のために、自社がどのような価値を提供できるかを、顧客のビジネスや生活スタイルを体系的に把握し、その中にどっぷりと身を浸すつもりで考えること。

そのうえで、その価値を市場に届けるための最適な道筋・方法を、虚心坦懐な姿勢をもって探求し続ける、といったわかりやすい戦略を持つことが大切です。

結局のところ、資源に制約がある多くの企業にとって、こうしたシンプルな考え方が経営資源の集中を可能にし、骨太な戦略を持つ可能性を高める最も現実的な方法であると思います。



※1:『企業戦略論・上巻』ジェイ.B.バーニー、ダイヤモンド社 2003年



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2010年10月16日

◆おのみち~出張帰りに散策してきました




※尾道の千光寺公園付近から、尾道水道をはさんで対岸の向島(むかいしま)を望む。向島は、現在放送中のNHK連続テレビ小説「てっぱん」の主人公が育った島で、その父親が営む鉄工所は、手前の緑の木々の向こう側付近にあるという設定になっていると思います。


                    ●        ●        ●


『年金7億件照合、前途多難…作業始まる』

---年金記録問題の対策の柱となる、コンピューター上の記録と過去の紙台帳記録との照合作業が12日、始まった---(2010年10月13日読売新聞)


 10月12日から、年金記録問題の対策の柱となる、コンピューター上の記録と過去の紙台帳記録との照合作業が開始されたそうです。しかし、早くも、その成果を疑問視する声があがっています。

民主党には過去、「4年で全件照合」を事実上反古にした“前科”があるし、こうまで実務能力の無さを見せつけられると、懐疑的な声があがるのも当然かもしれません。

ですが、処理業務が中心となるこの種のプロジェクトは、作業の分解と工数見積もり、リソースの配分や日程化など計画化の難易度は高くないのが一般的です。

ゆえに、少なくとも、照合作業の領域を、該当者不明分の調査など計画化が難しい部分から分離して、プロジェクトとしてきちんと設計し、その内容を公開すると同時に、プロジェクトマネジメントの専門家にチェックを受けるなどの改善措置をとるべきではないでしょうか?

民主党には、特に、実務レベルでカッチリと計画を立て物事を着実に遂行する、といった姿勢を強く望みたいと思います。


◆年金7億件照合、前途多難…作業始まる(読売新聞)
  http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101013-OYT1T00141.htm


*******


 瀬戸内海に面した某企業の化学コンビナートへの出張の帰り、少し足をのばして尾道を散策してきました。

実は、祖父母が、(冒頭の写真で触れた)対岸の向島に住んでいたので、幼少の頃から、尾道へは何度も来ています。にもかかわらず、いつも街全体の時間がゆっくりと流れているような感じがして、毎回とてもリラックスできます。


※尾道水道をのんびりと航行するフェリー。地元の人たちの通勤、通学の足となっています。
 NHK連続テレビ小説「てっぱん」の主人公や家族が乗船しているシーンも頻繁に見られます。



※尾道商店街にある、廃業したお風呂屋さんを改造した(そのまんま使っている?)大衆食堂。
 こんなお店が他にもいくつかあります。あと、魚のダシがおいしい尾道ラーメンは本当におすすめです。


ちなみにここに載せた風景のいくつかは、現在放送されているNHKの朝の連続テレビ小説「てっぱん」にも出てきます。尾道が舞台のひとつになっているということで、数十年ぶりにこの時間枠のドラマを見ていますが、これが意外(?)におもしろいんですよね。

話のテンポがいいし、主人公の女の子の元気と明るさ、実直さがとてもいい。それに、一話が15分なので負担にもなりません。

でも、よく考えると、ここ十数年はニュースと映画を見るくらいで、あとはほとんどテレビを見ないので、単にこの種のドラマに免疫がないだけなのかも知れませんね。


※かなり古そうですが、何のお地蔵様なんでしょう?地下水をくみ上げるポンプも
 相当に年季が入っているようですが、いまだに現役とのことです。


※尾道の駅前商店街近くの路地裏。昭和の匂いが色濃く残る風景があちこちに見られます。
 尾道出身の映画監督、大林宣彦さんは、こうした風景を「地域に刻まれたシワ」だとして、
 大切にしていくべきだとおっしゃられています。


※右のカゴは、人気商品(らしい)はっさくゼリー。向島から数えてひとつ沖合にある因島は
 八朔(はっさく)発祥の地といわれています。他にも国産レモン発祥の地である生口島があるなど、
 瀬戸大橋の尾道-今治ルートに連なる芸予諸島は、柑橘類の一大産地としても知られています。


※少し汗ばむほどの陽気で、本当にいい天気でした。
 尾道水道の突堤(「てっぱん」の主人公が海に飛び込んだ場所)から尾道大橋方面を望む。



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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 05:56Comments(0)ちょっとひと息

2010年10月12日

◆割れ窓理論を考える-2「一人で始めたゴミ拾い、260人に」




※適切なビジョンと情熱、粘り強い継続の姿勢に、正しい技術を加味すれば、「割れ窓理論」は企業組織においても応用が可能である.

                   ●         ●         ●

 一昨日、以下のような記事が配信されてきました。つい数日前にこうしたムーブメントの有効性を説いたコラム「割れ窓理論と日本電産・永守会長」を書いたばかりだったので、嬉しくなって思わず取り上げてしまいました。

(前回予告した戦略立案方法に関するコラムは次回以降とさせていただきます。熱心なご意見をいただいた皆さん、ゴメンナサイ)



『美化活動 輪広がる 旧江戸川護岸、1人で始めたごみ拾い 協力者260人に/千葉』
【毎日新聞 10月10日(日)】
 
 口コミで協力者260人に。21日に堤防の落書き消し--浦安南高生徒らも参加

 たった1人の強い意志が周囲を動かし、状況を大きく変えつつある。「ごみだらけで風景画が描けない」。そんな子供たちの声を聞き、4年ほど前、市内に住む男性が浦安市の旧江戸川護岸で、1人黙々とごみを拾い始めた。美化活動の輪は広がり、21日には市内の県立浦安南高(山中克男校長)の生徒たち20人を含む市民が、東京湾岸の堤防の落書きを消す作業に取り組む。【山縣章子】

※詳細記事: 毎日新聞社
   http://mainichi.jp/area/chiba/news/20101010ddlk12040131000c.html

*******

 さて、コメントに参りたいと思います。

 こうした取り組みを企業に展開するための方法について考えてみましょう。

 この事例も、過日のコラム「割れ窓理論と日本電産・永守会長」で説明したのと同じく、ひとりの強い意志と行動が強力なメッセージとなり、周囲の人たちの共鳴・共振へとつながっていった「割れ窓理論」の典型的な事例と言えるでしょう。

このごみ拾い活動は、4年の歳月を経て大きなムーブメントになっていったそうです。長期にわたって地道な活動を続けられた姿勢は、本当に素晴らしいと思います。ですが、これを企業が導入する場合、3~4年もかけてじっくりとやるのはなかなか難しい、というのが正直なところでしょう。

こうした取り組みの導入を検討する企業の多くは、その時点で、何らかの危機的な状況に陥っています。よって、手遅れになったり、途中で挫折したりしないように、波及効果の生産性・効率性を高める施策を意識的に打ち込んでいく必要があります。

ただ、その前に、絶対条件として確認しておきたいのが、記事の事例と同様、中心となる人の思いや信念の重要性です。

割れ窓理論の本質は「人の心」を動かすところにあります。人から人へと、強固な意志や、本物だけが持つ感動が伝播することによってのみ、中身の伴ったムーブメントが形成されます。つまり、強い思いを抱いた人のエネルギーが常に活動の中心に存在し、周囲にそれを供給し続けることが生命線となります。

それゆえ、中心人物の「気持ちと行動で周囲を引っ張る」という姿勢を活動のエンジンとして位置づけ、それを継続できる環境を必ず確保する必要があります。

この形が十分に担保されたうえであれば、さまざまな施策を打ち込んで、その生産性や効率性を上げることが可能となります。それらをうまく組み合わせたり、タイミングよく打ち込んでいくことにより、企業組織においても、その本質を損なうことなく、生産性・効率性の向上をめざすことができるのです。

以下はその施策の例です。



[割れ窓理論によるムーブメントの生産性・効率性を向上させる施策:例]

◆思いや信念を“布教”できるコアとなるメンバーのネットワークを形成する
 →定期的に忌憚のない議論やアイデアの創出を行う場を設け、思いや信念を維持・強化しながら進む。

◆思いや信念をわかりやすい形で可視化(文書化、物語化など)する
 →言葉の綺麗さよりも内容を重視する。必要に応じて書き換えても良い。ブログなどで情報を発信することも有効。

◆達成度を測定・共有し、そこから更に刺激を得られるようにする
 →成果を共有し、メンバーにパワーと元気を注入する。

◆理論、手段、具体的なツールなどで“武装”させる
 →開始前に、活動の意義や論理的な裏付けに関する研修や勉強会を行う。

◆新たな評価項目やインセンティブを少しだけ活動向けに整備する
 →評価・報酬目的の「ニセモノ」が現れるので、過剰な報酬や評価の改訂は必要ない。

◆批判や妨害に対しては、断固たる姿勢で臨む
 →必ず天の邪鬼(あまのじゃく)的に、ネガティブに捉える者が出てくる。これを放置ぜず、断固たる姿勢で対処する。



以上のような準備が整い、活動計画に落とし込んだら、あとはPDCAサイクルを回しながら、ひたすら前進あるのみです。

なお、全体的なポイントとしては、あまりガチガチのルールを作らず、自主的に取り組もうとする人の意志をできるだけ尊重する体制を維持することです。過剰なルールや細かい指示・命令は、それに依存する傾向が出てくるのと、結果的にあまり熱心でない人に基準を合わせる「護送船団方式」になってしまうので注意が必要です。



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タグ :割れ窓理論

Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 08:30Comments(0)戦略請負人のつれづれ日記

2010年10月07日

◆競争は戦略の目的ではない 【大前研一】




 ※日本企業の試練と真の国際化への厳しい道のりはこれから始まる。戦後65年のツケを払わされる時がやってきた。


                  ●                 ●                 ●


 先日、中国の温国家主席と菅総理の会談が行われたそうですが、菅さんははいったいどのような話をしたのでしょうか?“戦略的互恵関係”などといっていますが、そもそも日本の戦略とはどのようなものなのか、その上位概念としての国家ビジョンはどのようなものなのでしょうか?

現在の政権からは、それらが伝わってきません。むしろ、目の前で起きた問題に対し、短絡的に反応する行動様式だけが目立つ、戦略の意味がまるでわかっていない「戦略シロウト内閣」といわざるを得ません。

参照:『日中「廊下会談」協調演出に残る危うさ』(10/5日経電子版)


*******

◆気になるひとこと


      --- 競争は戦略の目的ではない ---


                   大前研一 『ハーバード・ビジネス・レビュー 2007年(1987年の論文を再録)』



◆コメント

 当時、どんどん現実離れしていく感があった競争戦略理論に対する大前研一さんらしいアンチテーゼです。

この言葉自体は1987年のものですが、戦略のエキスパートであるマッキンゼー社が、2003年に再びこの大前論文を世に問うているうえに、大前さん自身が、現在も同様の指摘をされているので、今回、この言葉を取り上げてみました。

さらに、以下の指摘が続きます。

「ライバルに勝つことに血眼になると、戦略は相手の出方次第でクルクル変わることになる。リードを許すまいと、相手の一挙手一投足に反応する行動様式が常態化していく」

・・・なるほど、ちょっと変わった機能を持った製品が出ると、すぐにそれに追従した製品でヤマダ電機の売り場がいっぱいになってしまう、といった現象を、われわれはイヤというほど見てきてましたよね。

エアコン、デジカメ、携帯電話、洗濯機、電子レンジ。消費者は誰も「使った場合の違い」を説明できません。クルマやコンビニ、銀行のサービス、最近流行の地域開発(町おこし)のパターンも独自性があるとは思えません。

ちなみに、この「使った場合の違い」を、サムスン電子の元常務で、現東京大学特任研究員の吉川良三氏は「消費品質」と表現されています。

吉川さんは、8月に行われた『日本がものづくりで韓国に負ける理由』というテーマの講演で、日本企業はこの消費品質がわかっていない、と指摘されていますが、要は「消費者のことをきちんと見ていない」という最も基本的なことを、此の期に及んで指摘されているということです。

吉川さんの言葉を待つまでもなく、われわれ生活者は、実にさまざまな不便を強いられてきたと思います。

たとえば自動車です。一車種ごとに莫大な開発費と数百人ものエンジニアを張り付けて“丁寧に”開発を行い、4年に一度、消費者に買い替えを強要してきました。また、いまだにコーナリング性能や動力伝達システムがどうのこうのと、カタログ数値をPRしている会社があるようですが、購入者の多数を占めるサンデードライバーや街で買い物をする主婦にとってそんなものは関係ありません。

さらには、一挙に電気自動車への切り替えを行わずに、ハイブリッドという、暫定的なクルマを前面に押し出していますが、このやり方の背後に、自社や業界の維持・雇用といった、提供者側の都合がまったくないとは言えないのではないでしょうか?

パソコンメーカーも同様です。つい3~4年前までは「家庭の医学」とか「毛筆ソフト」など、使いもしないソフトをゴテゴテと詰め込み、20数万円にも価格を吊り上げたラップトップをユーザーに押しつけていたのです。しかも、突如、5万円台のネットブックが登場すると、一斉に追随して、挙句の果てに「利益が出なくなった」などと文句を言っている始末です。

 このような指摘をすると、「60~80年代の日本企業は素晴らしかった。国際的にも勝利してきた」という主張をされる人がいます。しかし、戦後、基本部分のアイデアは欧米からすべてタダでもらったうえに、「作れば売れる時代」がぴったりと重なっていたのは紛れもない事実です。轍(わだち)を辿っていき、改善を続けるだけで商売ができた時代が確かにあったのです。

それに、日本企業の場合、「国際化した」といっても、生産工場や販売網などの物理的な拠点が拡大したに過ぎません。

先ごろ、ハイブリッド車のトラブルに関する情報公開のやり方で問題となった自動車会社の例をひくまでもなく、彼の地の文化や風習をうやまい、現地に溶け込み、組織カルチャが真に国際化している企業、「国籍に関係なく、誰でも社長までのイスが等距離にある企業」は今でもほとんどありません。

 生活者にとっての価値を謙虚に見つめることなく業界内の競争に腐心し、提供者側の論理で事業を行ってきた日本企業は、ITの進展による地球市場の一体化や、アジアの新興国企業の勃興を受けて、戦後65年経って、はじめて「真の競争」にさらされることになるでしょう。

それは、これまでのような目先の競争ではなく、価値創造者としての実力と世界への貢献の姿勢をもって、自らの存在意義を賭けて戦っていかねばならない、ということだと思います。

大前さんのひとことを、いま、改めて深く考えなければなりません。



※参照:
  『競争は戦略の目的ではない』 大前研一、ハーバード・ビジネス・レビュー、2007年

  『日本がものづくりで韓国に負ける理由』吉川良三、グロービス講演録、2010年8月5日

  『マッキンゼー 戦略の進化』マッキンゼー、2003年(上記大前論文を収録)




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Posted by ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 at 11:36Comments(0)気になるひとこと・フレーズ

2010年10月02日

◆割れ窓理論と日本電産永守会長~戦略具現化手法の可能性は?




※答えは足もとにある?ニューヨーク市の地下鉄犯罪・落書きの撲滅や、破たん寸前の企業の救済に劇的な効果を発揮したとされる割れ窓理論.


      ●                ●                ●


 大阪地検前特捜部長らが逮捕されました(2010/10/2日経新聞)。大阪特捜部の組織ぐるみの証拠改ざん隠ぺい工作が疑われているようですね。本日のテーマは、こうした集団による犯罪行為に手を染めていく心理構造や悪循環に陥ってしまった組織を救済するための一つの考え方を提示している「割れ窓理論」です。

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さて、本題に入りましょう。

 割れ窓(ブロークン・ウインドウズ)理論という、都市環境改善のための考え方があります。

成功例に、ニューヨーク市の、地下鉄などの都市環境や犯罪率の劇的な改善例があることが知られています。その主な成果は、1990年を頂点として、同市における殺人事件が3分の2減少し、重罪事件は50%減、そのうち地下鉄での重罪事件の発生は75%も少なくなったというものです。

日本にも同様の事例があります。

2001年に北海道警の札幌中央署が、同じく割れ窓理論を採用し、「すすきの環境浄化総合対策」として犯罪対策を行いました。駐車違反を徹底的に取り締まる事で路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少、2年間で犯罪を15%減少させることができた、という報告がなされています。

このような効力を持つ割れ窓理論アプローチですが、その内容は実にシンプルです。

たとえば、落書きや違法チラシなどの軽微な犯罪を徹底的に取り締る、といったアナログ的な対応を、とにかく粘り強く続けます。落書きが書かれてもすぐに消すことをひたすら繰り返し、軽微な犯罪にも妥協せず、それらが起こらなくなるまで断固とした姿勢で取り締まりを続けるのです。

このメカニズムを考えてみましょう。

落書きしたり犯罪を引き起こしてしまう人たちの多くは、生まれつきそのような資質を持っているというよりは、むしろ、周囲の環境に感化されて事におよんでしまう傾向が強いといいます。

これは、目に見える環境の悪さや規律のゆるさが「自分も同様のことをしてもよい」という暗黙のメッセージとなり人々の潜在意識に植え付けられ、集団への帰属意識や環境への適応本能と相まって、人々の悪しき行動を誘引する、という構造を持ってしまうと考えられています。

これを変えるためには、抽象論や精神論などではなく、同様のレベル、すなわち「具体的なかたちで、継続的に、断固とした意志を示す方法で“応戦”する」という方法が効果的とされており、前述の事例は、まさにこれを正面から実践した、ということになります。

 会社再建の名人で知られる、日本電産(※1)の永守会長も、同様の考えかたを実践して成果をあげています。

永守氏いわく、

「やることは二つしかない。一つは6S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ・作法)。職場をキレイにさせること。もう一つは出勤率。休まずに会社に来させること。これらを徹底してやらせることにより、会社は必ず改善する」

事実、このやり方を適用したコパル社(現日本電産コパル)やトーソク社(現日本電産トーソク)は、それまでの長期低迷がウソのように黒字化しています。両社は十数年ぶりに過去最高益を更新するなど、見事な再生を果たしているのです。

もちろん行動を律するだけでは業績の向上は望めません。しかし、一方で、いくら立派なビジョンや戦略を示しても、それを実行するための足まわりが伴わないかぎり「絵にかいたモチ」で終わってしまう可能性が高いことも事実なのです。

つまり永守会長は、戦略や利益計画を具現化するための足まわり(意識改革と行動)を徹底して再構築した、ということだと思います。
 
 ちなみに、「6S」や「行動を律する」というと、「なんだそんなことか」とナメてかかる人がいます。しかし、その習慣が、たとえば時間の使い方や顧客の情報の整理・整頓につながり、ひいては、業務全体の大きな改善へと波及してくることも忘れてはなりません。

 こうした類の手法は、最後までやり抜く覚悟さえあれば、ほぼ確実に一定の成果を得ることができるのです。少なくとも、戦略や経営計画の足まわり(具現化能力)を強化してくれるくらいの成果が得られることは覚えておきたいものです。




※1:弊社アドバイザー・協力者の京都大学経営管理大学院、末松千尋教授は、2010年6月より、日本電産の監査役を務められています。



※参照文献・情報:
   『壊れ窓理論の経営学』 マイケル・レヴィン 光文社 2006年
   『日経ビジネス 逆境を乗り越える経営』日経BP  2008年
    その他独自ルートによる情報、資料を分析


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